2020/12/24
運に頼らない義教と入札(埼玉・YM)

運に頼らない義教と入札
▼2021年は室町幕府の第6代将軍・足利義教が没してから、580年が経過する年に当たる。義教は腐敗した幕府の再興を志し、さまざまな改革を断行した立派な人物だ。一方で、くじ引きで将軍となっため「くじ引き将軍」と揶揄(やゆ)される。既得権益者から「万人恐怖」「悪御所」と評され、暗殺されたことから、苛烈(かれつ)を極めた改革だったことは想像に難く(かたく)ない
▼くじ引きは現代にも存在している。建設業界であれば「一般競争入札のくじ引き」だ。億を超える高額案件を受注するかどうかは、会社経営に大きな影響を与える。会社の帰趨(きすう)を運に左右されてしまう状況に「納得できない」と訴える事業者は多い
▼くじ引きは、最低制限価格で落札されやすい点にも問題がある。国土交通省は、最低制限価格がくじ引きやダンピング受注を招くとして、事前公表を取りやめるよう関係機関に要請している。建設業者の真の技術力・経営力による競争を損ねる弊害が生じ得るからだ
▼地方行政は「地方自治法に基づく。問題ない」と主張。「積算基準などを公表するほど、企業間の金額は似てくる」と弁明する。しかし総合評価方式にも、くじが多発する現状は憂慮すべきだろう
▼法には現状に合わない法もある。現法を盾に強弁する行政は「お役所仕事」そのもの。当たりくじ「義教」を引いても、国の命運をくじに託した室町幕府の判断が正しいとは言えない。建設業も社員とその家族の生活が、くじで左右されてはならない。地元が儲かるような最低制限価格と、運ではなく実力で落札可能な入札制度を断行できる「義教」を期待したい。(埼玉・YM)