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埼玉県秩父県土整備事務所

県秩父土木事務所-小嶋康宏所長に聞く

2001/07/25 埼玉建設新聞

 昨年の就任より2年目となる県秩父土木事務所の小嶋康宏所長に、今年度の事業概要などについて尋ねた。事務所予算は、約39億2、600万円で前年度比27%の減と厳しいが、秩父名栗線などの整備完了によるところが大きく、道路環境工事費は2%増となっている。また大型構造物となる県道皆野両神荒川線の荒川村内バイパス整備では120mの長大橋の詳細設計、国道140号安谷橋架け替えでの予備設計に着手するなど、今後事業が本格化してくるものも多い。事業推進に当たっては永く親しまれる施設づくりを目指す考えを示している。

--昨年度の就任以来2年目となりますが、今年の抱負をお願いします

小嶋所長 秩父地域は、県民にとって「水のふるさと」であり、様々な文化や伝統、そして豊かな自然環境にも恵まれている。その一方では、地形や気象条件により、厳しい生活環境も共存している。そのような中で、秩父地域における「職・住・遊・学」のグレードを高め、活性化に向けての努力を続ける必要を痛感しています。特に道路や河川の整備を進める上では、環境の保全、向上に十分配慮しながら、地元の方々に永く親しまれる施設づくりと、訪れる方々にも満足していただけるような地域づくりを目標としていきます。

--秩父土木管内の現状、印象はどうですか

小嶋所長 管内は、秩父市など1市5町3村の面積893平方kmで、県土全体の約25%を占めるものの、管内人口は約12万人(13年2月現在)で県全体の約2%。管内ほぼ中央を貫流する荒川は地域を東西に2分しており、それに連なる急峻な山地と丘陵地帯、これに囲まれた盆地で形成されています。道路の状況は、秩父市内で交差する国道140号と国道299号を動脈とし、圏域内を結ぶ10の主要地方道が幹線道路の体系を構成し、これを軸に一般県道23路線が有機的に結合しているが、谷あいの川沿いに延びた路線が多く、屈曲部や狭あい部分が多いものとなっています。また河川は、一級河川が荒川水系27河川、利根川水系2河川となっています。ほとんどが天然河川のため欠崩か所が多い。また地域全体の9割が山林で覆われており、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域が多く、生活基盤の整備や地域振興策には大きな障害となっています。このような環境の中で、秩父地域は産業の活性化及び生活の質的向上を目指し、豊かな自然や文化などと調和を図りながら、秩父リゾート構想、テクノグリーン構想、国道140号バイパスや秩父3ダムの建設など、大きな飛躍をとげようとしています。

--今年度の予算状況はいかがでしょう

小嶋所長 事務所全体では、39億円余りで、前年度比27%減少しています。これは、皆野寄居バイパス建設に関連した戦場高橋の架け替えが完了したことと、浦山ダム関連の毛附トンネルを含む県道秩父名栗線が完了したことが主な原因です。このため道路街路の工事費が56%減の6億6、000万円になっています。その一方で道路環境の工事費は2%増となり、維持管理関係は現状維持以上の予算となっています。

--道路街路の調査設計費が50%も伸びていますが主な対象は

小嶋所長 荒川村内の県道皆野両神荒川線バイパス整備の関係で長大橋2橋計画のうち、1橋の設計に着手します。

--今年度の主要事業についてお伺いします。まず、道路事業では

小嶋所長 県道皆野両神荒川線の荒川村内のバイパス整備は、昭和63年に延長2、300mで事業に着手し、平成3年度より用地買収を開始して、12年度までで40%の進捗状況となっています。このうち国道140号交差点からの1、360mについては今年度より国庫補助事業として、事業化される予定です。今年度は、用地買収を引き続き促進するとともに、現道拡幅工事120m程度進める予定です。またルート上2か所で計画される橋梁については、これまでに予備設計までが完了していることから、橋梁形式の協議を行い、このうち橋長120mの1橋の詳細設計を行う予定です。

--昨年度、測量など実施した国道140号安谷橋の架け替えと、荒川橋の対応は

小嶋所長 安谷橋は、荒川村上田野地内の安谷川に架かるもので、11年度に道路概略調査を実施し、12年度は測量、地質調査を行い、大まかなルートを決定し今年度に橋梁予備設計をまとめる予定です。位置は現橋の下流に新設し、規模は橋長90mを想定しています(予備設計業務は19日に委託済み)。荒川橋については、12年度に橋梁現況調査を実施したところです。

--早期整備要望が地元から根強い県道藤倉吉田線の要トンネルの改築計画は

小嶋所長 現況が狭あいなトンネルで、地元からも改善要望がある部分です。現地状況から、拡幅は難しく、吉田川側への迂回ルート及び新規のトンネルルートについて検討しております。

--秩父市内の秩父荒川線の拡幅改良計画は

小嶋所長 平成12年度に国庫補助事業として延長540mを事業化しています。今年度も引き続き用地買収を進め、14年度からの施工可能なか所の工事に着手していきたい考えです。

--管内には特色ある道の駅が多いですが、現在計画中の横瀬町芦ケ久保の道の駅の状況はいかがですか

小嶋所長 一般国道299号沿いに計画されている道の駅は、今年度用地買収を予定しています。今後地権者の協力が得られ次第駐車場、休息施設を中心に整備を進め、15年度の完成を目指します。また秩父市の道の駅は7月19日にオープンしました。

--横瀬の道の駅は全体で1ha規模で計画されているそうですが、県の整備規模はどのくらいですか、また国道からの進入路として横瀬川に橋梁も計画されているようですが

小嶋所長 簡易パーキング面積は約5、000㎡規模です。駐車場は大型車14台、小型車28台、トイレ、休息施設(併設)が200㎡程度です。また橋梁計画については、まだ決定はしていません。

--これら事業を進める上で地元との調整は、どのような状況ですか

小嶋所長 事業の進め方として、地元とのコンセンサスは得られやすいと思う。事業に対する反対などはないが、用地買収で相続などがあって複雑になっていることがありますね。権利者が遠方におられたり、共同で所有している場合などもあります。

--市町村への技術支援について

小嶋所長 秩父地域の生活基盤を支える社会資本の整備や災害に対応するため、県土木事務所として技術指導や職員の交流を含め最大限の支援活動をさせていただき、秩父地域の発展に寄与していきたいと考えています。

--建設業者へ一言

小嶋所長 近年、長引く不況の中で公共事業に対しても見直しが叫ばれ、厳しい社会の視線を感じているところです。また、4月1日には公共工事入札適正化法が施行になり、施工体制の適正化、一括下請けの禁止が求められています。我々の担当する公共工事は、県民が健康で文化的な生活を送る上で必要欠くべからずのものであることは万人が認めるところだと思います。我が国も少子、高齢化が始まり「人や自然に優しい道づくり・川づくり」などが要求され、品質の高い社会資本を整備していかなければなりません。業界の方々も、環境に配慮した生活基盤整備にご理解をいただき、県民に喜ばれ・信頼され・後世に残る良いものを造っていくようお願いします。



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