埼玉県・山本悟司副知事インタビュー

着実に5か年計画実現へ/課題向き合いながら推進
7月8日付で埼玉県副知事に就任した山本悟司氏が本紙の単独インタビューに応じた。「地域的に魅力の多いところもある一方で、災害の発生も増えており、充実してはいるものの交通ネットワークに課題も抱えている。課題にきちんと向き合いながら、埼玉県民の安全・安心の確保や埼玉県5か年計画の実現に向けて、着実に取り組んでいきたい」との考えを明らかにした。
埼玉県のイメージとして「県南部は都市圏だが、西部や北部のように自然豊かな地域もある。歴史的にも価値のあるものがたくさんあり、多種多様な魅力がある。もともと埼玉は災害が少ない地域と言われていたが、近年は令和元年東日本台風はじめ、集中豪雨や突風などさまざまな被害が出て災害が増えている。しっかりと対応していく必要がある」と捉える。
県内の道路網に関して「圏央道などができて、物流をはじめさまざまな産業が立地してきている。県内では多くの道路整備計画があるが、新たな立地も進んできているので、次の計画を見据えながら、さらなるネットワーク充実の期待に応えていきたい。国や高速道路会社に進めてもらっている新大宮上尾道路、東埼玉道路、事業化したものを着実に進めていくことが大事で、具体化されていない事業も少しずつ具体化させていく必要がある。アクセス道路など県事業も歩調を合わせながら、ネットワーク整備を充実させていきたい」との考えを明かした。
「国には国土強靱化の予算を継続して確保していただきたい」との見解を示した。
国土交通省では政策立案の経験もあり、地方の整備局や出先事務所でも勤務経験がある。「これまで道路事業に多く携わってきたが、国での経験や、国と県とのパイプ役という面でも、現場での経験を生かしていきたい」構えだ。
地域建設業への思いに関しては「災害が発生すると、真っ先に駆け付けていただいている。インフラの整備や管理には、建設業の皆さまのお力がないと進まない。一方で、若年層の担い手が不足している状況にある。若年層に魅力を感じてもらえるためにも、DXはじめ、働き方改革を進め、すぐにできないこともあろうが、少しずつ魅力ある建設業にしていかなければならない。埼玉県ではDXを一生懸命進めているが、建設業にも関係のあること。DX推進は事業者のリーダーシップも重要だが、発注者側もDXを活用するようなメリットを説明しつつ、DXの現場を提供する必要もある。DXを活用することで、お互いに良い面があるということをPRしていく必要がある」と話した。
思い出の仕事として、出先の事務所での出来事を挙げる。「これまで東京外環や第二京阪道路など、さまざまな大規模事業の仕事もしてきたが、都市部では始めのうちは事業の理解を得られないことも多い。そのため、事業効果や環境面に影響が出ないことを説明に出向く。やり取りをしながら、少しずつ事業を進めていくことになるが、1人では進められるわけではなく、何代にわたって事業が完成していく」と語った。
特に「京都府と大阪府を結ぶ第二京阪道路(有料道路)の浪速国道工事事務所(当時)の調査第一課長として勤務した際、事業調整を行った。京都側は事業が進んでいたが、大阪側はなかなか進んでいなかった。地元説明に何度も通い、少しずつ現場工事に着手できることになった。現在は完成しており、地元の人たちに喜んでもらえ、喜びを実感した」と振り返る。
【略歴】
やまもと・さとし 1989年東京理科大学理工学部卒、同年旧建設省(国土交通省)入省。福岡国道事務所長、京都府建設交通部長、関東地方整備局道路部長、西日本高速道路株式会社執行役員などを歴任。写真撮影を楽しんでおり「埼玉の名所をいろいろと巡りたい」と考えている。長野県出身、55歳。