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千葉県建設産業団体連合会

「公共事業予算確保」で共通認識/結束した取り組み姿勢強調/県建産連が総会

2017/06/19 日刊建設タイムズ

 千葉県建設産業団体連合会(畔蒜毅会長、正会員11団体)の2017年度通常総会が16日、千葉市内のホテルポートプラザちばで開かれた。総会の冒頭で畔蒜会長は、県県土整備部の吉田行伸・災害・建設業担当部長らの来賓を前に、建産連が「県内建設業界を横断する唯一の組織」として、引き続き「中小建設産業に対する受注機会の確保・拡大をはじめ、入札・契約制度や業行政施策の改善、地産地消の推進、建設産業の社会的役割に対する正当な評価の獲得に向けて、結束して取り組んでいかねばならない」との決意を示した。


 ◆発注者の対応改善も


 知事選により、骨格予算としてスタートした本年度の県予算について畔蒜会長は「今月1日に、公共工事を含む政策的な事業費を盛り込んだ6月補正予算案が発表され、投資的経費として379億円を計上、当初予算と合わせると、前年度から4・3%増の1563億余円となった」と説明。一方、県幹部らに向けて「議会終了後の早期発注」を強く要望するとともに、建産連については「総合建設業、専門工事業、測量等の建設業務団体で構成され、『公共事業予算の確保』が共通する最重要課題である」と強調した。

 また、建設産業界を取り巻くここ数年の状況については「国の公共事業予算が毎年、前年度並みの事業費を確保するだけに留まり、特段の景気対策が講じられなかった」とし、そのことから「依然として地方経済は低迷し、建設関連企業の活性化も進んでいない状況にある」と厳しく指摘。これらに対して「政府による新たな景気対策が不可欠である」との考えを示した。

 さらに「いわゆる担い手三法により『工事ごとに利益が確保できる仕組みづくり』に向けた国、県等の取り組みが進められている」と説明した畔蒜会長は、「県内には依然として『予定価格の適正な設定』や『スムースな設計変更』といった、発注者としての対応が進んでいない自治体も多い」と指摘。「この改善こそが急務ではないか」と訴え、あいさつを結んだ。


 ◆上半期で暫定8割/補正後に再検討へ


 引き続き、来賓を代表してあいさつした県県土整備部の吉田災害・建設業担当部長は、まず、今年3月に発生した鳥インフルエンザへの対応について「連合会の会員のみなさんから多大な協力を頂き、72時間の中で無事におさめることが出来た」と述べ、感謝の意を表した。

 また「千葉県が持続的に経済発展していくためには」として吉田担当部長は「老朽化が進む施設の長寿命化や東京オリンピック・パラリンピックに向けた道路ネットワークの充実など、中長期的視野に立ったインフラ整備等の維持管理が必要不可欠」とし、「本県の建設産業を担われるみなさんの役割は、ますます重要になってきていると再認識した」と強調。

 一方、本年度骨格予算での県土整備部一般会計当初予算が822億円余で、前年度当初予算の71%に留まることについても「県内経済の好循環に向け、引き続き公共事業の早期執行に努めることが必要だ」との考えを示し、県土整備部においては「当面の間となるが、当初予算の目標契約率として『上半期8割』を目指して、円滑な事業の執行に努めている」と言明。

 他方、昨日開会した6月定例県議会に県土整備部は、補正予算として一般会計306億円を上程したことに言及した吉田担当部長は「これが成立した暁には、補正分を含めた執行目標を改めて検討する予定でいる」との方針を示し、併せて「ICT活用工事や完全週休二日制モデル工事の試行など、建設産業の生産性向上や労働災害の減少、担い手確保の支援に努めていく」と強調。加えて「個々の取り組みについて色々な意見があることも承知しているが、持続可能な建設産業に向けて取り組んでいくので、みなさんも経営基盤の強化により、県民の安全で安心な県土づくりに一層のご支援ご協力を賜りたい」と要請し、祝辞とした。


 ◆2017年度の諸情勢

 政府と日銀による経済・財政政策により、長年続いたデフレ経済を脱却し、回復基調に向かうかにみえた日本経済だったが、中国経済の成長の鈍化が明確になった影響や米国新政権の誕生に伴う政治・社会情勢の流動化により、経済情勢は不透明感を増しており、数か月先の動向さえ見通すことが難しい状況に直面している。

 また、地方経済についても、依然として活性化する気配はみられず、国の当初予算の早期執行と合わせて、具体的な景気対策を求める声が強まっている。

 そのような情勢下で、千葉県の2017年度当初予算は、知事選に伴う骨格編成予算となり、政策判断を要する事業や新規事業、投資的経費の新規着手分は「肉付け予算」として6月補正予算として編成されることになっている。

