2026/03/10
移り変わる街並み(埼玉・JK)
移り変わる街並み
▼工事を有機的に捉えるきっかけになったというのは、少し言い過ぎだろうか。ただ、この1年で多くの公共事業を取材したが、公告前に、流れ作業の記事執筆に追われ、工事自体を立ち止まって注視し、記憶に残った例は多くない
▼1年ほど前、発注者側の示唆もあり、取材に乗り出したのが秩父陸橋の撤去工事。山間部の埼玉県秩父市の中心街にあり市内唯一の陸橋で、街の「シンボル」ともされた。1957年に完成し、アプローチ部分を含めた全延長は約275mに及ぶ
▼地域の代表的な産業であるセメント工場からの引き込み線をまたぐ跨線橋だった。セメント工場は、渋沢栄一との縁がある企業だったが、路線廃止を経て取り壊すことに。一帯を平面化し、街並みも大きく変化する。「市外から秩父に戻った時に一番、秩父を感じる風景だった―」。秩父出身のある工事関係者がそう振り返るように、地元にとって事業規模以上に大きな意味を持っているようだ
▼当時、関係者の協力を得て、現場取材も試みた。橋はクレーンでつり上げて取り外す作業を控え、借りたヘルメット姿で作業用の足場を上った。高さ約6・5mの上部から俯瞰(ふかん)し、取り囲む街並みを撮影した
▼街と建設物とは不可分だ。建設物によって街は形づくり、街は生かされる。その推移が街の移り変わりだ。2年半の年月をかけて陸橋周辺の整備を進め、2027年度末にも新たな道路を開通させる見込み。その道路を将来、どれだけの車両が通るだろう。また、どれだけの人たちが新たな街づくりに関わっていくだろうか。そうした推移の中継点を、私たちは取材しているのだ。(埼玉・JK)















