インタビュー

2024/04/12

群馬県県土整備部 県県土整備部 宮前勝美部長就任インタビュー

4月から新たな県県土整備部長へ就任した宮前勝美氏は、群馬建設新聞の単独インタビューに応じた。24年度の目標として「確かな技術と 新たな発想で 群馬の未来をつくる」を掲げ、「災害レジリエンス№1の実現【気象災害・大規模地震等への対応】」など3つ重点施策を打ち出した。元日に発生した能登半島地震などを受け、「地域の守り手として欠かせない建設産業に対し担い手の確保や働き方改革などの支援を通じて、連携を強化していきたい」と話す。災害対応や働き方改革など課題が山積する中、今後の舵取りについて宮前部長へ聞いた。

―就任されて、抱負や心境などをお聞かせください

宮前 24年度の県土整備部の目標は「確かな技術と 新たな発想で 群馬の未来をつくる」を掲げた。

近年、気候変動の影響等により気象災害が頻発化・激甚化している。また、今年1月の能登半島地震では石川県を中心に甚大な被害が発生したところだが、首都直下地震の発生も懸念される中、このような大規模な自然災害への対応は喫緊の課題となっている。また、人口減少と高齢化が進展する状況下、限られた人材と予算で、高度成長期以降に整備した大量の社会資本ストックの老朽化に対応するためには、DXの活用等によるインフラメンテナンスの高度化・効率化が不可欠である。このような社会資本整備を取り巻く諸課題とともに、多様化する県民ニーズや地域固有の課題にもしっかりと対応していくためには、群馬県の社会資本の整備と維持管理を担う県土整備部として、確かな技術力を持って、エビデンスに基づき、業務を行う必要があると考えている。また、コロナ禍で加速したDXや、グリーンイノベーションなど、新たな時代の潮流を踏まえつつ、群馬県庁から前橋駅までを繋ぐクリエイティブシティの推進など、市町村とともに「未来に繋がる新たなまちづくり」を進めていくためには、常に柔軟で新しい発想を持つことが重要と考えている。

そのため、24年度の県土整備部の重点施策として、「災害レジリエンス№1の実現【気象災害・大規模地震等への対応】」「インフラメンテナンスの高度化・効率化」「未来に繋がるまちづくりの支援」の3つを掲げたところである。県土整備部としては、国や市町村、建設産業界の皆様ともしっかりと連携を図りながら、「確かな技術」と「新たな発想」を持って、すべての県民が、誰一人取り残されることなく、幸福を実感できる「群馬の未来」を下支えする、インフラの整備と維持管理に努めていく。


―元日に発生した能登半島地震において、道路啓開や災害対応の面から建設産業の重要性が再認識されました。その点について考えをお聞かせください

宮前 元日に発生した能登半島地震では、家屋の倒壊等により多くの方が亡くなられた。特に半島の先端部で平地が少ない地域においては、幹線道路の寸断などにより、多数の孤立集落が発生し、迅速な救命救助、支援物資輸送が困難な状況となるという課題も浮き彫りになった。

地元の建設業者は発生直後から昼夜を問わず、緊急車両などが通行できるよう瓦礫処理を行い、救援ルートを開ける道路啓開や応急復旧作業に尽力し、孤立の解消や早期復旧に大きく貢献したと聞いている。

本県の山間部においても、能登半島地震と同様な地震がおきた際には、道路寸断による孤立集落の発生も懸念されるところであり、道路の防災機能の強化の重要性とともに、災害時の応急対策等にあたる建設関係団体との協力体制の重要性を再認識した。

3月に群馬県建設業協会の青柳剛会長が発表した「建設業の災害対応組織力」に関する調査結果によると、人口減少や物価高騰等が進んだ状況にあっても12年前と同レベルの災害対応のための人員や資機材を確保していただくなど、積極的に災害に備えていただいていることがわかった。また、建設産業は道路除雪や緊急の倒木・落石等の対応など、24時間体制で県内インフラに関する緊急対応を担っていただいている。県としても県民の安全・安心や経済活動の持続性を確保するため、地域の守り手として欠かせない建設産業に対し担い手の確保や働き方改革などの支援を通じて、連携を強化していきたい。


―県土整備プランの見直しに着手している状況かと思いますが

宮前 「ぐんま・県土整備プラン2020」の策定から概ね4年が経過し、これまで、社会資本の整備と維持管理を着実に推進してきた結果、防災・減災対策をはじめとした各政策・施策や事業は、概ね順調に進捗することができている。一方、県土整備プランは、社会情勢の変化や県民ニーズの変化等に対応するため、概ね5年ごとに「見直し」を行うこととしており、25年度からの次期10年間計画として見直しに着手したところである。

