国土交通省 施工安全企画室・岩見吉輝室長インタビュー
建設現場の生産性を抜本的に向上させて魅力ある現場づくりを目指すために国土交通省が打ち出した「i-Construction (アイ・コンストラクション)」の取り組みが建設業界から大きな注目を集めている。柱の一つとなる「ICT技術の全面的な活用」に関しては新たな基準の導入に向けた検討が進む。i-Constructionの取り組みのうち、ICT技術を活用した今後の施工の進め方などについて、国土交通省総合政策局公共事業企画調整課施工安全企画室の岩見吉輝室長に話をうかがった。
―なぜ今、i-Constructionに取り組むのでしょうか。
岩見 一番大きな目的は生産性の向上。技能労働者の割合でみると直轄工事の中で4割を占める土工とコンクリート工は生産性が上がっていない。ICT施工では土工の生産性を上げていく。人を排除するという話ではなく、今後の人手不足時代を見据えて、人手があまり必要のない方法に今のうちから変えていこうということ。単純な部分や危険な部分は機械が行い、もう少し高度な人間だからできる部分は人間が重点的に行う。i-Constructionを進めることで、役割が明確になってくると考えている。そして生産性を上げることで、建設業界にもっと元気になって欲しい。
―現在の取り組み状況を教えてください。
岩見 石井大臣は今年を「生産性革命元年」とし、省内に「国土交通省生産性革命本部」を設置した。その中心的なプロジェクトの一つにi-Constructionを挙げている。国土交通省の重要な政策の柱の一つとして重点的に取り組んでいる。今まで情報化施工と呼ばれていたものは施工の部分だけが3次元になっていた。i-Constructionでは、測量から設計、施工、検査、維持管理までの全体の流れを3次元で行い、プロセス全体の最適化を図る。測量や検査の部分を3次元で行うための施工管理基準、測量のマニュアルなどの基準を3月末までに策定整備しようと進めている。そうすることで4月以降にi-Constructionでやりたいと希望する建設会社は、全てこの基準で出来るという環境を作りたい。
―地域の建設会社にも関係する話なのでしょうか。
岩見 基本的にi-Constructionを適用していく工事は直轄の土工全てと考えているが、4月以降は全てi-Constructionのやり方でなければ駄目ということではない。地域の建設会社も希望する場合には出来るということであり、強制させることではない。将来的には全ての工事をi-Constructionのやり方で進めることを目指しているが、段階的に進んでいく話になる。また、大手建設会社による情報化施工は相当熟度が上がっており、今後も取り組んでもらえると思っている。今回のi-Constructionは中小の建設会社にもできるだけ広げていきたい。
―地域の建設会社で手を挙げる会社が少ないことも懸念されますが。
岩見 国土交通大臣がi-Constructionの取り組みを宣言したことは大きいと思っている。また、今まで情報化施工の取り組みを試験的に進めてきたが、情報化施工は発注者指定型と施工者希望型に分かれており、施工者希望型の割合の方が圧倒的に多い。ランク別ではCランクが特に多いことを考えると、情報化施工のやり方を分かっている会社は少なくないと思っている。まずは情報化施工を実施したことがある会社から手を挙げてもらい、経験のない会社にも広がることが理想。大臣による取り組みの宣言に加え、3次元用の基準類を整備して、より取り組みやすい環境を作ることで、今まで少し躊躇していた会社も手を挙げやすくなるのではないか。
―コスト面を不安視する声もありますが。
岩見 ICT建機の初期導入時に費用は掛かると思う。そこで2016年度からICT建機のリース料等を含む新積算基準を導入し、初期導入コストを負担する予定である。将来的に生産性向上の効果が大きく出てくると思っている。またICT技術を使いこなす人材育成も大きな課題だと認識している。
―都道府県や市町村の工事まで広がる可能性はありますか。
岩見 i-Constructionを導入して生産性が上がったのに、直轄工事だけでしか導入の効果が得られないのではなく、県の工事でもi-Constructionで施工し、その先には市町村の工事でも使える方が建設会社にとって効果の大きいことだと思う。規模が小さい現場でも情報化施工が使われている実績も少なからずある。そういった意味では市町村の工事でも活躍の機会は出てくるのではないか。
―建設業界へメッセージをお願いします。
岩見 国土交通大臣がi-Constructionをやると宣言したことは大きなメッセージを全国の建設会社に送ったと考えている。目指すものは生産性を向上させて企業の経営環境を改善