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(一社)全国建設産業団体連合会

専務理事に就任、熊新六氏に聞く

2001/07/10 埼玉建設新聞

 6月の臨時総会で日本土木工業協会、日本電力建設業協会、日本海洋開発建設協会の専務理事に就任した熊新六(くましんろく)氏にインタビューを行った。熊専務は「建設業界発展のために全身全霊を傾けたい」と所信を述べるとともに、これからの公共事業について「国内の社会資本を整備するという発想に止まらず、国際競争力の視点で社会資本整備を見直すことが重要になってくる」とし、「欧米だけでなく、アジアの先進的なインフラ整備の事例も積極的に勉強していくべき」と語った。また、米国やイギリスなどが21世紀の国家戦略として公共事業を見直し、力を入れていることを指摘、「日本も21世紀の国づくりを徹底的に論議すべき」と述べた。

 --就任の抱負について。

 熊専務理事 歴史と伝統のある3協会の専務理事としてこれから業界団体の仕事を担当するにあたり建設業界の情勢の厳しさを見るにつけ、身の引き締まる思いである。建設経済研究所でも建設市場の中長期予測を発表したが、さらに、市場は収縮すると予測されており、情勢は厳しさの度合いを強めている。いろいろな課題に対して全身全霊を傾け、建設業界発展のために尽くしたい。

 --小泉内閣の都市再生について。

 熊専務理事 国際競争力の強化という点でも都市の再生は今後ますます重要になってくると思う。わが国は欧米に追いつけ追い越せということで戦後、社会資本整備などを推進してきたが、模範となるのは欧米だけではない。海外出張でシンガポール、マレーシア、中国などの空港、港湾などを何度か見る機会があったが、インフラを効率的に利用しており、いずれもすばらしい施設であった。日本はアジアの各国と比較してもこういったインフラ整備の面で国際競争力を失いつつあるのではないか。「公共事業はもういらない」などと気軽に言うマスコミなどは、本当のところを分かっていないのではないか。建設産業は立派な功績を残しているし、大変すばらしい仕事をしていると思う。阪神淡路大震災のとき、阪神高速道路公団に勤務していたが、橋梁構造物の一部倒壊があったり、いろいろな壊れ方を目の当たりにした。復旧作業においては橋梁の上部下部に止まらず、基礎部分も詳細にチェックし、技術者は大変な努力をしていた。その際、数多くの技術の引き出しを用意して柔軟な対応を見せた。こういう大規模災害時にも建設産業はリーダー的な役割を発揮したと思う。

 --今後の社会資本整備について。

 熊専務理事 米国は20年ほど前までは社会資本整備を熱心にやっておらず、道路などはガタガタだった。その後、米国版道路特定財源などを作り、積極的に社会基盤整備を実施している。米国の景気は上昇に転じ、かつての勢いを取り戻しつつある。公共事業による景気浮揚論は、わが国においてはいろいろな意味で疑問視されているが、その有効性は失われていない。米国が再びケインズ理論に忠実に公共事業に取り組みはじめたことは注目に値する。イギリスもPFI事業などを積極的に推進して経済を活性化しつつある。米国とは逆に日本の道路特定財源は見直しの動きが急である。21世紀の国づくりから見て道路特定財源をどう活用するか徹底的に議論すべきだと思う。

 --趣味について。

 熊専務理事 小学校時代から野球が好きだった。高校野球が原点で、母校の松山東高校が昭和25年に甲子園で優勝した年は応援に行った。阪神高速道路公団に勤務していた頃は「六甲山の中腹まで登る会」に入って早朝登山を行った。こちらでは上高地などに時間を見て登ってみたい。囲碁、将棋、ゴルフも。

 【略歴】 昭和40年3月、東京大学法学部卒業、同年4月、建設省入省。同57年2月、同省建設業課労働資材対策室長。平成3年6月、国土庁長官官房審議官。同6年4月、阪神高速道路公団理事。同10年6月、建設経済研究所専務理事。



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