コラム

2026/03/18

昔ながらの銭湯(埼玉・HK)

昔ながらの銭湯

▼厳しい冬が終わり、心地良い季節となってきた。年が明けてからの骨身に応える寒さは、今でも忘れられない。そんな折、ふと足を止めたのが近所にある銭湯だ。天高く伸びた煙突に、重厚な瓦屋根。昔ながらの素朴な銭湯である。あの日以来、私の休日は銭湯通いが日課となった

▼趣があるのは外観だけではない。一歩足を踏み入れれば、エントランスからロビー、脱衣所まで手入れの行き届いた板張りの床が続く。格(ごう)天井の脱衣場を抜けて浴室に入れば、壁一面に描かれた富士山のタイル絵が迎えてくれる。そして見上げるとそこはモニター屋根となっていて、湯気抜きの窓が設けられている。何度通ってもこの開放感は素晴らしい

▼湯船の温度は常に一定に保たれている。この水温管理のために、配管網やボイラー室の徹底した維持管理があるはずだ。さらに、ジェットバスやサウナといった設備も備わっている。これらを安全に稼働させるための、メンテナンスに対する熱意を感じる

▼一般家庭に内風呂が普及し、昔ながらの銭湯が消えつつあることは残念だ。しかし、年齢や性別を超えて人々が裸一貫で集い、疲れを癒やすこの場所は、単なる入浴施設ではない。地域コミュニティーを支え、日本独自の建築文化を継承する、まさに「公衆のインフラ」であるだろう

▼ジェットバスが力強く泡立てる音や、プラスチックの湯おけが床に響く軽やかな音。こうした五感に響く昔ながらの光景が、次の世代にも引き継がれることを願ってやまない。湯船に漬かり、心身の「ひび割れ」を補修した後は、また新しい現場へと向かう活力が湧いてくる。(埼玉・HK)

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