草加市・山川百合子市長インタビュー

2022年10月の市長選で当選し、草加市初の女性市長となった山川百合子市長が埼玉建設新聞の単独インタビューに応じた。新庁舎整備など主要建設事業が完成を控える中、鉄道4駅周辺再整備、リノベーションまちづくり事業による地域活性化など新たな都市整備を行う。市政全体の方針としては「誰もが幸せなまち」実現を目指し、子育て環境充実などの五大戦略を進める。建設業者に対しては、地元建設業へ活気が生まれることの重要性を語るとともに、安全で快適な公共空間の整備を地元建設業界と協力して進めていく考えを伝えた。
――市の特徴をどのように捉える
山川 草加市は東京に近く、地価も相対的に安い。商店街や商業施設も充実し、住みやすい街だと考えている。アクセス性も良好で、市の中心を南北に縦断する形で鉄道が4駅通っているため、電車を使えば市の南端の駅から北端の駅まで10分以内に移動できる。市役所などの主要施設も駅と近い場所に立地し、生活利便性に優れている。
――新庁舎の完成を目前に控え、新たな動きに向けた検討を進める
山川 主要建設事業の観点でいえば、今は大きな事業がひと段落した段階。4日に松原児童青少年交流センターmiraton(ミラトン)がオープンしたほか、5月には新庁舎の第1期機能移転を控えている。あおば学園の建て替えも23年度内に終える。来年度以降の動きは「公共施設等総合管理計画」の改訂に応じて流れを決める。
同計画が上位計画となり、公共施設の大規模改修や建て替えはこの計画に基づき実施していく。パブリックコメントを通じて市民から意見を集め、3月には計画をまとめる。その後は計画に基づき下位の個別施設計画と整合性を図っていく見通しだ。
――若い世代に選ばれる街を目指す
山川 若い世代が街に出てきてくれるのが理想だ。そういう点で獨協大学(学園町1-1)は市の大きな財産。毎年1万人近い学生が在籍し、獨協大学前駅周辺を利用することになる。また、文教大学東京あだちキャンパス(東京都足立区花畑5-6-1)の学生が谷塚駅を利用することが多い。常に一定以上の若い世代が街に訪れるというのは市にとって大きな利点だ。
獨協大学では学生ボランティアサークルとの接点があり、文教大学とは谷塚駅東口商店街とスタンプラリーのコラボレーションを行うなど、これまでも若い世代とのつながりはあった。だがそれはまだ点と点の段階。今後は教育環境の充実へと学生たちに参画してもらい、より密接につながるようなビジョンを持っている。
――駅を中心にしたまちづくりが進む
山川 まちづくりに関しては、自然と各駅を中心とする方向になる。各駅周辺の整備も実施しており、これから工事を進めていくのは新田駅東口・西口の再整備。26年度に東口、28年度には西口の整備が完了する予定だ。事業を終えれば、地元にとっては数十年にわたる悲願が達成される形になる。
谷塚駅では、西口側の市街地再整備を長期的に検討している。13年度に権利者協議会が設置されて以来、協働によるまちづくりの検討を積み重ねている状態。22年度は基本計画策定に向けて公募型プロポーザルで事業者を選定し、西口のロータリーや公園、道路などの整備方針の具体化を進めている。
そのほか、草加駅東口では駅前ロータリーの整備、獨協大学前<草加松原>駅西側に関してはUR都市機構の草加松原団地建て替え事業が過年度に完了し、利便性が大きく向上している。
――リノベーションまちづくりで地域活性化を狙う
山川 「そうかリノベーションまちづくり事業」として、遊休不動産などを活用した取り組みを続けている。事業者が「こういう事業を展開したい」と物件の所有者に提案し、合意が形成されれば事業が始まる。市側は事業者と物件の所有者をつなぐ役割を担っている。これまでに「シェアアトリエつなぐば」など、多くの飲食店やコワーキングスペース、シェアキッチンなどがこの事業で誕生した。
今までは草加駅東口を中心に事業を展開していたが、現在は谷塚駅周辺にも範囲を広げている。事業者は地域に詳しい人だけでなく、この事業のために全国から足を運ぶ人もいる。事業を通じて多くの人がまちを訪れ「このまちならこういう事業ができる」と考えることで、市のことを知ってもらう機会にもなる。
――地元の要望には丁寧に対応していく
山川 県議会議員時代には、道路への自転車専用道整備に関して県へ要望したことがある。自分自身が自転車をよく使うため実感することだが、自転車で道路の端を移動すると段差などが多く非常に危ない。自身の体験と合わせて、道路の段差解消や自転車用道路整備を要望し、その提案が形になったと考えている。
カーブミラーや横断歩道、道路の段差など、地域住民からの交通安全対策に関する要望は非常に多い。それぞれが重要な案件で、例えばカーブミラー一つをとっても、鏡の向きが少し異なるだけで事故の発生確率が大きく変わってくる。小さな要望も含めて、一つずつ細やかに対応する。
市内のインフラ整備に関しても同様だ。基本的には長寿命化となるが、その重要性は確かに認識している。ハード面の整備も含めて、今後丁寧に進めていく。
――市政全体の方針は
山川 「草加市みんなでまちづくり自治基本条例」(04年制定)を基に、子育て・教育への支援などを始めとする五大戦略を打ち立てた。条例で定めた理念となる「市民・議会・行政のパートナーシップによる、誰もが幸せなまちづくりの実現」に向け、着実に戦略を進めていく。
中でも子育て・子育ち支援を大きな軸として捉える。子育て世代に選ばれる街となれば消費が増え、街全体の利益につながる。若い世代を通じて街に活気が生まれれば、結果として全ての世代を支える力になっていく。若い世代への支援と同時に、高年者も安心して暮らせる街を目指す。
――建設業者へのメッセージを
山川 地元の方々に地域のまちづくりを担ってもらうことは非常に大切なこと。安全で快適な公共空間をつくるため、ぜひご協力いただきたい。公共事業を進める中で、地元建設業者の方たちに活気が生まれることは非常に重要だと思っている。
道路や河川を含めた安心や快適は、たしかな施工のもとに作られる。災害の発生時など有事の際には、建設業者の方たちの協力をいただく必要がある。高い技術力をもって、地元建設業の方々と一緒にまちづくりを進めていきたい。
【略歴】
やまかわ・ゆりこ 1992年恵泉女学園大学英米文化学科卒業。96年に英国イーストアングリア大学で開発学、英国ハル大学では東南アジア研究を学ぶ。民間企業を経て、97年に日本インドネシアNGOネットワーク、97~2003年にはNGOピースウィンズ・ジャパンへ所属。03年に県議会議員に初当選し、4期(15年)を務める。17年から衆議院議員(1期)を経て、22年10月から現職。