コラム

2025/11/20

ナイル川から家計簿まで(新潟・SH)

ナイル川から家計簿まで

▼物価高騰で家計が圧迫される中、電気代を削減したいと考えた時、まず何から始めるべきだろう。答えは「見える化」かもしれない。どの家電がどれだけ電力を使うのか、時間帯別の使用状況はどうか。データを可視化することで、具体的な策が見えてきそうだ

▼見える化という言葉は、1998年にトヨタの岡本渉氏が論文で発表したのが起源とされている。単純な可視化とは少し異なり、見えるようになった情報をどう生かすかまでを含む考え方だ。同社の生産現場では、異常があれば誰の目にも明らかになり、即座に対処できる仕組みが随所にある

▼建設業での見える化と言えば、まず測量が思い浮かぶ。その歴史は古く、紀元前3000年ごろのエジプトにまでさかのぼる。当時ナイル川は毎年氾濫し、農地の境界を失わせた。人々はその度に測量を行い、土地を区画し直すことで公平な分配を実現していたという

▼現代の建設業では、BIM/CIMにも見える化を推進する側面がある。2次元の図面を3次元モデルにすることで、設計段階から構造物と重機の干渉を事前に確認でき、施工時には作業手順のシミュレーションで安全性を高められる。さらにAR技術を組み合わせれば、現場に完成イメージを重ねて確認することもできる。設計から維持管理まで一貫して、部材などの属性情報を見える化し管理するという考え方が基盤にある

▼古代に暴れ川のほとりで生まれた「測って見える化する」という営みと、そこから課題解決へつなげるサイクルは、今も形を変え製造業や土木建設の現場、家計のやりくりに至るまで受け継がれている。(新潟・SH)

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