2026/10/14
ひと穴に宿る知恵(茨城・TO)
ひと穴に宿る知恵
▼カップ麺の進化が目覚ましい。塩分や糖質を抑えた健康志向の商品が増え、有名店監修の味も珍しくなくなった。容器にも工夫が凝らされ、ふたの開け口を二つ設けることで密閉性を高めた商品も登場している。身近な食品にも、絶え間ない技術革新と使いやすさへの配慮が息づいている
▼ある休日に建設業で働く職人の友人と出掛けた際、小腹がすいてコンビニへ立ち寄った。それぞれカップ麺を手に取り、お湯を入れようとすると、友人はおもむろにふたの中央に穴を開け、そこへ湯を注ぎ始めた。「仕事のしすぎだろうか」とこちらが心配するのをよそに、本人は至って大真面目だ
▼聞けば、中央から注げば湯がこぼれにくく、付属のシールで穴をふさぐことにより熱も逃げにくい。現場内を移動しながら食べる時にも便利な方法で「職人はみんなやっている」と教えてくれた。メーカーが想定した使い方ではないのかもしれないが、現場で培われた知恵には感心させられた
▼職人の工夫は食事だけの話ではない。建設現場ではドローンや3次元データ、AIやDXが普及し、仕事の進め方は大きく変わりつつある。それでも現場では、その日の天候や地盤、周囲の状況に応じて判断し、工夫を重ねる場面が少なくない。技術の進歩を支えるのは、やはり人の知恵だ
▼カップ麺も建設業も今後さらに技術革新が進むだろう。しかし、新しい技術の価値を引き出すのは、現場ならではの経験や知恵、そして「もっと良くしよう」という創意ではないか。取材の合間、熱々の麺をすすりながら、ものづくりの本質は案外そんなところにあるのだと考えた。(茨城・TO)















