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林業人材確保、育成拠点は木造全天候型に、アクセス良好地に設置を

2020/12/10 日本工業経済新聞(栃木版)

 第3回とちぎの林業人材確保・育成のあり方に関する検討会(座長・有賀一広宇都宮大農学部准教授)は9日、県林業人材育成システムと意見書案を取りまとめた。人材育成拠点は木造とし、県内各地からのアクセスが容易な場所を選定。全天候型の施設や実習フィールドを確保すべきと提言。近く、福田富一知事に答申する。

 人材育成施設は1年を通じた長期研修に加え、年に複数回の短期研修を計画的に実施。ICT技術や労働安全に優れた施業方法を習得できるよう必要な設備を完備。最先端の情報が得られるよう研究機関やメーカーと連携。運営は県に委ねる。

 2011年以前、国内の林業人材育成研修機関は6校のみ。12年度の京都府立林業大学校の設立をきっかけに全国的に同様の施設設置が相次ぎ、今年度までに18校が設置されている。1年制研修型が多く、就業前の長期研修を通じた人材育成に効果を発揮する。 

 農業高校をはじめ職業系専門学科を中心に幅広く人材を募り、18歳以上の就業希望者にはビジネスマナー基礎知識、林業・木材の専門基礎知識、施業技術(造林・伐木)、資格取得・安全作業を教育。長期1年間は高校卒業以上の定員15~20人とする。

 幅広い知識、反復練習による確実な技術の習得、施業に必要な資格取得と就業をスムーズにするインターシップを導入。研修生が県内に就職し、県域全体での均等な就業につながるよう育成だけでなく就業コーディネートを充実。林業経営体とは関係性を強化する。

 既就業者に対しては現場作業者への初級研修(造林・伐木技術)、スキルアップ研修の中級(立木調査測量)、上級(作業道設計・施工)、現場指導者へは養成研修Ⅰ(施業工程管理)、Ⅱ(現場技術指導)、林業経営者へは安定的な施業確保、経営の効率化を指導する。

 県労働力確保支援センターと林業団体が川上(森林組合、林業事業体)、川中(製材工場、集成材工場)、川下(プレカット工場、工務店)、その他(機械メーカー)と密接に連携。インターンシップ受け入れ、講師派遣、実習フィールドや最先端機械を提供する。

 県内の民有人工針葉樹林の7割が利用期に移行し、木材利用促進と森林の若返りが必要。所有者や境界が不明な森林が多く、林業の労働力不足が課題。川中の素材生産量は74%にとどまり、一部は県外産を使用。高性能機械やICTによる労働生産性の向上が課題。

 林業従事者は660人前後で推移し、65歳以上の高齢者が増加傾向。新規就業者は年間40人程度で推移し、就業後3年目までの離職者が4割程度と他産業に比べて高い。給与水準は全産業比で100万円程度低いにもかかわらず、災害発生率は約10倍。

 人材定着には雇用環境の整備や労働安全対策強化が必須。就業前に森林・林業に関する全般的な知識や救急救命応急法、刈払機やチェーンソー操作を身に着け、即戦力となる人材を養成。高校生、専修学校、大学との連携により多種多様な人材を集める。

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