コラム

2026/06/19

炎上さえしない新時代(群馬・MT)

炎上さえしない新時代

▼明治時代の評論家、北村透谷は「恋愛は人生の秘鑰(ひやく)なり」と書いた。恋愛至上主義的宣言である。国家や家のために生きることが当然とされた時代、この言葉は衝撃を与え、議論を呼んだ。今でいう炎上に近い状態と言えるだろう。130年たった今も、SNSでは一人の発言が瞬く間に拡散し、賛否両論の大騒ぎになる。強い言葉は時代を揺らす。賛否を呼び、衝突を起こす

▼だが、現実では衝突ではなく分断が、おそらく確実に進んでいる。若い世代と古い世代のギャップはいつの時代も取り沙汰されるものだが、昨今は衝突すらできていないように感じる

▼まず、職場はどうだろうか。若い世代は組織への期待の仕方が変化している。法令が順守されているか、成長の道筋はあるか、自分は尊重されるか。そうした問いを静かに手にし、値踏みしている。そして、見限れば何も言わずに離れる

▼ある調査では、20代男性の5人に1人が副業を実施しているとされる。それは収入補填(ほてん)の手段にとどまらず、1社に依存し続けることへの危機感から、組織の枠にとらわれず、新たな活動の場を模索する動きであるとの分析も出ている。別の場所へ移る準備を水面下で進めている。そこに怒りはない。抗議もない。ただ関わらないという選択があるだけだ

▼透谷の時代、人々は言葉で応じた。賛成にせよ反対にせよ、そこには向き合う意思があった。若手が何を考えているのかわからない、ハラスメントを恐れて踏み込んだ発言ができない。そうした戸惑いを抱える人もまた少なくない。声が上がらないこの静けさに、どう向き合うかが問われている。(群馬・MT)

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