建設業者の丸投げ(一括下請負)が後を断たない。今月、鳥取県発注の「一般県道道路改良工事」に関し、国土交通省(関東、近畿、中国の各地方整備局)は、元請け、下請け双方6社に対し建設業違反に基づく営業停止命令を行った。建設業法第28条の規定に基づいた処分で、「工事の主たる部分を一括して請け負わせた」「工事の主たる部分を一括して請け負った」「主任技術者を設置しなかった」「主任技術者設置義務違反及び一括下請負の禁止違反に加担した」との理由による監督処分を課した。
さらに、処分は請負業者だけでなく、同時に発注者の鳥取県知事に対し「今後の再発防止に向けた適切な指導と公共工事の発注に当たって競争参加資格の適切な設定など」の申し入れを行った。
一昨年(99年)10月には鹿児島市発注の水路工事で、昨年12月には中部地建の電線共同化工事で、今年2月には愛媛県のトンネル工事で、それぞれ丸投げ工事が発覚した。いずれも特殊な工法や特殊な機材が必要とされてはいたものの、結果的に利ざやを稼いだものとなった。
鹿児島市の水路工事の場合は業法を厳守するよう勧告した。同市に対しても丸投げを助長・誘発したとして「発注方法の見直し」を申し入れた。ハサミ(工区割)のいれ過ぎによる発注方法の不合理、施工の合理性を無視しコスト高を招いたとして、当時の建設省は初めて自治体に対し「工事の適切な施工体制の確保ができるかどうかを十分勘案して行うよう」指導した。
当時は、この申し入れは画期的なことであった。なぜなら、これまでは、越権行為として国は自治体に口を出せなかったからだ。これを機に国は指導を強化している。異例の改善指導を受けた同市は、早速発注方法の見直しを行い、今年から最低制限価格を撤廃し低入札価格調査制度に踏み切ったほか、単位発注委員会を設け、工事を入札するたびに工事規模の適正化を審査している。技術者の配置にしてもJACICの支援データベースで技術者の資格などを把握して入札を実施している状況にある。
中部地建の電線共同化工事は、大手道路会社による横請け(同規模会社間の丸投げ)で、施工体制台帳に虚為申請し丸投げを隠蔽した悪質なものだった。入札契約適正化法の成立(11月)直後とあって、国は初めて「営業停止処分」を課した。鹿児島市より更に一歩踏み込んだ監督処分となった。
技術がないために陥りやすい丸投げの背景には、行き過ぎた地元業者の優先発注が一方にある。地元の工事は地元業者に出来る限り任せる「地元優先発注」や「工事の分離発注」、管内に本店や営業所の条件を付す「地域要件の設定」といった地元保護策こそが、丸投げの温床との批判もある。入札・契約適正化法の施行で、施工体制台帳の提出が義務付けられ、丸投げ防止への強化策を打ち出したが、依然として丸投げ行為は後を断たないようだ。国土交通省では丸投げを「氷山の一角」と見ており、建設業界の古い体質(構造)改善に躍起になっている。
同省が丸投げを禁止している理由は「工事の中間搾取を助長するとともに、責任施工があいまいになることで手抜き工事や労働条件の悪化につながり、業界の健全な発展を阻害する」ためである。
一般に建設業の不正行為には、「公共工事におけるもの」(指名停止等)、「建設業法違反」(丸投げ等)、「刑法犯罪」(談合等)、「独禁法違反」(カルテル等)に分けられる。このうち、建設業法に関しては、指示処分、営業停止処分、許可取消処分の3段階強化で監督処分が行われる。
指示処分は法令違反や不適正な事実を是正するため、監督行政庁が建設業者に命令を出すもの(業法28条)。営業停止処分は、指示処分に従わないとき、または、一括下請けの禁止(丸投げ)の規定違反、独禁法や刑法など他の法令に違反した場合などには指示処分なしで、悪質と見なし直接、営業停止処分が行われる。停止期間は1年以内。許可の取消処分は、不正な手段で建設業の許可を受けたり、営業停止処分に違反して営業したりする場合は、監督官庁から建設業の許可取消処分(同29条)が課せられる。年間、監督処分は直轄と都道府県合わせ500社以上にも及ぶ。
