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栃木市、災害対応で着工延期、当面は水路改修を先行、子どもの遊び場、水害教訓に地面嵩上げ

2019/12/25 日本工業経済新聞(栃木版)

 栃木市は、子育て支援施設「子どもの遊び場整備事業」(祝町4-21)の計画を軌道修正する。台風19号の災害復旧を最優先し、当初予定していた来年6月の着工を延期する。市総合計画に掲げた「子育て支援環境の整備」を実現する子育て世代から要望の高い施設だけに、若干の遅れはあっても可能な限り早期に着工するという姿勢は崩してはいない。災害の教訓を踏まえ、敷地は嵩上げする。建物の規模はS造平屋建て延べ1585平方m。概算の総工費は約12億円を見込んでいる。

 子どもの遊び場は旧下都賀病院北病棟を解体し、跡地に屋内型遊戯施設を新設する。名称は「市中央児童センター」(愛称は別途公募)に決まった。基本・実施設計は18~19年度の2カ年間で牧田設計(栃木市)が担当中。実施設計の履行期限は来年2月まで。

 市内は台風19号の来襲で1級河川永野川が決壊し、県内最大級の甚大な被害が発生。市は約144億円に上る補正予算を組み、災害復旧に全力を挙げている。下都賀病院北病棟跡地は災害ごみの仮置き場に使用され、市中心部の災害ごみの一時保管場所となった。

 市では12月補正予算で準備工事費を措置し、水路改修を渇水期に施工するスケジュールを組んでいた。敷地が2本の開水路で分断されるため、水路の暗渠化で敷地を最大限に活用。上部はアスファルト舗装し、駐車場や駐車場の進入路に有効活用する手はずだった。

 水路改修はボックスカルバートが2800㎜×1500㎜を延長48・6m、450㎜四方を延長27・2m、側溝は250㎜四方を延長27m布設する予定。そんな矢先に台風19号が通過し、水路工事予算の計上を見送らざるを得ない状況に追い込まれた。

 水路工事の終了を待って20~21年度の2カ年間で建屋建設、21年度中の駐車場整備、21年度11月のグランドオープンのスケジュールは先送りが確定。次期予算編成時に改めて水路工事費が配分される見通し。水路工事は5カ月程度を見込む。

 計画地周辺部一帯の家屋は、床上浸水被害に見舞われた。計測の結果、水位は80㌢に達した。同様の水害に備え、設計の修正で地面高を1・1m盛土する。基本設計案のパブリックコメントに寄せられた市民の意見は、作成中の実施設計に反映する。

 主な変更点は集会室を多目的集会室に、トイレ周辺にオムツ交換室、ロビーに小上がりや図書室をそれぞれ設置。遊具は垂直式のボルダリングを緩斜面とし、上った後は滑り降りる。ボールプールは乳児ゾーンと少し上の世代向けに2カ所設置する。

 建設地はJR両毛線と東武日光線が乗り入れる栃木駅から徒歩15分圏。南側の一般県道太平山公園線と北側の市道11175線に挟まれた敷地5589・09平方m。用途地域は第1種中高層住居専用地域、第1種住居地域。建ぺい率60%、容積率200%。

 設計コンセプトは好奇心を満たすわくわくする空間、安全安心に利用できる施設、世代を超えた交流促進、誰もが使いやすい機能性、周辺環境への配慮、長寿命で耐久性に優れた建物。年間利用者数は20万人が目標。利用料は少額を徴収し、駐車場は無料開放する。

 屋根形状はR屋根と切り妻屋根を比較検討の結果、R屋根に落ち着いた。R屋根は①外力が分散され、合理的な構造体となる②丸みを帯び、子どもの施設らしい柔らかさを表現③住宅地への日影を抑えられる④空調負荷が軽減-と利点が多かった。

 面積内訳は遊戯室880平方m、共用部526平方m、管理機能179平方m。上る、滑る、跳ねるという全身を使って遊べる遊具や知育遊具を配す。「動的遊び」「静的遊び」「乳児」「多目的」の4つにゾーニング。タワー型滑り台は高さ約8・5mの落差がある。

 屋根の高い開放的な遊戯室は南側に配置。音量が少ない部屋は北側(ロビー、ホール、事務室、相談室、更衣室、授乳室)と西側(集会室、倉庫、トイレ、機械室)に分ける。人の集まるスペースは近隣住宅から離し、入り口は駐車場に近い部分に設ける。

 子どもの遊び場は児童福祉施設に位置付け、諸室条件(集会室、創作活動室、遊戯室、事務室、トイレ)を整える。市児童館条例と市児童館条例施行規則の一部改正が必要。市民からは「室内遊具が豊富で家計の負担にならない施設」の要望が数多く寄せられている。

 当初は北病棟のうち新耐震基準を満たす増築棟を子育て支援施設に改修する計画だった。17年度の既存建物調査の結果、設計書通りに施工されていない個所があることが判明。壁の厚みが足りず、改修より新築の方が建設コスト削減につながると判断した。

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