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安全かつ良質な水道水供給へ、高度浄水処理施設導入を検討-新三郷浄水場モデルに(埼玉県)

2001/05/29 埼玉建設新聞

 埼玉県企業局は、より安全で良質な水道水の供給に向け、高度浄水処理施設の導入を検討している。現段階では処理方式はオゾン処理と活性炭処理を組み合わせた方法が有効とし、導入浄水場は新三郷浄水場が考えられている。今年度は同処理施設導入に向け、受水団体への説明会を開催し理解を求めるとともに、6月には給水区域の県民に対して「水」に対する世論調査を実施。今年度に結論が出れば14年度以降で浄水方法の変更認可申請図書作成作業に着手する。着工までは実施設計業務などに2か年、工事期間は3-4か年を見込んでいる。

 高度浄水処理は、凝集沈殿、塩素注入、砂ろ過によるこれまでの通常処理から、オゾン、粒状活性炭の処理プロセスを加え、安全性の向上を目指すもので、平成6年度から県庄和浄水場内で実験を進めていた。

 実験内容は、従来の通常処理からオゾン処理や粒状活性炭の処理段階を変えるとともに、活性炭については下向流、上向流と通水法を変更しながら臭気物質除去、トリハロメタン前駆物質除去効果の確認作業など5系列の浄化処理フローを実施。

 昨年度はこの実験結果を基に、設備の配置計画、概算事業費などを日水コン(新宿区)が県営水道の原水水質に最も適した高度処理方式などを検討。新三郷(三郷市蓮沼1)、大久保(浦和市宿618)、行田(行田市小針1632)、庄和(庄和町新宿新田100)の4浄水場を対象に検証してきた。

 その結果、県営水道では、オゾン処理と活性炭処理を組み合わせた処理方法が様々な項目に対して有効とし、導入対象は現状の原水水質が悪く、臭気問題も発生している新三郷浄水場を初弾として位置付けた。

 1日あたりの処理水量などは未定だが、急激な水道料金値上げなど、県民負担の影響を回避するため、段階的に整備していく方針のようだ。

 処理方式は決定していないものの、施設整備には膨大な事業費投入が必要となる。県が有力としている同様の処理法で既に実施しているる東京都の場合は金町浄水場が日量52万tの施設で総事業費約272億円、三郷浄水場は同55万tで同358億円となっている。

 このため、水道料金を負担する受水団体の理解を得るため、支部代表との意見交換会などを通して施設整備の理解を求める。並行して給水区域県民に世論調査を行い、県民のニーズや高度浄水処理施設導入に対する意向を把握する。

 説明会などで一定の理解が得られれば、さらに検討を重ねた上で整備方針を決定し、事業化に向けた各種作業に取り掛かる。

 作業フローはまず、厚生労働大臣から浄水方法の変更認可取得のための図書作成作業に入る。その後、実施設計などの業務を経て、着工までには2か年を要する。工事期間は稼動中の浄水場に整備していくため、3-4年は必要とされる。

 将来的には、原水水質に応じて順次、各浄水場に導入していく考え。

 初弾工として予定されている新三郷浄水場(蓮沼1)は、敷地面積14万3、241㎡。平成8年に第1期、2期工事が完了し、三郷市、吉川市、草加市、鳩ケ谷市、川口市、越谷市などに給水。最大能力は1日36万5、000t。現在の浄化法は、薬品沈殿、急速ろ過、塩素混和、薬品注入などによる。

 なお、高度処理施設を導入している東京・金町浄水場の水道水アンケートでは、市販のミネラルウォーターと遜色ない結果が出ている。



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