見直しにあたっては、時代の潮流や社会資本整備を取り巻く変化の見通し、群馬県の政策の方向性などを考慮し、「現行県土整備プランを継承しつつ、『連携・共創による群馬ならではの未来に繋がる社会資本整備』を推進」することとした。

また、「20年後に目指す将来像」として①災害に強く、安定した経済活動が可能な群馬県②誰もが安全・快適に移動でき、人と人、人と地域のつながりを生み出す群馬県③地域に愛着や誇りを持ち、良好な社会環境のもとで持続的に暮らせる群馬県―の3つを掲げるとともに、「将来像の実現に向けた政策」に①災害レジリエンス№1の実現②持続可能で効率的なメンテナンス③未来に繋がる魅力的なまちづくり④美しく良好な環境の保全―を政策として位置付けることとしたところである。本年度は、「ぐんま・県土整備プラン2025(仮称)」の策定作業が本格化する。策定にあたっては、様々な方々と丁寧な議論を重ねながら、今年度末の策定・公表を目指し、検討を進めていく。


―重点施策として掲げている「災害レジリエンス№1の実現」に向けた今年度の取り組みについて教えてください

宮前 「ぐんま・県土整備プラン2020」の最重点政策である「災害レジリエンス№1の実現」に向け、24年度も引き続きハードとソフトが一体となった防災・減災対策を重点的に推進するとともに、能登半島地震の状況も踏まえ、必要な対策を検討し、できるものから実施していく。

今年度は、重点水害アクション(5か年緊急レジリエンス戦略)に位置付けた水害対策事業の完了目標年度である。氾濫すると甚大な被害が想定される利根川、八瀬川などの整備について、本年度末までの完了を目指して引き続き重点的に整備を進める。また、住民が「自ら逃げる」という主体的行動がとれるよう、マイ・タイムラインの作成支援や河川の水位情報やライブカメラの画像などの防災情報の発信など、ソフト対策も継続して行う。さらに全国各地で、毎年のように想定を上回る規模での気象災害が発生していることを踏まえると、施設の能力を超過する洪水が発生することを前提に、流域のあらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」を推進する必要があると考えている。昨年12月には、令和元年東日本台風において浸水被害が大きかった東毛地域にある休泊川流域を「特定都市河川」に指定したところであり、今年度は流域水害対策計画の策定を進める。

土砂災害リスクを軽減する方策として、要配慮者利用施設や避難所を守るための対策など、防災インフラの整備を計画的に推進する。また、近年、全国各地で被害が発生している土砂・洪水氾濫対策に関する計画の策定や、能登半島地震による重要交通網の寸断防止などを踏まえ、「土砂災害対策推進計画」の見直しを進める。

「逃げ遅れゼロ」に向けた避難行動をさらに促進するため、土砂災害警戒区域等の見直しや、住民主体の防災マップの作成支援、SNSを活用した情報発信などに加え、新たな取り組みとして、小中学校の教員による防災教育教材の作成を支援し、地域の特性を踏まえた実効的な避難に資する取り組みを推進していく。

能登半島地震では落石や法面崩壊、電柱の倒壊等により道路が寸断し、多くの孤立集落が発生するとともに、救命・救助や被災地への支援物資輸送が滞る要因となった。改めて、道路ネットワークの重要性を認識したところである。本県においても、令和元年東日本台風で流出した鳴岩橋や橋台を支持する地盤の崩落により全面通行止めを余儀なくされた嬬恋橋など、災害に脆弱な道路状況が顕在化しており、引き続き「災害時にも機能する強靱な道路ネットワーク」の構築に向けて、「上信自動車道」や「西毛広域幹線道路」「渡良瀬幹線道路」などの幹線道路の整備を進めていく。また、緊急輸送道路の寸断を防ぐため落石対策や無電柱化などについても、引き続きしっかりと推進するとともに、能登半島地震を踏まえ、孤立集落発生防止に向けた道路の防災機能強化など、必要な対策を進める予定である。

今回の地震では、多数の木造住宅が倒壊するなど甚大な被害が生じた。地震により被災した建築物による二次災害を防止するため、本県では1月半ばから、被災建築物応急危険度判定士を石川県輪島市と鳳珠郡穴水町に派遣した。

