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国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所

鬼怒川ダム、川治ダム 貯砂ダム嵩上げや掘削、排砂トンネルルート検討へ

2021/12/02 日本工業経済新聞(栃木版)

 国土交通省鬼怒川ダム統合管理事務所は、計画量を上回る土砂等が流入する川治ダム(日光市)の堆砂対策として、排砂バイパストンネルの整備などを軸に総合的な対策を検討している。今年度は堆砂利用の可能性を含め、対策検討業務を建設技術研究所に委託した。これまでの検討では土砂掘削などによる堆砂除去を継続するとともに、既設貯砂ダムの嵩上げに加え、排砂バイパストンネルの新設に伴うルートの検討など効果的で複合的な対策を進めるとした。総事業費には110億円を試算している。

 川治ダムの総貯水容量は8300万立方mで、うち100年間で試算した死水容量および堆砂容量700万立方mが確保されている。川治ダムは1984年度から管理が開始され、35年後の19年度には堆砂率が107%に達するなど、すでに容量をオーバーしている。

 原因は、ダム貯水湖や流入する1級河川鬼怒川をはじめ沿川の荒廃した山岳など急斜面から多量の土砂供給が挙げられる。特に平成27年関東・東北豪雨や令和元年東日本台風に代表される、豪雨があった年の堆砂量は飛躍的に多いという。堆砂の除去は、湖面に近い洪水調節容量内を優先して行っている。

 事務所では、土砂掘削による堆砂対策を継続的に実施しているほか、03~10年度にかけて、湯西川ダム建設事業に掘削土砂約62万立方mを供給した。

 堆砂検討業務では、湯西川ダム骨材への流用の実績を踏まえて埋め立て処分を行っている掘削土をコンクリートなどへ再利用する可能性も検討する予定。

 川治ダムの貯砂ダムは、ダムに流入する鬼怒川本川に98年度に整備。上流からの土砂を堰き止め、たまった土砂は定期的に除去している。堤高は5mで、対策では土砂を受け止める容量を拡大するため、嵩上げを検討している。

 今年度はこれまでの取り組みを総括し、複合的対策手法の方向付けを行う見通し。排砂トンネルのルートが固まり次第、理解を求めるため下流域の関係機関などとの本格的な協議を始める。

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