2025/07/18
どうか無理をせずに(群馬・KO)

どうか無理をせずに
▼6月1日から、建設業などの屋外高温環境下での作業について、熱中症対策が法的に義務化された。建設現場の安全管理にとって極めて重要な機会となり、各企業は体制の見直しや整備を進めていく必要がある
▼数年前の夏、気温が35度を超える猛暑日、家で庭木の剪定を行っていた。体調に違和感を覚えながらも今日中に終わらせたいと作業を続け、休憩も水分も十分に取らずに我慢を続けた。その結果、突然めまいに襲われ、そのまま意識を失って倒れてしまった。病院で診断されたのは熱中症による脱水と一時的な意識障害。幸い大事には至らなかったが、一歩間違えば命に関わっていた
▼現代社会においても「暑くてもやる」「しんどくてもやり切る」といった、いわば我慢の美学が残っていないと言ったらうそになるだろう。建設業界においても、確かにこの精神があるからこそ、過酷な環境でもインフラが整備され、社会が成り立っているとも言える
▼しかし、この文化が命や健康を脅かす危険をはらんでいることを痛感せざるを得ない。この経験から学んだのは「我慢強さ」と「無理をすること」はまったくの別物だということだ。現場の「やって当たり前」という空気が、一人一人の体調異変のサインを見逃させ、結果的に職場全体の安全を損ねることになる。作業を止める勇気、声を上げる勇気こそが、プロとしての責任なのだと思う
▼我慢の先にあるのは達成感だけではなく、時に取り返しのつかない代償かもしれない。建設業界全体で、「根性」よりも「安全と健康」を尊重する文化への転換が、いま強く求められている。(群馬・KO)