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建設業労働災害防止協会千葉県支部

危険を見極める力と感性/「油断」が最大の敵/建災防京葉分会が説明会/第90回全国安全週間準備期間

2017/06/27 日刊建設タイムズ

 建設業労働災害防止協会千葉県支部京葉分会(石神信夫分会長)は14日、市川市内の京葉建設会館において「2017年度全国安全週間実施要領説明会」を開き、会員50人余が出席した。船橋労働基準監督署の松崎勉署長からのあいさつをはじめ、石井孝雄・安全衛生課長による「全国安全週間実施要綱説明及び労働災害の発生状況等」、県習志野保健所の監物かおり・主任保健師による「受動喫煙防止対策を進めましょう」~受動喫煙防止対策のてびき~の説明。また、大塚製薬㈱ニュートラシューティカルズ事業部の高井利夫・営業開発担当課長を講師に迎え、「知って防ごう熱中症!」~働く人のための熱中症対策セミナー~をテーマとする特別講演で構成した。


 ◆7月1日からの本週間へ


 全国安全週間は「人命尊重」を基本理念として1928年から実施され、一度も中断することなく今回で90回目を数える。本年度のスローガンは『組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化』。6月1日から30日までを準備期間とし、7月1日から7日までを本週間として展開する。

 説明会に先立ち、主催者を代表して石神分会長は、建設業における死亡者数は全体的には減少傾向にあるものの、休業4日以上の死傷災害は増加傾向が続く状況について「特に残念なことに、当船橋労働基準監督署管内の労働災害発生件数は依然として増加しており、建設業では昨年に一人、本年も既に転落災害により、一人の尊い命が失われている」と説明。建設技能者の高齢化や団塊世代の大量退職により「ノウハウ喪失下での新規入職者や若手見習い工等の増加が予想されるなど、建設業に従事する方々の安全と健康を取り巻く環境は厳しさを増しつつある」との危機感を示した。

 一方、その中での京葉分会の役割としては「一段と地域社会に貢献する機会が増える中で、会員全体が『死亡事故ゼロ、無事故無災害』を祈念するとともに、一致協力してさらなる安全を目標に事業を実施していくことが肝要であり、その責任を果たすことが大切」と表明。会員に対しては、7月1日からの安全週間を契機に「日頃から実施している安全施行サイクル等の安全衛生活動の再徹底を図るとともに、死亡災害の中で高い割合を占める『墜落・転落災害』『建設機械・クレーン等災害』『倒壊・崩壊災害』の三大災害の撲滅に重点を置き、災害防止対策の積極的な取り組みをお願いする」と要請。さらに、熱中症の予防についても「各社の実情に即した実施計画を策定し、トップの強力なリーダーシップのもとに、関係者が一丸となり、労働災害の防止に万全を期してほしい」と呼びかけ、あいさつとした。


 ◆危険管理と排除/安全に置き換え


 引き続き「私は毎年、安全週間を迎えるにあたり、安全スローガンの中からキーワードを見つけ、それにこだわって、その年の安全週間を考えている」と述べた船橋労働基準監督署の松崎勉署長は、今年の安全スローガンについて言及。「『安全』という言葉を3回繰り返し使っているが、過去に『安全』を複数回使ったスローガンはない」とし「使われ方は『安全管理』『安全活動』『安全文化』である」と紹介。そのうち安全管理は「結局のところ『危険管理』。危険を管理するのが安全管理で、同じく、安全活動は『危険を取り除いていく』ものとなる」と分析。総じて「このスローガンは『組織で進める危険管理、みんなで取り組む危険排除活動、未来へつなげよう危険のない文化』と置き換えることが出来る」とした。

 また「安全活動を進めるうえで、まずは『危険を感じる』こと」とした松崎署長は「危険の感性を高めるとともに、危険を見極める力を身につけることが大事である」と指摘。併せて、昨年の安全スローガン『見えますか?あなたのまわりの見えない危険 みんなで見つける安全管理』を引用し「見えない危険をみんなで見つけようという、これこそが安全に対する感受性を高めるものだと思う」と強調。

 その一つとして「現場を見て不安全な状態がない、不安全な行動がないので良しではなく、もう一歩踏み込んで、今は安全な状態で安全な行動だが、どこがどう変わると怪我をするのかを考えてみる。そうすることで、見えない危険があぶり出せ、危険に対する感性、危険を見極める力に繋がると思う」と主張。

 さらに「もう一つは、そうやってあぶり出した危険への対応である」とした松崎署長は「建災防会員の事業場における安全水準は高く、日常的には心配ないが」と前置きしたうえで「やはり『油断』をすると、思いがけない事故や災害が起きる可能性がある」と指摘。その例として、アメリカ航空宇宙局(NASA)が1981年から2011年にかけて135回打ち上げた、再使用をコンセプトに含んだ有人宇宙船の「スペースシャトル」に言及。そのうち、1986年のチャレンジャー号と2003年のコロンビア号の2件の大きな爆発事故について「いずれも原因は油断である」と断じた。

 最後に松崎署長は、包丁の使い方による『上手切らずの下手切らず』の言葉について「達人・名人の域に達すると、包丁で自分の手は切らない。一方で初心者は、注意深く用心して切るので指を切らない。一番危ないのは、普段そこそこ上手く使える人が油断をした時に指を切るという戒めである」と紹介。会員に対して「これは包丁だけに留まらないと思う。油断のない安全衛生活動を行って頂きたい」と呼びかけ、あいさつに代えた。

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