コラム

2018/09/20

ありったけの心で想え(埼玉・YM)

ありったけの心で想え(おもえ)


▼「なぜあなたはエベレストに登りたいのか」という記者の問いに「そこにエベレストがあるから」と登山家ジョージ・マロリー氏は答えた。マロリーは3度目となるエベレスト遠征の挑戦中に行方不明となる。75年経ち捜索隊によって発見されるが、彼が世界初のエベレスト登頂を成し遂げたのかどうか侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論が現在も続いている


▼8000mを超える山は世界に14座ある。人類史上初の14座完全登頂を達成したラインホルト・メスナー氏は登山界の偉人として有名だ。日本登山界では竹内洋岳氏が日本人として初めて8000m峰全14座を制覇しており、次々と世界トップクラスの人材を輩出している


▼神々の山嶺(かみがみのいただき)という夢枕獏氏の小説がある。主人公の羽生(はぶ)がエベレスト未踏破ルートに挑戦する話だ。「なぜ山を登るのか」との問いに「俺がいるからだ」と答える場面や「体力も何もかも、ひとかけらも残らないような自分の全身全霊をありったけ注ぎ込むような」と登山を語る場面に読者は自然と気持ちが高ぶる


▼話は変わりアップル創業者スティーブ・ジョブス氏は「仮に今日が人生最後の日だとして、今日の予定は本当にやりたいことなのか毎朝鏡に映る自身に問いかける」と語っていた。ノーの日が続けば何かを変える時だ。また「満足な人生を得るには素晴らしいと信じる仕事に取り組むことだ」とも話す


▼業界は違うが根底は同じように思う。自分のすることにどれだけの誇りと自信を持てるか。そして、それをどれだけ愛せるかが肝要だと思う。エベレストに命を賭けた羽生は言う。「思え。ありったけの心で思え。想え―」と。(埼玉・YM)


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