茨城県笠間市福田地区に計画されている公共処分場の整備方針などを検討している県の「公共処分場基本計画策定委員会」(委員長=石田東生筑波大学教授)は、このほど第4回委員会を開き、基本計画をまとめた。
計画施設として①最終処分場(埋立容量240万立方m)②溶融処理施設(受入量25万t/年)③防災調整池④受入管理施設-を提示。また、環境教育や研修などにも活用する管理棟(2階建て延べ2、000㎡)の整備も盛り込んでいる。これら施設の整備費や用地費・調査費・環境整備費などを含む概算建設費は約231億円と試算した。
基本計画を受けて、事業主体の県および財団法人茨城県環境保全事業団では今年度、関係者で構成する「公共処分場整備推進委員会」を発足させ、整備方法や運営方法、処理料金などを検討する。同委員会では今年度内に一つの結論を見いだす予定。また、昨年度に着手した地下水・地質調査や環境影響調査、地元説明なども継続して進めていく。
基本計画では、整備基本方針として①安全・安心な施設構造の確保②最新技術の導入③循環型社会形成に向けたモデル施設-など9項目を提示。
安全で信頼性の高い処理施設の設置運営にとどまらず、廃棄物処理の先導的役割を果たすことや、廃棄物に関する研修、環境保全の普及啓発なども視野に入れた事業の展開もうたっている。
これらを踏まえ、受入廃棄物の内容や処理フロー、浸出水排除方式(ポンプアップ案および自然流下案)、しゃ水工構造(多重構造)などを検討。浸出水処理施設計画、防災調整池、ごみ処理方式なども提示した。
また、環境教育施設の整備の考え方として、展示施設、研修施設、研究施設などを例示。
さらに、事業採算も検討し、資金調達・返済金等の面から概算建設費約231億円を算出。同時に、経営収支は事業期間15年間で均衡すると見込んだ。
公共処分場は、民間による処分場設置が困難なため、公共が関与した最終処分場として笠間市福田地区の採石場跡地約24・5hに計画された。
昨年度は、公益法人の県環境保全事業団が発足するとともに、環境調査および地下水・地質調査に着手。
また、処分場の整備方針などを検討する基本計画策定委員会と、環境面を検討する生活環境調査委員会を設置し、協議を開始した。
基本計画を受け今後は、地元説明などに加えて、地元代表や学識経験者、最終処分場を有しない市町村などで構成する「整備推進委員会」を立ち上げ、整備方法、施設運営方法、建設基金などへの協力体制(処理料金、搬入の事前協議)を検討する。
また、これまで2回にわたり進めている環境調査および地下水・地質調査を、より詳細に行う。
【基本方針】
▼安全・安心な施設構造の確保
・しゃ水工構造は、国の基準よりも安全性を高めるため多重構造とし、同時にシートへの負荷軽減策の増強を行う。また、鉛直しゃ水工を施す。
・しゃ水機能の常時監視を行い、異常への即時対応が可能なモニタリングシステムを導入する。
▼最新技術の導入
・従来型の焼却施設よりもダイオキシン類の排出低減、また、スラグ化が可能な溶融処理施設の導入を図る。
・最新技術の保護材(GCL)の導入を図るなど、最先端の設計思想によるしゃ水工構造とする。
▼循環型社会形成に向けたモデル施設
・廃棄物の減容化、減量化を図る施設とする。
・高効率の発電施設を擁し、サーマルリサイクルを実現する施設とする。
・溶融スラグは一部をリサイクルし、路盤材などに再利用する。
▼厳正な受入管理
・事前調査として、書類審査、溶出試験等の現地調査を実施する。
▼環境教育の場としての機能
・全国各地からの見学者に対応し、県内小中学校等とタイアップした環境教育の場として活用できる見学・研修施設を設置する。
・県民参加によるごみの減量化、リサイクル推進運動の拠点とする。
▼自然環境との調和
・可能な限り景観に配慮した施設配置とし、建築物等は周辺環境との調和を考慮した外観とする。
・埋立完了部については早期に、防災調整池については良好な水辺環境を創出するために、防災上支障がない範囲で植栽を行う。
▼情報公開と地域に開かれた公共処分場
・地元住民、学識経験者等から構成される第三者的な「監視委員会」が設置されることが望ましい。
▼跡地利用計画
・周辺や跡地利用計画は、地元住民の要望等を十分に踏まえた上で、地域発展を目指した地元還元機能をもつものとする。
・跡地利用計画の策定にあたっては、地域住民の参加、有識者の意見等を踏まえた上で検討を進める。
【計画施設】
▼管理棟=延べ2、000㎡、2階建て、環境教育のための見学、研修施設を併設、分析・研究室を併設
▼受入管理施設
▼溶融処理施設
①処理能力=145t/日
②年間受入量=25万50t/年(計画目標年次平成23年度)
③稼働日数=300日
④稼働期間=平成16年度~30年度
⑤稼働年数=15年間
▼最終処分場
①埋立容量=240万立方m
②埋立面積=9万8、000㎡
③埋立期間=平成16年度~25年度
④埋立年数=10年間
⑤浸出水処理施設処理能力=平均150立方m/日
⑥浸出水処理施設稼働期間=平成16年度~45年度
⑦浸出水処理施設稼働年数=30年間
▼防災調整池
▼その他(下水道放流施設など)
【建設費等=合計231億円】
▼施設費=最終処分場、浸出水処理施設(浸出水調整槽含む)、溶融処理施設(リサイクルプラザ含む)、管理棟(研修見学施設、分析施設含む)、情報管理システム
▼その他=調査費、下水道放流管布設、用地買収、環境整備費など
【建設資金の調達】
①県出資金
②市町村、排出事業者出資金=利用者による出資金
③補助金=廃棄物処理センターの指定を受けることによる補助金
④制度融資=廃棄物処理センターの指定を受けることによるNTT無利子および低利子融資
⑤銀行融資=政策投資銀行、市中銀行
【概算経営収支】
▼事業収入
①最終処分場収入=平均1万9、280円/立方m
②溶融処理施設収入=平均3万1、200円/t
③売電収入=平均3、000kwh×稼働率80%、単価7円/kw
▼運転・維持管理経費
①最終処分場
・人件費=28名
・電力・燃料・薬品代
・上下水道費=上水道3、000立方m/年、下水道150立方m/日
・施設補修費=埋立作業重機7台、浸出水処理施設建設費の4%
・覆土購入費
・維持管理積立金=埋立終了後20年間の維持管理経費
・跡地整備積立金
②溶融処理施設
・人件費=50名
・溶融灰処理費=6、000t/年(埋立終了後5年間)
・電力・燃料・薬品代
・上水道費=100立方m/日
・施設補修費
③管理経費
④モニタリング経費=廃棄物分析、地下水分析、環境大気分析など
⑤公租公課=土地、建物、償却資産等の取得税、固定資産税