記事

事業者
栃木県鹿沼市

鹿沼市、旧西大芦小を観光拠点に、20年度に改修工事、9月に都内2社でSPCを設立、1~3階結ぶエレベ

2019/07/20 日本工業経済新聞(栃木版)

 鹿沼市の旧西大芦小学校(草久960)が、観光交流型複合拠点施設「レトロリゾート西大芦」に生まれ変わる。市は維持管理運営に当たる特別目的会社(SPC)に対し、施設改修費の一部を支払う方針を固めた。2020年度一般会計当初予算案に事業費を措置する。これに先立ち、22日に開会する市議会7月定例会に賃借料を一定期間全額減免する議案を上程する。最終日の8月9日に可決の見通し。8月には建設関連産業JM(東京・千代田区、大竹弘孝社長)と基本協定を締結。9月にはJMと旅行代理業LUKES(東京・港区)がSPCを設立。市はSPCと定期建物賃貸借契約を締結の運び。20年度に改修工事に着手し、21年度には供用を開始する。民間活力導入による本格的な廃校活用は市内初。

 市は昨年5月から9月にかけ、旧西大芦小利活用に関するサウンディング型(対話)市場調査を実施。JMは「レトロリゾート西大芦」を提案した。市民間提案評価委員会が事業内容を採択し、市は昨年末にJMと優先交渉協定を締結した。

 西大芦小は1874年に創設され、昨年3月末に開校以来140年以上の歴史に幕を閉じた。児童数減少に伴い、西小に統廃合された。地域住民の要望に応じ、市は校舎1階の一部に西大芦コミュニティセンター、へき地診療所の移転を決定している。

 西大芦小は敷地面積8613平方m、校庭面積4056平方m。校舎はRC造3階建て延べ2395平方m。体育館はS造平屋建て延べ458平方m(アリーナ、ステージ、控室、体育器具室)。ほかにプール、プール更衣室、体育小屋を併設している。

 校舎は1991年度に改築しているだけに、新耐震基準を満たす。市内小中学校校舎の中では比較的新しい建物。体育館は2015年度に耐震改修済み。公共施設以外の利活用策は、民間事業者の創意工夫を生かした効率的で柔軟な発想を求めた。

 市、JM、地域住民の3者は昨年末~今年6月の間、課題解決や条件整理の協議会を6回開催。地域住民は例年の夏休み期間中に限り、校庭を観光客に貸し出す駐車場事業を実施。昨年9月には、調理室を使って週1回約100食を供給する弁当宅配事業を開始した。

 協議の結果、JMは地域住民事業との連携に合意。JMは公共施設の移転を含め、施設全体の改修工事を一括受託する。市は改修工事費の一部(公共施設、共用部)を負担金の形で支出。SPCの事業収支が安定するまでの期間、市は賃貸借料を全額免除する方向。

 JMの事業内容は①宿泊施設②研修・合宿・スポーツ施設③飲食・物販施設-への活用。機能は大芦川フォレストビレッジ、大芦川、古峯神社、古峯園といった周辺の観光資源を最大限活用する観光拠点、情報発信基地、交流拠点。1年中楽しめる市の新名所を目指す。 

 配置計画では校舎1階にフロント、コミュニティールーム、レストラン、2~3階に客室、多目的広場を設置。1~3階を結ぶエレベーターを新設。校舎裏手に大浴場を設け、体育館やグラウンドはスポーツ施設、物販会場、イベント会場に活用する。

 LUKESは外国人旅行者への数多くのツアー実績を有すほか、インターネット通販、市場開発や新商品開発、各種イベントの運営、人材育成のノウハウを持つ。JMは訪日外国人観光客の誘致や各種イベントの開催、ネット通販事業の展開を視野に入れている。

 有事の際は地域の「災害避難場所」の役目を果たす。セブン-イレブン・ジャパンやソーラーフロンティア(昭和シェル石油子会社)と連携し食料、水、エネルギーを供給。校庭を開放し、周辺住民と一体となった防災訓練や見守りサービスの実施を計画している。

 JMとLUKESは出資するSPCに役員を派遣。SPCは新たに維持管理・運営業務を委託する企業や任意団体、個人を募集。選定された者はSPCと業務委託契約を結び、業務に当たる。SPCは地元草久に会社所在地を登記する。

 JMは準備段階から事業開始まで「レトロリゾート西大芦運営協議会」を設置し、市や地域住民と常時連絡を取り合う組織づくりに努めていく。JMは住民が企画・実施する料理教室や地域イベントへの協力姿勢を示している

 西大芦地区は市北西部に位置する面積79・03平方㎞の山村地域。市内面積の約16%を占め、豊かな緑と清流に恵まれている。春から秋にかけては西大芦川のヤマメ、アユ釣り、夏季の川遊びにより県内外から多くの観光客が集まる地域資源の宝庫。

 高齢者の割合が多く、過疎化が進んでいる。地域住民だけでは自主事業の永続的な運営は厳しいため、民間事業者の参入支援を求めていた。弁当宅配事業は1階レストランの調理室を共同利用することを確認。SPCは地域住民を雇い入れ、地域活性化に貢献する。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら