コラム

2025/12/17

ターゲット・ロック(茨城・NM)

ターゲット・ロック

▼近頃新潟の地酒をもらい、ありがたく晩酌に頂戴しているのだがこの酒が甘い。断じて悪口ではないが水のようには飲めず、ほろ酔い程度で杯を重ねる手が止まってしまう。くださった方からは「高級なものではないよ」と断りがあり、確かに普通酒なのだがそれだけが理由ではなさそうだ

▼製造している酒蔵のホームページを見てみると、銘柄の説明として「蔵の所在地が農村地帯であるため、農作業の疲れを癒やす甘口、かつ少量で満足できるものを、と戦後に味の方針を定めた」という趣旨のことが書いてある。購買層であった農家に的を絞った酒造りを、現代に継承しているらしい

▼何事においても、ターゲットを絞ることは重要である。さる複合施設の建設に向けた住民説明会で、参加者の1人から出た言葉にはっとさせられた。「さまざまな機能を複合化することで、どの用途でも使いづらい中途半端な施設になってしまっている―」

▼昨今の日本酒ブームも、元々日本酒を飲まなかった人に魅力が伝わってのもの。人口減少社会における公共施設の複合化・集約化の流れの中、多機能化することで多くの人に利用してもらおうという考えはもっともだ。しかし、照準を絞って良いものを作り上げ、その良さが元々のターゲット以外に伝わることで新たな需要が生まれることもあるのではないだろうか

▼酒は辛口が好きな筆者だったが、くだんの日本酒をちびちび味わううちに甘口も悪くないと思えてきた。精いっぱい働いた後では優しい甘さが身体にしみわたり、また明日も頑張ろうと思える。的の外に居たつもりが、ずばりと射抜かれてしまった。(茨城・NM)

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