県内で地震被害が生じた場合にも迅速に対応ができるように、判定士の養成や判定実施本部シナリオ演習を実施するなど引き続き、体制整備を進めるとともに、群馬県耐震改修促進計画に基づき市町村と連携して、緊急輸送道路の沿道建築物などの耐震化を進める。


―上信自動車道や西毛広域幹線道路、利根川新橋について状況をお聞かせください

宮前 上信自動車道については、3月20日に吾妻西バイパス約7㎞が開通したことにより、群馬県内約63㎞のうち5割弱の29・6㎞が供用済みとなった。今年度は、吾妻西バイパスに接続する「吾妻東バイパス」「吾妻東バイパス2期」や「長野原嬬恋バイパス」の計3区間で29年度の完成を目指し、計画的かつ着実な事業推進を図る。

また、国直轄事業では「渋川西バイパス」、上信自動車道の起点となる「国道17号中村交差点立体化」の工事が進められており、早期完成が図られるよう国に働きかけてまいりたい。残りの長野県区間も含めた調査区間については、国土交通省、長野県と連携し、早期の整備区間指定、事業化に向けて取り組んでいく。

西毛広域幹線道路については、3月27日に高崎西工区約1・6㎞区間が開通したことにより、全長27・8㎞のうち5割を超える14・5㎞が供用済みとなった。地元からは、周辺道路の渋滞が緩和し、地域間の往来がスムーズになったと聞いている。今年度も引き続き29年度の全線開通を目指し、計画的かつ着実な事業推進を図っていく。

千代田町と埼玉県熊谷市を結ぶ、利根川新橋(赤岩)については、昨年の5月に知事が建設着手を決断したこと受け、9月補正予算により、新橋の建設位置を決めるための測量調査に着手した。現地では、3月に地元説明会を開催し、現在、ドローンによる測量作業を進めている。今年度は地域の声を聞きながら、新橋を含む道路のルートを具体化するための設計に着手する予定である。


―働き方改革を推し進めるうえでも重要なポイントとなる、県土整備分野のDX推進に向けての取り組みについて教えてください

宮前 21年度に策定した県土整備プランDXアクションに基づき、県土整備分野のDXを推進しており、昨年度は、「ぐんま大雨時デジタル避難訓練」の取り組みが、日本DX大賞で優秀賞を受賞するなど、県土整備部の取り組みが評価された。この4月から「建設業における時間外労働上限規制」が適用され、県としても、建設産業の働き方改革や生産性向上に繋がる取り組みを積極的に推進していきたいと考えており、引き続き、「GPSを活用した道路除雪」の試行やICT活用工事などの取り組みを推進する。また、昨年度から「デジタル技術を活用した橋梁の床版調査」や、「カメラ画像のAI解析を活用した道路状況の把握」などのインフラメンテナンスの取り組みについても積極的に推進しており、県内企業をより生産性や効率性の高い魅力的な産業とするため、「インフラメンテナンスの産業化」を進めている。

災害時における一人一人の避難行動計画「マイ・タイムライン」について、デジタル技術を活用することで、誰もがより作成しやすくする「マイ・タイムラインのWEB化」を行う予定であり、県民の安全・安心を確保する取り組みについてもDXを推進するとともに、市町村や建設産業界とも連携した推進体制の構築や人材育成にも取り組む。


―重点事項の一つに群馬県庁から前橋駅までを区域とするクリエイティブシティ構想があるかと思いますが

宮前 山本一太知事が2期目の就任記者会見において、県庁周辺を歩行者と公共交通機関を優先した道路空間を目指していくと発言しているとおり、県の最重要な取り組みの一つに位置付けられている。

現在、前橋市内では、創業300年の老舗旅館のリノベーションやギャラリー・レストラン・居住空間が一体となったクリエイティブの拠点の建設、中心市街地を流れる小河川の改修など民間主導の取り組みが後押しとなって徐々に元気を回復しつつある。中心市街地活性化を図るため、これらの取り組みをさらに加速させ、官民共同で思い切った施策を講じる必要がある。

前橋市街地のメインストリートである県庁から前橋駅は、長年の懸案となっている変則的な五差路交差点や広幅員の歩道が配置されているものの人通りが少なく賑わいの少ない空間となっている。

また、群馬県と前橋市の連携により、新たなモビリティサービスである「GunMaaS」や前橋駅から県庁までの自動運転レベル4に向けた取り組みが進められており、交通を取り巻く環境も変貌を遂げつつある。

