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栃木市、施工時期平準化へ、債務負担や繰り越し策提示

2021/02/04 日本工業経済新聞(栃木版)

 栃木市は3日、市発注工事の施工時期平準化の考え方を市議会に説明した。①債務負担行為の活用②速やかな繰り越し手続き③工事請負契約締結対象の市議会承認額を現行の1億5000万円から2億円以上への引き上げ④1億5000万円以上の工事で請負金額の変更が生じる場合は再度議決が必要であり、一定範囲内の変更契約は市長の専決処分事項として指定する-ことの検討を要請し、理解と協力を求めた。議会の了承が得られた案件から実施に移す方針。

 市は「建設業は社会資本整備の担い手であり、災害発生時は安全安心を確保する地域の守り手としての安定経営が求められる。2018年度の全体就業者は55歳以上が約35%以上、29歳以下が約11%と高齢化が進行。技術の継承が課題」と現状を解説。

 工事発注量は年度前半が少なく後半に増加。その差を縮めれば通年での人材や資機材の稼働につながる。経営や労働者収入が安定し、公共工事の品質を確保できる。年末の工事集中を緩和すれば、休暇取得が容易になる。以上の平準化の必要性と効果を強調した。

 債務負担行為の活用は前年度中の入札執行が可能であり、年度末または年度開始早々からの施工が可能。年度内の完成が見込めない場合は繰り越し手続きを開始。補正予算の際は予算計上と同事に繰り越し手続きをすることにより、年度をまたぐ工期設定ができる。

 市が19年度に発注した工事総数は281件。年度当初の4月発注は4件にとどまり、年度末の1月は14件、2月は21件、3月は17件と少ない。閑散期の発注を増やすことは施工時期の平準化に有効であり、議決が必要な両手法への理解を求めた。

 地方自治法では条例で定める基準以上の工事請負契約締結は議会議決事項。市条例では予定価格1億5000万円(税込み)の工事または製造請負が対象。合併後に消費税は10%に引き上げられ、12年度から20年度の間に労務費は約52%、資材費は約12%それぞれ上昇した。

 12年度当時1億5000万円の設計価格だった工事は現在、2億円近くまで上昇。14年度以降の議決工事契約案件は23件で、うち21件が2億円以上。宇都宮市は議決金額を2億5000万円以上に規定しており、市は2億円以上への検討を要請した。

 1億5000万円以上の工事で請負金額に変更が生じた際は再度議決が必要。改正担い手3法では、適切な設計変更が発注者責務に明記された。国の「公共工事の円滑な施工確保について」の通知では、必要な変更契約の適切な締結を地方自治体に求めている。

 市が19年度に契約した工事281件のうち、186件(66%)で変更契約を締結。宇都宮、足利、鹿沼、矢板の4市は契約金額の5%以内の変更に限り市長の専決処分が可能。那須塩原、さくらの2市は200万円以下の工事5%以内で市長が専決処分できる。

 議会議決を要する案件で変更契約が生じるのは例外ではなく、適切で迅速な変更契約締結へ向けて一定の範囲内の変更契約について市長の専決処分事項に指定することの検討を願い出た。市は建設業の働き方改革を推し進めるため、一歩踏み出す内容を提示した。

 市議会からは債務負担行為活用や速やかな繰り越し手続きには概ね理解する声が寄せられた半面、工事請負契約締結の承認額引き上げや市長の専決処分事項指定には慎重論が続出。議会のチェック機能が損なわれないよう時間をかけて論議する姿勢を示した。

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