3月16日に投開票が行われた千葉市長選挙で2期目の当選を果たした神谷俊一氏は、都市機能の更新について「今、検討しなければ、数十年後まで答えを持ち越すことになる。重要な局面を迎えている」と警鐘を鳴らす。主に、新湾岸道路の整備など広域道路ネットワークの構築、駅周辺など中心市街地の活性化、千葉マリンスタジアムの再整備を含む幕張新都心のまちづくり、公共施設の大規模改修、学校体育館への冷暖房設備整備に取り組むとした。中心市街地の活性化では、JR千葉駅周辺のにぎわい創出に注力。千葉駅周辺では「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」に基づく駅前業務・商業コアの形成に向け、西銀座地区市街地再開発準備組合などと協議・調整していくとともに、事業化に向けた必要な支援を行うとした。
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――市への思いや印象は。
神谷 職住近接の豊かなライフスタイルが実現可能であるとともに、将来的な発展余地が極めて高い街となっている。人口は増加基調で、転入理由の多くは「政令指定都市でありながら、豊かな緑と水辺の環境が身近に感じられる」とされ、都市公園の多さや落ち着いた環境などが評価されている。
――2期目に当たっての抱負・展望について。
神谷 選挙戦では「地域をまもり、未来を創る」を掲げた。「地域をまもる」では、地域課題の解決に向け、市民の要望を受け止め、防犯対策の強化、路線バスの維持、復便による地域の移動手段の確保、災害時の避難所にもなる学校体育館への冷暖房設備整備などを着実に進めていく。「未来を創る」では、数十年先を見据え、広域道路ネットワークの構築、中心市街地の再生、公共施設の大規模改修など都市機能の更新に尽力する。
――建設関係事業における1期4年の成果は。
神谷 4年間を振り返ると、懸案となっていた広域道路ネットワークの構築において、東関東自動車道(仮称)検見川・真砂スマートインターチェンジと検見川立体事業の事業採択および設計に着手するなど大きく前進した。災害対策では、地下道の安全性の確保に向け、春日地下道と村田町JR内房線地下道へのエアー遮断機の設置を実施。そのほか、稲毛海浜公園や千葉公園のリニューアル、市有施設147か所の改修・修繕、下水道管路包括的民間委託の導入などを進めた。
――公約に掲げた街のにぎわい創出について。
神谷 JR千葉駅周辺では、西銀座地区において2021年9月に西銀座地区市街地再開発準備組合が設立された。市の顔となる重要なエリアであることを踏まえ、「千葉駅周辺の活性化グランドデザイン」に基づき、駅前業務・商業コアの形成に向けて準備組合などと協議・調整していくとともに、事業化に向けた必要な支援を行う。また、JR蘇我駅東口においても、24年8月に地元地権者によるJR蘇我駅東口地区市街地再開発協議会が設立されており、合意形成を進める取り組みに対して支援する。JR稲毛駅東口については、JR稲毛駅東口まちづくり協議会が再開発事業を断念したが、東口駅前広場が狭あい化かつ混雑しているため、課題解消に向けた検討を進めていく。
新市民会館の整備検討/副次的効果などを整理
――新市民会館の整備について。
神谷 22年4月に、東日本旅客鉄道(JR東日本)と「JR東日本千葉支社跡地における市民会館との一体整備」に関する基本協定を締結。当初は、JR東日本が建設する複合ビルの中に市民会館を整備する予定だったが、JR東日本から23年9月に工事費の高騰などにより、複合ビル計画の見直しを行いたいとの申し出と別棟案が提示された。JR東日本千葉支社跡地はJR千葉駅至近の立地であることから、利用者の利便性、駅周辺のにぎわい創出、整備場所周辺に与える副次的効果などを整理し、市有地で建設した場合と比較・検証しながら、検討を急いでいる。
――千葉マリンスタジアムの再整備は。
神谷 基本構想案の取りまとめ作業を進めており、今後は、県や千葉ロッテマリーンズなど関係者との合意形成を進めている。再整備に関しては、スタジアム機能のみに着目するのではなく、幕張新都心を構成してきた「職・住・学・遊」の機能と関連付けて、試合のない日も訪れることができるまちづくりを進める。
――新たな斎場の整備は。
神谷 高齢化の進展に伴い、今後も火葬需要の増大が見込まれる中、新設を含めた斎場整備の検討を進めていくことが重要。斎場の新設となった場合の候補地は、市民の理解と賛同が不可欠であるため、周辺環境への配慮や、施設規模および内容を検討し、整備方針を決めていく。
――市役所周辺を含む千葉みなとエリアの活性化について。
神谷 千葉みなとエリアでは、千葉中央コミュニティセンター減築大規模改修を進めているが、市役所新庁舎の整備は完了し、ハード面の整備においては大きくめどが立った。しかし、市役所に隣接するみなと公園は、開設後50年以上が経過し、施設の老朽化が進んでいるため、公園全体の再整備が必要と考えている。公園の質や利便性向上を図るとともに、民間活力の導入の可能性も検討する。
――地域の建設業への期待は。
神谷 施設の大規模改修や、公園・街路樹の維持管理など快適な生活環境を維持していく上で重要な役割を果たしている。また、発災時には千葉市建設業協会や千葉市造園緑化協同組合の方々など地元の建設業関係者に多大な力添えをいただいている。地元の建設業者の皆さまは、欠かすことのできない重要なパートナーであり、引き続きの支援と協力をお願いしたい。
〈略歴〉
かみや・しゅんいち
1973年8月31日生まれ。愛知県武豊町出身。東京大学経済学部卒業。96年、自治省(現・総務省)入省。在ヨルダン日本国大使館二等書記官、佐賀県佐賀市副市長、総務省自治行政局地域政策課理事官、千葉市経済農政局長などを経て、2015年に熊谷俊人市長(当時)の指名を受けて千葉市副市長に就任。21年3月、千葉市長選挙で初当選。25年3月、千葉市長選挙で再選を果たした。趣味は料理、卓球、サイクリング。座右の銘は「一隅を照らす」。