14日に開かれた地域を支える調査・設計業検討会議で、県が委託業務における総合評価落札方式の見直し案を示した。具体的には災害活動実績の評価項目を追加するもので、調査設計各団体から意見を募り、来年度の会議で議論を深める。早ければ2025年度中にも運用を開始する。
現行、災害対応の評価は、社会貢献の項目で「災害時緊急調査当番登録」と「災害時緊急体制の整備」に各0.5点、最大1点を加点している。業界団体はかねてより、災害時の活動実績を評価する仕組みを求めており、県は今回「過去5年間または現年度において、県または市町村との災害協定に基づく災害活動実績(緊急調査等)を有する者」に0.5点、「県・市町村と災害協定を締結している者」に0.25点を加点する案を示した。ただし、社会貢献項目の配点1点は据え置く考え。
検討会議の冒頭、栗林一彦建設部次長は「25年度予算は原案通り可決された。切れ目ない発注、さらなる平準化に努めたい。来年度も十分な強靱化予算を確保できるよう、引き続き国へ働きかける。建設産業が将来にわたり活躍するには、担い手の確保、働き方改革が喫緊の課題と認識している。そのための入札制度見直しや新たな取り組みを予定している」と述べた。
これを受けて県測量設計協会の吉竹行仁会長は「昨年4月からの入札制度変更に伴い、業界の中で議論が活発になってきたと実感している。品確法の改正により、技術力があり、地域に根差した企業を育成する方向づけがなされた。私どもはそれに応えるべく、技術力、地域貢献度を上げていく」と決意を示した。
議事では県が総合評価落札方式の見直し案のほか、工事等書類の標準化や、オンラインによる電子納品の取り組みを紹介。電子納品についてはシステムを構築し、25年度から従来CDやDVDで保管していたデータをクラウド上に保存する取り組みを開始する。
県測量設計協会からは「人手不足に対応するため、品確法を順守しつつ、AI技術を活用・導入し、受発注者の効率的な発注業務を図ってほしい」との提案が出た。これに対し県は「業務の効率化、円滑化に努めている。国の動向を注視しながら活用を検討していきたい」と答えた。
県建築士事務所協会は「市町村におけるダンピング対策を一層推進してほしい。町村では最低制限価格を設けていないところがほとんど」と提起。県は「引き続き適正な入札制度に向けて町村のサポートを行っていく。業界からも市町村の動向を教えてほしい」と応じた。
建設コンサルタンツ協会長野地域委員会は「現在の入札制度は技術力を評価していない。また、ベテラン技術者を重要視しているため、若手への技術継承を難しくしている。技術力を評価することが業界全体の底上げにつながる」と提案。これに対して県は「技術力を評価することは大切。受発注者の負担軽減につなげるためにも、体制を見直していきたい」と答えた。
技術管理室の折井克壽室長は総括で「AI活用の提案をいただいた。発注書を短時間に作成できることは、職員が減少する中、効率化が図れる。建設コンサルタンツ協会から要望があった技術力を評価できる簡易型の入札制度も前向きに検討したい。市町村のダンピング対策には、皆さま方の健全経営を念頭に、県としても積極的に働きかけたい。気になる自治体があれば連絡してほしい」と述べた。
また、アドバイザーとして参加した長野工業高等専門学校の永藤壽宮名誉教授は「今年の卒業生で測量設計業への就職した者は残念ながらいなかった。本日の意見で出たAI活用については、スキルの習得やカスタムAI開発に費用や時間がかかる。県の講習会や、公的な補助を活用することも一案」と助言した。