【国土交通省就任インタビュー】住宅局長 塩見英之氏「国民の住生活向上を支援」

国土交通省住宅局の塩見英之局長は「住宅は国民にとって最も身近な存在。きめ細かなニーズにできるだけ寄り添って、政策的に応えていくというのが一番の使命だ。また民間事業者はパートナーであり、関係業界と歩調を合わせて国民の住生活向上のために取り組みたい」と抱負を語る。
建築物省エネ法が改正され、現在は全面施行に向けた準備が進んでいる。「今回の法律は改正内容に応じて関係者も異なっている。必要な情報を伝え、施行に当たって混乱がないように最大限努めていく」と強調。特に省エネ基準の義務化に関しては「2025年までに施行することになるが、関係する国民の数が圧倒的に増える。従来は大規模・中規模の非住宅だけが義務付けの対象だったが、小規模な非住宅と住宅全体を義務付けの対象に加えると、30倍以上の方々に省エネ基準を満たした建築をしていただかなければならなくなる。できるだけ早く基準類を作って、分かりやすい周知をする。業界団体の中でも混乱が生じないような周知が必要。全員の総力戦で、カーボンニュートラルの実現に向けた混乱のない施行を目指したい」との姿勢を見せる。
住宅・建築物への木材利活用に関しては「木材を使えば新しい植林につながり、より多くのCO2を吸収してくれる。川上側で製材をされる方、林業を営まれる方の仕事の安定にもつながる。そして山を守り、国土を保全することも可能になってくる。大きな意義のある仕事だと思って木材利用の拡大を進めている」と話す。具体的には①規制や基準の合理化②中大規模の木造建築を増やしていくための先導的な取り組み支援③戸建て木造住宅の供給体制維持―の3本柱で取り組むと説明。「安全性が確認できる範囲で規制の合理化を検討していく。規制が合理化されると設計の自由度が上がることになるので、新しいビジネスが生まれて来る可能性がある。また市場を大きくしていくためには先導的に取り組んでいる方々を支援して、それが業界全体に広まっていくことが大事だと思う。戸建ての木造住宅については、今後も必要な供給体制が維持・継続できるように政策で支援し、より環境性能・省エネ性能の高い住宅が円滑に供給されるための体制づくりを応援したい」との考えを示した。
【略歴】しおみ・ひでゆき
1990年早稲田大学政治経済学部卒、建設省採用。国交省土地・建設産業局建設業課入札制度企画指導室長、建設市場整備課労働資材対策室長、内閣官房内閣参事官、国交省土地・建設産業局総務課長、水管理・国土保全局次長、大臣官房審議官(住宅局担当)を経て本年6月28日付で現職。56歳。兵庫県出身。