コラム

2021/06/11

手を携えて守り神(長野・HK)

手を携えて守り神


▼田んぼに水が入り、小さな苗が風にそよぐ。周囲の山々の緑も目に鮮やかに写り、咲き誇る花々もまた誇らしげに見える。新緑の季節は里山を里山らしく感じられる季節と言える。そんな田園風景の中に溶け込む集落の傍らにたたずむ道祖神が、また里山らしさを醸し出している


▼この道祖神。関東甲信越地域に多く見られ、市町村単位では長野県安曇野市が最も数が多いそうだ。隣接する松本市にもそれ相応の数が存在し、さしずめ道祖神のメッカとも言えるか


▼近年では縁結びや交通安全の願いに際しての神様として慕われているようだが、元々は村の境などにあって、疫病や悪霊などの侵入を防いでくれる存在であった。主は石で作られたものだが材質や形などはさまざま。いずれにしろ地域の守り神としてあがめられ、現在でも伝承されているお祭りもある


▼先の見えないコロナ禍。当初、島国である日本はまさしく水際で食い止めようとした。ウイルスは人間が媒体となってはるばる海を越えてやってくる。当然、空港や港湾における対策は施されていたであろうが、結果は推して知るべし。空港や港湾各所に疫病退散のお守りを設置するわけでもない現在では、人が防疫の事に当たるしかない


▼道祖神と聞いて、男女一対の図柄が石に彫られているものが頭に浮かぶ。仲睦まじく手をつないで寄り添うものが多いようだ。いかなる施策も国民の理解と協力なしでは成し得ない。何かと「説明責任を」との文言を目にするが、公共の福祉の名の下で繰り返される既得権者のご都合主義を改めて考える時期ではないか。(長野・HK)


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