コラム

2026/06/03

雨中の透明ドーム(新潟・SH)

雨中の透明ドーム

▼スマホの写真フォルダーを整理していたら、いつか保存した浮世絵の画像が出てきた。SNSで見かけ保存したものだろうが出どころを覚えていない。独特な印象の1枚で、線描の強い雨が峠道に降る中、透明なドーム状のものに9人ほどで雨宿りしている。和の風情が感じられる絵柄にあって未来的な透明膜は、異質であるもののなじんでいるようにも見える

▼左下には「大鵬ノ印中ニ雨舎リス」との書き込みもあり、手がかりは足りていそうなのに画像検索してもAIに聞いても詳細情報は得られない。透明なドームシェルターは何なのか、結局のところ不明だが、いつか詳しい方に尋ねたい

▼あらためてこの絵の特徴は、当時にないはずの素材感にある。麻や絹、綿を主に使っていた時代、「幕府」の語源となった戦場の陣幕でさえ雨風をしのぐのに苦慮していただろうから、いっそう透明膜の存在が際立つ

▼取材で施設の新築情報を追っていると「膜構造建築物」という言葉を聞く。張力を受けた面材としての「膜」が、屋根や壁として大規模な空間を作る。1970年の大阪万博パビリオン設営にもテント生地は使われ、未来的な空間づくりの一助となっていた。現在は倉庫・体育館などに活用されている

▼これから梅雨入り。ビニール傘は手軽に雨をしのいでくれるが、江戸時代の人々には想像もつかなかった技術だろう。画中の透明ドームは絵師が描いた未来予想図だったら面白い、と想像を巡らせた。とはいえ中東情勢により原油供給が不安定になる中、現代日本の私たちにとっても当たり前の素材ではないことを思い知らされている。(新潟・SH)

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