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国土交通事務次官小野邦久氏に聞く

2001/02/27 本社配信

 初代の国土交通事務次官に就任した小野邦久氏はこのほど、国土交通省建設専門紙記者会との新任会見に臨み、「21世紀は少子高齢化、環境問題、ITツールを経済社会にうまく利用していきたい。またいろいろな課題に果敢に立ち向かうには総合的な戦略が大事なので、総合のメリットを生かしていきたい」と抱負を語った。さらに、「日本経済は、外に依存するのではなく、内需を振興する中で経済が回っていくシステムが非常に大切であり、住宅はその尖兵に足りうる重要な部分である」と住宅政策を強調した。

--省庁再編を踏まえ、事務次官としての基本方針を。

事務次官 今回の中央省庁の改革は50年ぶりの大きな改革であり、過去50年間にいくつかの行政改革や新省庁の誕生を見たが、今回ほど劇的な大きな改革はなかったと思う。その結果、4省庁が再編されて国土交通省になり、大きな守備範囲を持つ組織になった。大きいことは力でもあるが、効率的なスピーディーな行政を行うために、我々幹部は大きな組織をきちっと運営していくこと大事だ。国民に「今回、行政改革をやってよかった」といわれるような、国土交通省として総合的な国民のニーズを的確に掴んだハード、ソフトを含めた行政の展開を行うことに尽きると思う。

--タテ割りをなくし、統合のメリットをどう生かしていくのか。

事務次官 局のバランスや省のバランスに欠けるとの批判もあるが、これから総合的行政を展開する。21世紀の政策課題をもった世紀を生きていくためには、1つの局だけでやれること、また1つの局で完結することは少ないと思う。省の中で完結する、省の中で必要な調整を行うことができることが、今日の行政改革の目玉でもある。これを行政の基本に据えて行政を行っていくことが、タテ割行政を少なくすることだと思う。

 逆に、メリットは、国土交通省は1官房13局という大きな組織になったので、事業展開するにしても、連携事業やそれぞれの分野の持ち味を生かした総合的な施策を立てるなど多くのメリットがあると思う。21世紀は少子高齢化、環境問題、ITツールを経済社会に、どううまく利用していくのか、いろいろな課題に果敢に立ち向かうには総合的な戦略が大事なので、総合のメリットを生かしていきたい。その中で個別の施策をきちっと全体の中に位置付けていきたい。

--事務のスピードアップの取組みは

事務次官 省の最高意思決定機関となる最高幹部会議を設置し、大臣のリーダーシップのもとに、迅速な決定を図ったり、個別の決済や局間にまたがる政策決定の場でいろんな工夫をすることで、行政の運営をスピーデイにやり、国民に迷惑をかけない方法を取りえると思う。

--担当外分野への意気込みは

事務次官 省としての意思決定をきちっと議論した上で方向付けしていくので(担当外分野は)困る問題はない。個人が仕事する場合、政策の立案などについては個人のアイデアを引き出すが、決定的なフリーハンドをもってしまうことは組織として、ない。その点は、あまり心配はしていない。

--住宅整備のあり方について

事務次官 2000年122万戸の着工件数を見たが、21世紀は量から質へ、また高齢化時代を踏まえ、21世紀型の住宅政策への転換が求められている。高齢者が安心して居住できるような住環境を整備していくのが最大の目標だ。また、それと同時に、日本経済を見た場合、実需を本当に呼び起こす部分は住宅であり、住環境であり、広い意味では、交通問題やインフラ整備を含めた都市環境の改善だと思う。これらを含んだ上での生活環境をどう向上していくのか。日本経済にとっては非常に大事なことである。

 とくに日本経済は、外に依存するのではなく、内需を振興する中で経済が回っていくシステムが非常に大切だ。住宅はその尖兵に足りうる重要な部分である。

--具体的な連携事業は

事務次官 1つは、駅と駅周辺を歩きやすくする円滑な「交通流」が確保され、ゆとりある空間をどう生み出せるかといった駅と駅周辺の環境改善。

 2つ目は、1日5万台の交通量がある開かずの踏み切り対策。全国に1000か所ある。この渋滞を1刻も早く解消したい。大きな環境対策でもある。3つ目は、身近な防災情報を国民に分かりやすく提供できるシステムをつくりたい。4つ目は空港・港湾と道路をどう結びつけるのか。インターチェンジを降りてから10分以内に空港や港湾に到達する割合が日本は、欧米に比べ半分以下の数値(%)になっている。欧米並にアクセスのよいものにしていく努力をしたい。

--政策評価について

事務次官 事業着手時の評価、途中の評価、事後の評価についての3つのランクがある。公共事業の見直しを昨年実施してきたが、省議でも政策評価をきちっとやっていこうと決定した。これは単に事業というだけでなく、その結果をシステムとして見なおすことを含めて、公共事業の7割を以上を担当する国土交通省として、より大きな流れの中で置付けできるものと思っている。



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