県農政部は、「伊那南部広域営農団地整備計画」の変更案を公表した。広域営農団地整備計画は、該当地域の農畜産物生産量拡大と産地化を狙いに、広域農道を核とした道路網の整備、ほ場整備やかんがい排水等による生産基盤の強化や農業近代化施設の整備による集出荷体制の確立と合理化を進める。
昭和46年度に計画を策定、中央自動車道など高速交通網に対する対応や基幹作目の変化による状況を踏まえ、同48年度に第1回、同55年度に第2回の計画変更を行っている。今回の変更案は第3回目で、平成11年に着工した三遠南信自動車道等で新たに東海方面の市場への進出も可能となってくること、平成9年に飯田市及び下伊那郡一円の各農協が広域合併した「みなみ信州農業協組」の誕生により農業生産・集出荷・販売体制が強化・一元化されたこと、さらに畜産業が盛んで豊丘村に隣接する大鹿村を区域に入れることにより、より一層の農業生産団地の発展を目指す。
変更計画の主な内容は、
◆関係市町村=飯田市、松川町、高森町、喬木村、豊丘村の5市町村に大鹿村が加入
◆基幹作目=衰退した養蚕に替わり、新たに花卉(カーネーション、シクラメン、ばら)を加えた
◆整備計画=農業生産基盤整備では、基幹農道整備、支線農道整備、ほ場整備、畑地帯総合整備に新規で中山間総合整備事業に入れた。農業近代化施設整備では集出荷施設はそのままで、養蚕飼育施設を削除、農業管理センターは広域化により広域営農センターに変更
整備計画では「伊那南部地区」広域農道が目玉。同地区は、伊那南部地区広域農道計画のうち、未着工部分の事業化を図るもの。伊那南部地区は、天竜川左岸(竜東側)の飯田市下久堅地先で国道256号から分岐して北に進み喬木村、豊丘村を抜け、天竜川を渡河して竜西側の松川町に入り国道153号と交差した先で分岐し、一部ルートは松川ICへのアクセス道路として北に進み主要地方道松川インター大鹿線と連絡、主ルートは南へ方向を変え、高森町を横断して飯田市桜町で主要地方道飯島飯田線と接続する全長約34kmの道路。このうち起点となる飯田市下久堅から豊丘村神稲間L11、802mは「伊那南部地区広域営農団地農道整備事業」として昭和49年度から平成6年度に総工費67億8、400万円を投じて整備。さらに、伊那南部地区終点の豊丘村神稲から同村河野・寺沢川橋間L5、265m、竜西側の松川町古町(国道153号との交差部)~松川・高森町境の高森町上平間L3、616m、高森町駒場~飯田市座光寺間L7、250mの3区間を「伊那南部2期広域営農団地農道整備事業」として昭和52年スタート、約120億円の事業費を投じた結果、13年度9月をメドに供用を図る方針だ。
また、飯田市座光寺~終点の同桜町間L2、060mは建設施工分で県飯田建設事務所(13年4月末供用予定)、高森町下平~同町駒場間L1、308mも建設施工分で高森町(既供用済)が施工を担当した。
豊丘村河野の寺沢川橋右岸から松川町古町で国道153号交差部までの未整備区間については、「下伊那北部地区」広域農道として早期事業化を目指している。大鹿村が計画区域に加入したこともあり、県ではルートを概ね北側に変更する方針。変更ルート案は、全長L6、480m。構造物は天竜川渡河部を含む橋梁4橋(L557m)が想定されている。ルートは、寺沢川橋からアップダウンを最小とするためほぼ等高線に沿って進み、間沢川を越え右岸側を西へ方向を替え、松川町生田の福与地区で一旦主要地方道伊那生田飯田線に合流して北へ進み、宮前地区から天竜川を渡り松川町古町で国道153号及び伊那南部2期地区広域農道と接続する。
この他、生産基盤整備関係では幹線農道として1地区L2km、支線農道で9地区L23km、かんがい排水で用水路改修11地区L11・2km、ほ場整備備5地区117haの整備を行うものとしている。
「伊那南部広域営農団地整備計画」変更案の主な内容は次の通り。
●農業生産基盤の整備及び開発に関する計画
【整備開発の構想】
伊那南部広域営農団地における生産基盤整備は、まず広域農道などの基幹農道整備を柱として農畜産物の輸送の合理化、効率化を図ることが挙げられる。また、農作業や都市との交流による観光資源を活用した農業の支援として、支線農道や農業集落道の整備を進める。
このほか用排水路の整備、簡易なほ場整備、畑地かんがい施設の整備を進め、生産性の向上と生産量の拡大を図る。さらに、中山間地域の活性化を図ることを目的として、中山間総合整備事業の積極的な導入を進める。温泉など観光と連携したいちご狩りや体験農園、直売所、加工所、観光農園など農畜産物の高付加価値販売への取り組みが各地で行われている。また、グリーン・ツーリズムによる交流の取り組みが、大鹿村、豊丘村、飯田市で始まっている。高速道路、基幹農道などの道路整備により、都市との時間短縮がなされ51地への交流人口の増加が期待されており、今までの短期的、点的交流から、長期的かつ面的な交流事業への発展をすすめる。
〔農道整備〕
昭和48年度の第1回計画変更により、広域営農団地整備計画に広域農道の計画が位置づけされ、昭和49年度から建設が始まっている。完成している竜東地域と竜西地域の広域農道は、農産物の集出荷や農作業の効果を上げているが、これらを結ぶ既設県道や町村道は、近年の交通量の増加と輸送車両の大型化により通行に支障をきたし始めている。このため、竜東地域と竜西地域の広域農道との接続する新たな広域農道を計画し、農産物輸送の効率化、集出荷体制の強化と農業の活性化を図る。また、中山間総合整備事業や団体営事業により、基幹農道に接続する支線農道の整備を進め、農作業と農畜産物の集出荷の効率化を図る。
〔その他の整備〕
本団地内の中山間地域の総合的な活性化を図るために、飯田市竜東地域、喬木村、松川町及び大鹿村で中山間総合整備事業の導入を進める。ほ場整備、道水路整備を行い生産性の向上を図るほか、地域の特産物を活用して都市との交流による地域の活性化を図りながら、生態系の保全や有機農業の実施による環境にやさしい農村づくりを進める。
天竜川両岸の水田地帯は、ほ場整備がほぼ完了しているが、竜西地域の竜西土地改良区が管理する幹線水路は、老朽化してきており改修が必要になってくる。また竜東地域の小渋川土地改良区が管理する河岸段丘上の果樹地帯への畑地かんがい施設についても基幹施設の改修が必要になっている。施設の改修により生産量の拡大と品質の安定化を進める。また、国営土地改良事業地区調査竜西地区では、竜西幹線水路の整備とともに周辺農地への畑地かんがいを含め、今後の竜西地域の総合的な整備を踏まえた調査が予定されている。
【整備・開発の計画】
事業種別に掲載。また、下伊那北部地区と既12年度採択事業は、具体的な地区名・事業内容等を掲載。掲載は、・事業名・地区名(対象市町村名)=①事業主体②事業費③施行年次④主要事業内容の順。なお、国との調整や経済状況等の変化により計画を変更する可能性がある。
〔農道整備計画〕
▼基幹農道の新設改修=2地区L8・6km×W5・5~6・0m、As舗装(受益面積3、560ha※関係市町村・飯田市、松川町、高森町、喬木村、豊丘村、大鹿村
・広域営農団地農道整備事業下伊那北部地区(飯田市他5)=①県②75億円③--④道路工L6・6km×W5・5~6・0m
▼支線農道の新設改修=9地区L23km×W3・0~4・0m、As舗装(受益面積183ha※関係市町村・飯田市、松川町、喬木村、大鹿村
・県営中山間総合整備事業竜東飯喬地区(飯田市他1)=①県②10億5、900万円③12~18年度④道路工L5・2km×W3・0~4・0m
・ふるさと水と土ふれあい事業よこね地区(飯田市)=①県②8、000万円③12~13年度④道路工0・7km×W3・0m
〔その他の広域的な事業計画〕
▼かんがい排水=用水路改修11地区L11・2km(受益面積1、801ha※関係市町村・飯田市、松川町、高森町、豊丘村、大鹿村)
・県営中山間総合整備事業竜東飯喬地区(飯田市他1)=①県②3億3、800万円③12~18年度④水路工L2・4km
・ふるさと水と土ふれあい事業よこね地区(飯田市)=①県②8、000万円③12年度④水路工L0・7km
・基盤整備促進事業北名子井地区(松川町)=①町②1億円③12~13年度④水路工L1・0km
・同事業上平地区(高森町)=①町②4、500万円③12~13年度④水路工L0・7km
▼ほ場整備=区画整理5地区A117ha(受益面積117ha※関係市町村・飯田市、喬木村)
・県営中山間総合整備事業竜東飯喬地区(飯田市他1)=①県②1億9、200万円③12~18年度④区画整理A9ha
【施設整備に関する計画】
〔施設整備の構想〕
JAみなみ信州の発足により、施設の広域的な連携と生産流通体系の強化がなされた。今後は農業生産の向上と農畜産物の集出荷の効率化、流通の合理化を進める。これに伴い広域施設の拡充と有効利用を図る。
「米」については、ライスセンター、乾燥調整施設等の効率的利用による品質の安定化を進めるとともに出荷体制を整備するほか、優良種子の導入と生産技術の向上を図り、優良米の生産に努める。
「野菜」については、集出荷施設、予冷施設の拡充と活用を図るとともに、広域育苗センターを整備して優良苗の供給による生産の向上に努める。
「果樹」については、選果場の統廃合と光センサーの整備、予冷・冷蔵施設の有効活用を進め、果樹産地として市場への安定的な供給体制を整える。
「花卉」については、花卉栽培の促進を図り、集出荷場の整備により出荷体制の充実に努め、みなみ信州の花の銘柄化を確立する。
「畜産」については、生産から販売に至る系統組織の合理化と活用により販売流通機能の充実を図る。
〔施設整備の計画〕
▼広域営農センター
JA広域営農センターを設置し、管内の農業振興方策の策定、市町村行政の農業施策との整合、農業技術の統一、普及など、農業の振興と農村活性化に関する事項を企画、推進するほか、農家や地域の営農実践などを支援する拠点とする。また各市町村に地区営農センターを設置し、地域営農システムの推進、農用地の利用調整、担い手確保と育成など、地域農業の振興を図る。
▼広域育苗センター
野菜、花卉の優良苗の導入を図り生産拡大と生産安定をはかるために、経済連種苗センターとの連携を含め、定植苗の全量供給体制を確立する施設として広域育苗センターを設置し、広域的な利用体制に取り組む。
▼その他の施設
集出荷施設・予冷施設、ライスセンター、選果場などの施設については、農協との合併により広域的な利用を進めるほか集集荷体制の効率化と合理化を図る。また施設機能を充実させ総合的な集出荷体制の確立を進める。