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「担い手確保」対策が重要/「地域の担い手」アンケート/茨城県内

2019/08/07 日本工業経済新聞(茨城版)

 東日本建設業保証㈱は、地域建設業の課題である担い手確保について聞いた「地域の守り手」アンケート調査(2019年1月)で、茨城県内の764社から回答を得た結果をまとめた。従業員の過不足感は技術者、技能労働者で不足が多く、2019年度は採用希望人数の約半数しか採用できていない。採用で重要な課題は「賃金」「休日」「建設業のイメージ」が多かった。週休取得を増やすために効果的なものでは「適正工期(余裕ある工期)」「人手の確保」「書類の簡素化・削減」が多い。働き方改革については「知ってはいるがよく理解していない」が約半数。事業承継については、課題に「後継者・人材の不足」「今後の地域の工事量」を挙げた企業が多かった。


 調査からは担い手の確保に苦労していることがうかがえ、働き方改革を進めるには適正工期などを求めている。地域のインフラ整備や災害対応など「地域の守り手」である地域建設業が安定経営を続けていくには、担い手の確保対策が重要であることが浮き彫りになった。

 調査対象は茨城県に本社がある同社の顧客で、資本金1億円以下の建設業者。調査期間は今年1月9日~1月31日。代表者や経営管理者に回答を求めた。

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 調査結果の概要は次のとおり。


●人材確保の状況


 【19年度(4月~12月)の採用状況】

 採用できたは225社で全体の29・5%、採用できなかったは269社で同35・2%。できなかった割合が多く、人材確保に苦労していることがうかがえる。

 採用できた人数は技術者167人で同34・6%、技能労働者241人で同49・9%。

 【過去3年度の採用と離職状況】

 前々年度は採用334人、採用人数のうち離職115人で離職割合34・4%。前年度は採用364人、離職153人で離職割合42・0%、本年度は採用416人、離職107人で離職割合25・7%。

 離職割合は本年度は減少したが、採用した4分の1が離職しており、担い手の維持に苦労している。

 【従業員の過不足感(19年1月時点)】 

 技術者、技能労働者は6割~7割が「やや不足」「不足」。事務職は約半数は「ちょうどよい」となっており、技術者や技能労働者の不足感が大きい。

 【採用活動で重要な課題(3点まで)】

 賃金(611社)、休日(487社)、建設業のイメージ(400社)が多い。これらへの対応が喫緊の課題といえる。


●人材育成


 【人材の育成方法(複数回答)】

 「所属部署での実践が中心」381社、「社外講習会に参加」350社で多い。

 【人材育成の重要課題(3点まで)】

 育成側の人員余裕、時間的な余裕が最も多い。育成される側のモチベーション維持も多かった。

 【資格取得の支援(複数回答)】

 資格の取得などへの費用補助、保有資格に応じた手当支給が多い。社内勉強会の開催もあった。


●賃金


 【従業員の賃金支払い形態】

 技術者は「月給制」が79%と多いが、技能労働者は「月給制」は35%にとどまり、「日給月給制」が61%と多い。


●週休など


 【就業規則などで定めている週休】

 完全週休二日は技術者7・6%、技能労働者5・4%と低い。事務職は29・2%。4週6休などが圧倒的に多い。

 【週休取得を増やすために効果的なもの(3個まで)】

 「適正な工期(余裕ある工期)の設定」が480社、「現場に関わる人手の確保」が427社、「発注者への提出書類の簡素化・削減」が425社と多い。そのほかに「日給月給制対策(労務単価・賃金の引上げ)」「施工の効率化・平準化」も多かった。


●働き方改革


 【働き方改革に関する政府の取り組み】

 改正労働基準法の施行(19年4月)で、建設業は5年間の猶予期間後に罰則付きの時間外労働の上限規制が適用される。

 「上限規制の適用は知っており、内容も理解している」との回答は114社で14・9%にとどまる。「適用は知っているが、内容はよく理解していない」は454社で、半数以上。内容の周知徹底が必要となっている。


●事業承継


 【事業承継の方向性】

 「後継者は決定済み(予定含む)」は328社で42・9%。「後継者は未定」は176社で23・0%。「事業売却、合併、解散・廃業等を検討」は66社(8・6%)あった。

 【事業承継の課題(複数回答)】

 最も多かったのは「今後の地域の工事量」で466社。次いで「後継者・人材の不足」373社。「事業承継に係る税制」も131社あった。



【図=従業員の過不足感、採用活動で重要なもの】

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