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新型コロの影響で民間建築も発注予定の見直し必至に

2020/04/24 埼玉建設新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動自粛の影響が県内の民間建築で一段と強まってきた。公共発注機関と同様、民間事業者の間でも年度当初の発注計画を見直したり、着工予定だった工事の当面延期を決断したりする動きが広がっている。案件によっては2020年度内の工事完了が不可欠なものもあり、発注者らは建築計画のシナリオ変更で頭を悩ませる。

 「必要な予算は確保しているが、現状では適切な発注時期が見通せない」

 ある学校法人の施設整備担当者は、新型感染症の影響で年度当初の発注予定が白紙になった現状をこう話す。

 20年度は学生らの学習環境を改善する施設改修などを実施予定だったが、工事はまだ1件も発注できていない。

 現在の緊急事態宣言下では、人の移動・接触を誘発してしまう工事を計画通り進めるのは困難だ。仮に工事を発注しても施工者が入札に手を挙げず、入札不調に終わる可能性も高い。

 「5月6日が期限の緊急事宣言が解除されるまでは、静観せざるを得ない」と同じ担当者。社会情勢を注視しながら、公共工事の発注状況も参考にして、適切な発注計画をつくり直したい考えだ。

 年内着工が決まっていた案件では計画変更の動きも出てきている。

 県内で延べ床面積1600㎡規模の新施設建設を計画していたある財団法人は、6月の着工予定を延期した。

 担当者は「施工者からの申し出で、とりあえず3カ月程度の着工延期を決めた」と説明する。

 発注者の経営方針によっては、計画していた施設が完成しないと自社活動に影響が出る可能性もある。この法人の場合は、新施設開設まで既存施設を代用できる余裕がまだあるため、営業停止といった非常事態は避けられる見通しだ。

 不幸中の幸いではあったが、延期が3カ月で済むかは不透明。この担当者は「大幅は工期の遅れはもはや仕方ない」と既に頭を切り替えて業務に当たっている。

 県内に延べ床面積約2600㎡規模の共同住宅新築などを計画していたある不動産開発業者は、感染拡大防止のため従業員の交代勤務を導入。限られた人手で施工者らとの調整に奔走する。

 ただ、これにより事業所の対応が手薄になり、顧客の情報共有などが徹底されない恐れも想定される。こうした事態は、経営者の手腕がより一層試される局面でもありそうだ。

 緊急事態宣言が解除されても、感染症終息のめどが見通せない状況では、工事再開に簡単には踏み切れない。建築工事の場合は屋外の土木工事に比べ密閉、密集、密接のリスクが高いとの見方もあり、工種によっても慎重な対応が求められている。

 発注担当者らの不安や焦りは当面消えそうにない。

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