まちづくりのデザインコンセプトを持たずに、これらの課題に個別に対応することは没個性的で統一性のない街並みとなってしまうなどの恐れがある。

前橋市の中心市街地に再び賑わいを取り戻すため、従来の道路機能を向上させるだけでなく、住む人・訪れる人の誰もが将来のまちの姿に夢や希望を持ち続けられるような道路空間や、その沿道と街並みを一体とした、まちづくりの柱となる構想デザインを策定することとした。世界中から広く優れたデザインを募集できる国際デザインコンペ方式を採用し、地域独自の価値を生み出す、世界に誇れるまちづくりのデザイン提案を求めたいと考えている。構想デザイン策定後は、地域の住民・関係者の皆様とともに議論を重ねながら、県都前橋のまちづくりにふさわしい空間となるよう取り組んでいく。


―注目事業であり、PFI方式で進めている敷島公園新水泳場整備についてお聞かせください

宮前 敷島公園新水泳場の整備では、県有施設初となるPFI方式を採用し、設計、建設、15年間の運営維持管理を一体で行うことで民間のノウハウを活用し、財政負担の軽減や、サービス水準の向上を図っていく。50年先の敷島エリアの「あるべき姿」を追求して策定した「敷島エリアグランドデザイン」を反映するほか、県産木材を積極的に活用した特徴ある施設とする予定である。

昨年度12月20日に入札公告し、現在は、事業者決定に向けて入札手続きを進めている。6月末に事業者を選定のうえ、第3回前期定例県議会の議決を経て本契約を締結し、いよいよ整備着手となる。29年開催予定の「湯けむり国スポ・全スポぐんま」に向け、28年11月の供用を目指して着実に整備を進める。


―4月より建設業についても時間外労働の上限規制が適用されますが、週休二日対応などの働き方改革や生産性向上、建設産業の担い手の確保・育成に関する取り組みについてお聞かせください

宮前 県土整備部としても、担い手の確保・育成に向けて、週休2日制の定着などの「建設産業の働き方改革」とともに、ICT技術の活用などの「建設産業における生産性向上」の取り組みを推進している。

まず、週休2日制の取り組みについては、17年度から試行を進めており、国の歩掛改正を踏まえ、本県としても適宜、労務費や間接費の率補正を行ってきたところであるが、24年4月から建設業にも時間外労働上限規制が適用されることを踏まえ「週休2日制現場実施要領」の一部を改定することとした。改正のポイントは、降雨降雪などの自然条件的な事象による予定外の休工日を現場閉所日としてカウントする、いわゆる『雨振替え』を認める「4週8休現場閉所」の新設である。「週休2日制現場」の発注にあたっては、当初設計金額が2千万円以上の工事は原則「発注者指定型」とするなど、労働環境の改善に向けた環境整備に取り組む。

ICT活用工事については16年度から土工を皮切りに試行を開始し、以降、順次工種拡大を図ってきた。さらに、19年度からは工事規模に見合った小規模工事でも活用できるよう、県独自の試行要領を策定し導入拡大に取り組んできた。今年度からは、国に準じて適用工種を拡大するほか、一定規模以上の工事を「発注者指定型」とするなど、生産性向上に向けICT技術の積極的な活用促進に取り組む。これまでのイメージを変え、若い人に選ばれる新3K(給与・休暇・希望)に「かっこいい」が加わった建設業を目指し、働く人が希望を持てるよう業界と連携して取り組んでいきたい。


―最後に建設産業界にメッセージを

宮前 建設産業は、社会資本の整備と維持管理の担い手のみならず、災害時における地域の安全・安心の守り手であるとともに、地域の経済や雇用を支える重要な役割を担っている。また、今年も年明け早々から、鳥インフルエンザの防疫作業にも従事していただくなど、県民生活に直結する様々な危機にも積極的に協力いただいており、県民生活の維持や、地域の安全・安心の確保に向けて、欠くことのできない重要な産業と強く実感している。

県としては、このような重要な役割を担っている建設産業を持続可能で魅力的な産業にしていくため、行政と関係機関が一丸となって、建設産業が直面する課題解決に向け、取り組んでいくことが重要であると考えている。

建設産業は、社会資本を整備することで、県民に安全・安心を提供しながら時代を切り拓いてきた基幹産業であり、今後も「新群馬の創造」に向け、建設産業界の皆様と共に歩んでいきたいと考えている

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら