国土交通省は大深度地下の公共的使用に関する基本方針を策定した。同方針は4月1日に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に基づき大深度地下の使用認可の適合条件となるとともに、国の政策の方向性を示すものとして今後の動向が注目される。
土地利用の高度化・複雑化が進んでいる大都市地域においては、事業を地上や浅い地下において効率的・効果的に行うことが難しい傾向にある。このため、土地所有者などによる通常の利用が行われない大深度地下の利用が進められつつある。
基本方針の概要は次の通り。
▽大深度地下における公共の利益となる事業の円滑な遂行に関する基本的な事項(大深度地下を使用する事業については、権利調整期間の短縮化、合理的なルートの選択、円滑な事業の実施、用地費の低減、騒音・振動の軽減などによる居住環境への影響の低減、耐震性の確保などを図ることができ、良質な社会資本の効率的・効果的整備に資するものである必要がある。事業の円滑な遂行のための方策としては事業の構想・計画段階から、事業者は情報の公開を行い、具体化した段階では、住民への周知・説明に努めるなど説明責任を果たす。地上とのアクセスが必要な事業については、地上・浅深度地下の施設管理者と十分調整を図る。必要に応じ、土地収用制度・都市計画制度の活用・連携を図る)
▽大深度地下の適正かつ合理的な利用に関する基本的な事項(大深度地下空間の利用調整については、同一方向に向けて整備される施設ごとに、利用深度を定めて空間を整序する。大規模な地上とのアクセス部分は、可能な限り、空間確保が比較的容易な公共用地付近の大深度地下に配置する。大深度地下使用協議会を活用して、事業構想段階から利用調整を実施し、調整を経た上で使用認可申請を行う)
▽安全の確保、環境の保全その他大深度地下の公共的使用に際し配慮すべき事項(安全の確保については、火災・爆発、地震、浸水、停電、救急・救助活動、犯罪防止などについて十分な対策を講ずる。環境の保全については地下水位・水圧低下による取水障害・地盤沈下、地下水の流動阻害、地下水の水質、地盤変位、地層の化学反応、掘削土の処理などの問題を踏まえた環境影響評価手続きを実施する。国、地方公共団体、事業者が連携して、安全・環境情報などを収集し、安全対策の確立、環境影響評価手法の開発を推進)
▽その他大深度地下の公共的使用に関する重要事項(技術開発の推進については、国は技術開発ビジョンをとりまとめることにより、民間の技術開発の促進を図る。大深度地下利用に関する情報収集・公表については、国は地盤の情報、地下に設置された施設の情報などに関する情報システムの整備を推進する)