(財)建設経済研究所(東京都港区)は、設備工事業の動向をレポートした。
設備工事業は、専門工事業としての問題点を抱え、景気の低迷や建設投資の不透明さによる懸念材料も多い一方、将来のリニューアル市場の担い手として有力視される。
近年の最新鋭の建物は、情報通信やエネルギー関係の建設設備の比重が大きく、今後の設備工事の割合は増加する傾向にあり、設備工事業は、「専門工事業」、「中小企業」などの立場として抱える構造的な問題点や、景気の停滞や建設投資の不透明さによる懸念材料も多いが、リニューアルや環境対策などの中心に位置する業種であり、経営力(営業力)、施工力(技術力)、の強化によって開かれる将来の可能性は大きいと言え、設備工事業の今後の展望の一つとして、リニューアル(維持補修・改修工事)市場への期待が高まっている。
建設工事施工統計調査報告によると、設備工事業の1998年度の総完成工事高は27・3兆円であり、うち元請完成工事高は13・6兆円で、元請比率は50・0%となっている。前年度と比較すると、完成工事高は28兆円から0・7兆円減少だが、元請完成工事高は13・5兆円から0・1兆円増加し、元請比率は48・1%から1・9ポイント上昇した。
総合工事業の1998年の総完成工事高は、86・9兆円、うち元請完成工事高は60・4兆円、元請比率は69・5%である。前年度と比較すると、完成工事高は94・5兆円から7・6兆円減少し、元請工事高は66・0兆円から5・6兆円減少した結果、元請比率は69・9%から0・4ポイント減少した。
設備工事業は、総合建設業に比べて約3割の市場規模であり、元請比率が低くなっている。単純に業者数で割った1社あたりの完成工事高では、設備工事業4・5(前年度5・3億円)、総合工事業4・7(同5・5億円)と、ほぼ同規模になっている。
建築物の純工事費に占める設備工事の割合は、構造別平均では、SRC造28・2%、RC造23・5%、S造22・3%、W造の16・1%となっている。
総合建設業と設備工事業の業績を比べて見ると、最近1年間では、完成工事総利益率は設備工事業が建設業を上回っているが、売上営業利益率、売上計上利益率は建設業が上回っており、当期利益は設備工事業の方が大きくなっている。特に、設備工事業は建設業と比べて売上営業利益率が低くなっているのは、販管費の負担が大きいことを示している。設備工事業は元請比率が低く、下請けになるほど労務割合が高いため、人件費の抑制が難しいと考えられる。
一方、業界再編の動きとして設備工事業界では、企業構造、体質転換へ向けた合併、統合、分社などの動きが活発化しており、特に通信設備工事業界では、1980年代に70社以上あった工事参加資格認定業者は25社程度に減少している。
このように、建設業の売上減少とともに、設備工事業の今後の展望の一つとして、リニューアル(維持補修・改修工事)市場へ期待が高まっている。
設備工事業=リニューアルがこれからのキーワードとなる。