通常、丸投げは、たれ込み、会計検査院による施工台帳の開示、下請け代金の不払い、労災事故などから発覚するケースが多い。今回の鳥取県のケースでは会計検査院による上請けで発覚したケースだった。丸投げは、請け負っても請け負わせても、共犯である。同省では「請け負うから違反の片棒を担ぐわけであって、請け負わないに越したことはない。最終的には『業者個々の自分の判断』になる」と断じている。
さらに、「丸投げ禁止こそ建設業界の最大の構造改善である。法律をなめているにも程がある」と、業者の懲りない違反に対し、憤りをあらわにしている。「主任技術者を現場に一人置いただけでは、管理などできるわけがない。そういう業者は大手におんぶに抱っこは目に見えている。発注者は主任技術者が何をやったかを見ているものだ。(業界は)危機意識をもっと持っていただきたい」と憤激。入札契約適正化法がこの4月から施行されたが、「徐々に抑止力は出てくる」と期待を寄せる。
明らかな法違反である。丸投げをやれば必ずばれる。公共投資が減少しているにも関わらず、他産業から建設業への参入増加には、不良・不適格業者の跋扈に見られるように、「建設業は簡単に儲かる」との錯覚した、安易な背景があるのも否めないようだ。
同省では、ランキングにしても、落札率にしても、建設業界へ苦言を呈している。
ある意味で、ランキング(各付け)は、よくない不適格業者をぬくぬくさせている。「『ランキングを廃止せよ』との声をよく聞くが、無くせば大手業者に全て仕事を取られ兼ねない。(ランキングを廃止せよとの声に対しは)えらそうなことを云わなさんな」とご立腹している。
また、その一方で業者は「不良・不適格業者排除のため)競争を激しくしろ」ともいう。いま直轄工事の平均落札率は予定価格の96・9%だと云われている。競争を激化させれば業界は「ダンピングを招く」と反対する。落札率が70%ならダンピングと呼べよう(同省)が、競争が激しくなっても85%程度であろう。スリム化しなくては行けない。上請けという贅肉を取り、筋肉質にしなければならないと力説する。
さらに、建設業界というは、農業、運送、石油業界など官の影響が強い産業と同様に、官から公共事業を食わせてもらっているとの意識も強く働く。国は建設工事の50%、都道府県にあっては90%が官庁工事であろう。
一体だれが、こういう業界に追いやってしまったのか。ある意味では、業者は犠牲者だ。「これ以上やると違反と分かっている」のに、一線を超えてしまった。倫理観が麻痺した。そこには麻痺させ誘導した行動があるのではないか。そういう意味では政治も行政も「共犯といえるかも」知れない。
建設業界団体などからも、丸投げは「自ら首を絞める行為だ」との声が持ちあがっている。地域要件、分離発注、官公需法という中小企業の地元保護を受けているにも関わらず、上請け、丸投げが横行している。いつまでたっても丸投げしているようでは、自分たちの首を絞めているのと同じだ。適正化法の施行以来、丸投げは業法違反で営業停止になる。国では「法律をなめれば、もっと厳しく対処する」としているのである。違反行為をもっと自覚し、法を厳守していただきたいものだ。
因みに、建設業法違反には、丸投げ禁止のほか、無許可営業(45条)、下請契約違反(同)、営業停止処分違反(同)、営業禁止規定違反(同)、虚為・不正による許可または申請(同)、許可申請等の虚為記載(46条)、変更届けの無届けまたは虚為記載(同)、主任技術者・管理技術者の無設置(47条)、報告聴取・立入検査に関し虚為報告(同)、廃業届の無届け(49条)、標識の不掲示(同)、標示の制限違反(同)などを規定している。