全国の地方自治体で発注関係事務を担当する職員が減少する中、国土交通省は必要な知識・技術を有する職員の育成や確保、業務執行体制の見直し、発注関係事務を補完・支援する体制整備の必要性を掲げている。
自治体における土木部門の職員数は減少傾向にある。ピーク時の1996年度は19万3873人だったが、2023年度は約28%減の13万8870人。土木部門の職員数が少ない自治体では、発注量が少なくても職員の事務負担が大きく、入札契約適正化の取り組みも遅れている。
こうした状況の中、設計・積算や監督・検査に関する事務を中心として、発注関係事務を外部委託する自治体も多い。都道府県・指定都市では9割近く、市区町村では6割近くが外部委託を実施。委託する相手は公益法人や設計事務所などとなっている。
同省の調査では、都道府県・指定都市67団体のうち57団体が発注体制について人事・組織体制、委託、技術力などの面で課題を抱えている。課題の内容としては▽採用予定定員割れ▽中堅職員が不足▽委託先の受託量制約で十分な規模の補完ができない▽外部委託で職員が育ちにくい▽判断を伴う業務の時間を確保できない―など。
一方で課題に対する取り組みでは、人材確保の要件緩和・拡大、委託におけるシステム導入による効率化、講習会開催などによる精度向上、若手職員の技術力向上への育成などが見られる。
◎市町村連携で効果も
同様の課題は市区町村にもあり、特に人口の少ない市町村では土木・建築の技師数が0人という自治体も多い。24年度調査では40市262町131村で技師0人が確認されている。
同省による市区町村へのヒアリングでは、技術系職員の採用について「民間と比較して給与が低いため職員確保が困難」「応募がない」などの意見があった。設計積算業務の体制については「設計を外注、積算は職員」「役職定年者・再任職員を活用」「補助金対象工事のみ設計積算を外注」などの声がある。発注担当職員不足による支障としては▽コンサル成果の精度が悪く再発注▽設計が現場と整合しない▽工事経験のない職員が監督・検査▽図面チェックが網羅的にできず変更契約が増加―などが示された。
市区町村では電子入札システムなど各種システムの共同活用が多くあるが、発注そのものの共同化や広域連携は少数。先行事例としては、長野県下伊那郡の13町村で構成する下伊那郡土木技術センター組合がある。同組合では土木工事の測量・設計・積算・工事監督・検査を実施(特別地方公共団体として発注事務も可能)。同省ではこうした共同化・連携は、人員不足の自治体において効果があると見ている。