2026/05/15
受け継がれるもの(茨城・NM)
受け継がれるもの
▼神宮球場に、欠かせない存在が帰ってきた。東京ヤクルトスワローズの球団マスコット「つば九郎」だ。2025年のキャンプ中に、彼を長年支えてきた担当スタッフが亡くなり、昨シーズンは妹の「つばみ」が兄に代わって活躍する場面も多かった
▼少しスリムになったおなかや、名物となっていたフリップ芸をいまだ披露していないこと―。違いを探せばいろいろ見つかる。今シーズンからの復活を知らせる球団のユーチューブ動画を見た時、階段を慎重に上る初々しい足取りに「おかえりなさい」と呼び掛けながら涙がこぼれた
▼それでも、試合後のヒーローインタビューでお立ち台に上った選手の頭をぽんぽんとたたき、活躍をたたえる「手羽」の優しさは変わらない。先代が築いてきた歴史、遺(のこ)したものはつば九郎のDNAとして、確かに受け継がれたのだ。1羽分大きくなった声援を後押しに、池山新監督の下でチームは見事開幕ダッシュを決めた
▼新年度から環境が変わった職場も多いだろう。前任者からの引き継ぎがスムーズに進むケースばかりではない。知らない環境に飛び込む側の大変さは言うに及ばず、新たなメンバーを迎える側にも苦労はつきもの。心身が発するストレスのサインを見逃さず、健康第一で暑い夏に備えたい
▼壁にぶつかったときに、教えを乞いたい相手がいないこともある。「立つ鳥跡を濁さず」と言うけれど、残った者は彼らが遺してくれたものから「あの人だったらこう言うかもしれない」と勝手に励まされたり、進む先を決めたりする。私もいずれは誰かに受け継ぐ立場になる。かくして歴史は紡がれてゆく。(茨城・NM)















