2025/11/18
かじ取りの個性が見える(埼玉・TK)
かじ取りの個性が見える
▼先月、母に会った折、実家に空調を設置するか悩んでいると聞いた。北海道・釧路町にある実家は夏でも涼しく、立派な暖房こそ設置してあるが冷房はなかった。少し前は窓を開けるだけで暑さをしのげたが、今年は真夏日が3日もある、地元としては前代未聞の夏。さすがに母も冷房の必要性を感じたという
▼ここ数年、国が交付する「緊急防災減災事業債」を活用した小中学校体育館への空調整備をよく取材した。交付期限が本年度内だったため、各自治体が期限内に工事を終えるべく早急な対応をしていた印象だ。県内の多くの学校で空調整備が進んだと感じる
▼とはいえ、文部科学省の公表によると小中学校体育館の空調導入率は5月時点で22・7%。普通教室の99・1%と比べると割合は低い。大きい自治体になるほど学校数も多く、事業債を活用しても莫大(ばくだい)な費用負担は避けられない。空調設置を喫緊の課題と捉えても、なかなか整備まで踏み出せない自治体の姿もあった
▼悩みの種は常に「どこにお金を出すのか」に尽きる。全国的に財政が圧迫されている中、何に重点を置き自治体を運営するのか。これまで以上に自治体のかじ取りの個性が色濃く浮き出てくる時代だという実感がある
▼全国の学校体育館への空調整備を加速させるための新たな交付金を受けて、工事に動き出した自治体もある。PFIなどによる効率的な空調整備を検討する動きも多い。各自治体にはなんとか困難な時代を乗り切ってほしいと思う。母は結局「孫と遊ぶお金のために貯金すると思う」と言う。全国の自治体が事業のとん挫を避けられるよう祈るばかりだ。(埼玉・TK)















