コラム

2026/03/12

無人空間の魅力を巡って(新潟・SH)

無人空間の魅力を巡って

▼平日のオフィス街の活気が休日に一転して広く静かな空間になるギャップが好きで、学生時代にあえてそのあたりの喫茶店で時間を過ごすことがあった

▼最近、この感覚を説明する「リミナルスペース」という言葉を知った。元々は階段や廊下などの人工的構造物を指す建築用語だったが、シュールな雰囲気を醸し出す無人空間という意味で使われるようになったという。誰もいない室内プールや深夜の駅構内などがこれに当たり、その非日常さが少しの不安感を生むことも特徴となる。昨年映画化もされた話題のゲーム『8番出口』も、この概念を表現したものと聞いた

▼廃虚に美しさを感じるという趣もあるが、リミナルスペースは朽ちてはおらず「機能している」点で異なる。誰もいない不安感と、照明・空調などが維持されている安堵(あんど)感が相まって不思議な魅力を感じさせる

▼建設業界の人手不足や高齢化を耳にすると、こうした空間を支える施設そのものの存続が気にかかる。維持できないほど老朽化した際に人材・費用が確保できなければ解体すらできないという恐れもある

▼清水建設は建て替え時に既存ビルの基礎を再利用する新工法で工期を約2割短縮できるという。また解体専業の三同建設は遠隔操作重機を導入、本社から現場の重機を操作できるようにする。いずれも人工やコストを抑えて活路を開く手法だ。業界の課題が「深刻化し続ける」と悲観的になれば、街並みが荒廃していく想像すらしてしまうが、こうした技術進歩の動きには目を配っていきたい。リミナルスペースという豊かさを次世代とも共有できることを願って。(新潟・SH)

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