コラム

2026/08/29

脳にも養生時間を(山梨・SS)

脳にも養生時間を

▼「もう少しだけ、頑張ろう」。建設業では、工程の遅れを取り戻すために残業したり、自宅で図面や書類を見直したりすることも珍しくない。睡眠時間を削って仕事を進めることが責任感の表れと考えられがちだ。しかし、その「あと30分」が翌日の仕事の質を下げているとしたらどうだろう

▼例えば、ギターを弾く人であれば「昨夜は何度練習しても弾けなかったフレーズが、翌朝には自然に弾けた」という経験があるかもしれない。これは偶然ではなく、睡眠中に脳が練習した動きを整理し、記憶として定着させるためである。人は眠っている間も、翌日のための準備を続けている

▼この仕組みは建設業にも当てはまる。前日に悩んだ施工手順や工程が翌朝には整理されていたり、重機操作や測量、鉄筋・配管などの作業が以前よりスムーズになったりするのは、睡眠が技術を「自分のもの」にしているからだ。上達は現場だけで起きるのではない

▼逆に睡眠不足は、気付きにくい危険を招く。寝不足が続くほど判断力や注意力は低下し、エラーは増える一方、自分では眠気を感じにくくなるという。「今日は大丈夫」と思っていても、実際には反応が鈍っている可能性がある。高所作業や重機作業では、この「見えない寝不足」こそ警戒すべきリスクだ

▼コンクリートに養生期間が必要なように、人の脳にも能力を固める時間が必要だ。睡眠は「仕事をしない時間」ではなく、安全と品質、生産性を高めるための大切な工程である。「安全第一」を掲げる建設業だからこそ、十分な睡眠も欠かせない安全装備として見直してみてはいかがだろう。(山梨・SS)

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