 これまでの公共事業を巡る情勢は、2011年に発足した安倍政権による大型補正予算の編成により、一時的に事業量は増加したものの、それ以降の単年度予算については、前年度の水準は確保されても、公共事業を用いる特段の景気対策には踏み込んで来なかった経緯から、17年度当初の国の公共事業予算は、ほぼ5年前の規模と変わらない水準に留まっている。

 そのため、地方建設産業の受注環境はじり貧傾向をたどっており、オリンピック開催等に関連する多くのビッグプロジェクトを抱える首都東京を始めとする大都市と地方での「事業量の地域間較差」と、中央大手建設業と、地方中小建設業の「利益率の企業間較差」が拡大する一方という両極化傾向が顕著になっており、これを食い止めるための施策の導入が待ったなしという状況に直面している。

 こうした状況を受けて国土交通省では、建設産業の10年後を見据えた産業政策を議論する方針を打ち出し、当面、建設産業政策会議の中に「地域建設業ワーキンググループ」を設置し、地域建設業に期待される役割、地域建設業の方向性、地域建設業が今後目指すべき姿など、7テーマについて検討し、地方のインフラ整備を支え、災害時には、最前線で、地域と住民の安全・安心の確保を担う「地域の守り手」である地方中小建設業を評価していく方向に踏み出した。

 本連合会をはじめ地方建設産業界には、建設現場の生産性向上に向けたi-Constructionなど、ICT(情報通信技術)化等の先端的な施策の導入を加速させることより、地方経済と地域の安全・安心を守る建設業の活性化対策を優先させるべきという根強い意見があることから、国交省での今後の産業政策に関する議論の帰趨が注目される。

 いずれにしても、地球温暖化等に起因するとみられる大型化、激烈化する一方の気象現象に加えて、地震や火山噴火などの頻発により、人命と社会・経済インフラを喪失し続けている事態は、依然として脆弱な国土整備の実情を露呈しているものであり、災害に強い国づくりを前進させていくことが喫緊の課題になっている。

 また、いわゆる「担い手三法」により、建設産業の担い手を育成・確保していくために、受注者の適正な利潤を確保すること、そのために発注者は適正な予定価格を設定することをはじめとする責務を地方公共機関の末端にまで浸透させ、徹底させていくことが依然として大きな課題として残されている。

 こうした発注者の責務の一方で、建設産業界には、技術・技能者の育成確保と賃金、休暇、社会保険の加入対策の推進など、人材確保と労働環境の改善により、若者が将来を託すことができる魅力ある産業づくりへの一層の取り組みが求められているほか、今後一層重要になる公共施設の長寿命化対策への貢献や、自然災害発生時の緊急対応と復旧活動を通じた地域住民の安全・安心確保、そして地域社会と経済の活性化に貢献していくための活動強化が求められている。

 本連合会としては、以上のような情勢と認識の下、次のような事業計画に基づく活動を展開していくこととする。


 ◆具体事業計画

 【建設産業構造改善事業の推進】

 ○建設産業イメージアップのための活動の推進=千葉県魅力ある建設事業推進協議会(CCIちば)が実施する建設産業のイメージアップを図るための活動推進に参画する

 ○各種講習会・研修会等の開催及び参画=国土交通省、千葉県及び千葉県建設業協会ほかの会員団体が主催する講習会・研修会等を共催及び協賛参画する。建設業協会が主催する「新入社員研修会」への参加/国、県等の新たな入札契約施策等に関する講習会の開催/労働環境改善、人材確保対策など、魅力ある職場環境づくりに資する講演会等の開催

 【要望活動】

 〈国、県に対する要望活動〉

 ○全国府県建設産業団体連合会(全国建産連)会長会議等の場を通じて、中小建設産業の立場を代表して要望活動を行う

 ○県土整備部との意見交換の場を通じて要望活動を行う

 ○自然災害から県土を守る施策の推進とともに、その一翼を担う地元企業に対する優先発注など、各団体が共通認識する事項について要望活動を行う。また、異業種間連携に資する意見交換会等を企画する

 【会員団体相互の情報交換と諸会議の開催】

 ○国及び県の行政施策等に関する情報を収集し、適時会員団体に提供する

 ○全国建産連の事業活動に参画するとともに、月刊「建産連」等関係資料及び情報を収集し、会員団体に提供する

 ○会員団体との連携強化を図るため、事務局長等連絡会議を開催する

 【諸会議】

 ○県建産連関係=通常総会(6月16日)/理事会(年複数回)/正副会長会議(年複数回)/監事会(年1回)/会員団体事務局長等会議(随時)

 ○全国建産連関係=通常総会(6月26日、東京・東海大学校友会館)/全国会長会議(9月27日、京都市)/評議員会/委員会/国等に対する建議・陳情(状況に応じて随時)

 ○県土整備部等との意見交換会・懇談会(11月)

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