国土交通省 【国土交通省就任インタビュー】水管理・国土保全局長 井上智夫氏「事前防災対策に力入れる」

国土交通省水管理・国土保全局の井上智夫局長は「防災対策が最も重要な任務だと思っている」との考えを示した上で「災害が起きた時の危機管理対応が一番重要ではあるが、事前防災対策、災害が発生する前にできるだけ被害を軽減する対策に力を入れたい」と抱負を語る。また毎年のように大きな水害が起きる中で「やはり気候変動の影響は無視できない。治水対策にも新しい考え方、秩序が必要で、この機会が重要なターニングポイントだと思う。7月に社会資本整備審議会から答申された『流域治水』への転換という考え方の実現が、まずは当面の大きな課題」と話す。
「流域治水」に関しては「答申を受けてハード対策の加速はもちろん、ソフト対策の幅を広げることになった。例えば利水ダムの治水利用として、これまで洪水調節に使われてこなかった発電ダム、農業用水ダムについて他省庁を含めて治水の面でも協力していただく。避難対策としてゼロメートル地帯の高台まちづくりを都市局、住宅局、民間等と連携して進めるなど、幅を広げて取り組んでいきたい」と意欲を見せる。
災害復旧に当たっては、国交省のテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の体制強化に加え、地域建設業・建設関連業との連携も進める。「災害が起きてしまったら、できるだけ短時間で復旧する。集落とのアクセス道路が崩れ、孤立した場合に、どれだけ短時間で解決するかが地域の再生にとって非常に重要。一方で市町村の災害復旧の体制が年々弱くなってきている。中でも公共事業や災害復旧を担当する技術職員が大幅に減り、ゼロ人の町村も出てきた」と課題を指摘。近年、大きな役割を果たすテックフォースに関して「測量、地質調査、建設コンサルタント、地域建設業など、いろいろな方々に直接現場で対応していただくので、テックフォースと地域建設業が、もっと密接に活動できるようにすることが災害復旧の迅速化につながる。ある程度経験値のある人たちがしっかりと携わる必要がある」とし「地元の防災の担い手である地域建設業、建設関連業、国交省のテックフォースの3者が一体的に頑張っていく体制を作らないといけない」と強調、当面力を入れるとした。
【略歴】いのうえ・ともお
1989年京大大学院工学研究科修了、建設省採用。国交省水管理・国土保全局砂防部保全課海岸室長、近畿地方整備局河川部長、同局企画部長、水管理・国土保全局治水課長、近畿地方整備局長を経て本年8月1日付で現職。56歳。大阪府出身。
【写真=「流域治水の実現が当面の課題」と話す井上局長】