コラム

2026/03/28

まちの意識を考える(新潟・CY)

まちの意識を考える

▼発見から20年。iPS細胞が実験室を出て、医療現場へ普及し始める。条件付きだが世界初の承認だ。日本の医薬品承認は遅いといわれる。近年は大幅にスピードアップしたそうだが、もどかしさもある。新しい医療の扉が開く春だ

▼そんな中、なぜ効果があるのか解明されていないにもかかわらず、日常的に使用されているものがある。麻酔だ。英語の論文に1日で100以上も目を通すという脳科学者の池谷裕二氏が、著書で触れていた。つい70年前まで人類は「頭部を殴ったり、頸部(けいぶ)を絞めて気絶させたり、アルコールを飲ませて酩酊(めいてい)させたりして」手術していた。今もなぜ効くか分からないが、膨大な臨床データから「安全な使い方」が先に確立した

▼まちのインフラはよく身体に例えられる。待ったなしの老朽化。対症療法から予防医療へ、生活の循環を止めないために夜を徹しての作業。この巨大な身体にも効く麻酔があれば。工事完了とともにまちが覚めて活動を始める、だとずいぶん楽だろう

▼新潟市内で1月に道路の陥没事故が発生した。実は当日、付近を通行していた。安全に通れて当たり前という自らの思考停止は、皮肉にも技術や維持管理の優秀さの表れだ。担当課の報告で、点検強化はもちろん、その上で、たとえ小さな変化でも地域住民からの指摘がありがたい、との言葉が印象的だった

▼池谷氏によると、最近では麻酔の探求が人類最大の謎「意識」に迫る可能性もあるらしい。まちの不具合を見つける意識とは何か。専門的な知見がなくても、生活する一人一人がインフラに関心を持つ、これが肝要ではないだろうか。(新潟・CY)

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