県は、「自然公園における風力発電施設の新築、改築及び増築に関する指導指針」を策定し、26日から適用を開始した。指針は、これまで抽象的な表現だった設置許可基準を数値化などによって明確にしたのが特徴。その他に、採算性・安全の確保、改変面積の抑制などの県独自の基準も設けた。自然公園内を対象に風力発電施設の設置基準を数値化した指針を定めたのは、都道府県では初めてという。生活環境部環境政策課では、施設の設置を希望する事業者は指針を基に検討してほしい、としている。
指針は、風力発電施設の設置希望者が増えつつあり、特に、貴重な自然環境を保護するために設けられている「自然公園」内が風力発電の適地となっているため、自然公園内への設置について、抽象的だった許可基準を明確化するとともに、これまでの許可基準には秩序の保持についての規定がなかったため、県独自の基準を定めることにしたもの。
具体的には、展望・眺望への影響で「視覚の妨げにならない範囲」として「風車の視野角が1度以下」、風車全体の大きさは「風車の視野占有率が0・02%以下」と規定。色彩では「原則として薄いつや消しのグレー」に限定した。
その他に<1>鳥類への生息調査を行うこと<2>設置場所が傾斜角30%(約17度)以下の土地であること-などを明示している。
県内の商業用風力発電施設は、波崎町に2基設置されている(運営はエコ・パワー(株)、風車メーカーはデンマークMICON社、出力600kw/1基)。また、同町では、今年春の稼動を目指し、十町歩・須田地区に12基の建設が進んでいる(事業会社は波崎ウィンドファーム(株)、出力1250kw)。
その他、(株)小松崎開発が真壁町と八郷町にまたがる丸山山頂に2基(100kw)の建設計画を進めている。
県環境政策課によると、現在のところ新たな設置申請はないが、何件か照会がきているという。
同課では、設置希望者に対して今回の指針を基に具体的な検討を重ねてほしい、としている。
指導指針の主な内容は次のとおり。
【趣旨】
自然公園内における風力発電施設の新築、改築及び増築に係る次の事項については、この指針の定めるところによる。
【展望に関する基準】
◇「主要な展望地」とは、公園利用者の展望の用に供する園地、広場、休憩所及び展望施設、公園事業に係る道路並びに公園事業に係る道路と同程度に公園の利用に資する道路(駐車場を含む)のうち公園利用者の展望の用に供せられる区間とする。
◇次のいずれかによるものとする。
・風力発電施設が主要な展望方向に位置しないこと。
・公園利用者が主要な展望方向を望見した際に、風力発電施設が公園利用者の視界に入らないこと。
・風力発電施設が主要な展望方向に位置しても、各風車の可視部分(回転翼を含む)の見かけ上の角度(複数の風車が重なって望見される場合は重なった風車の最下部から最上部までの角度)が1度未満で、かつ、60度の視野に占める当該視野内に位置する全ての風車(回転翼の垂直回転面の面積を含む)の面積(複数の風車が重なって望見される場合にあっては外周線で囲まれる面積とする)比(視野占有率)が0・02%未満であり、かつ、十分遠方にあって明確に見えないこと。
【眺望に関する基準】
◇「眺望の対象」とは、山稜線(公園利用者の位置又は視点と一体となった一連の地平面を除く十分に遠方に位置する山並み)、水平線、湖沼、岬等の優れた自然景観で、晴天時において概ね望見されるものをいう。
◇次のいずれかによるものとする。
・公園利用者が、現に供用されている施設から眺望の対象を眺望した場合に、当該眺望の対象を分断しないこと。
・各風車の視野角が1度未満で、かつ、視野占有率が0・02%未満であり、かつ、十分遠方にあって明確に見えないこと。
【色彩に関する基準】
◇原則として、つや消しの薄い灰色とするものとする。
【指導事項】
◇許可をするに当たっては、次に掲げる事項について指導する。
◇鳥類(特に猛禽類)について十分な調査を実施すること。
◇商用の場合にあっては、風況及び採算性について十分な調査を実施すること。
◇風力発電施設の水平投影外周線で囲まれる土地の傾斜が30%を超えないこと。
◇工事用道路、管理用道路等の関連施設の面積を全ての風車(回転翼の水平回転面の水平投影面積(当該面積より設置工事による改変部分等が突出している場合にあっては、当該突出面積)を含む)の水平投影面積より小さくすること。
◇公園利用者の安全が損なわれないようにすること。公園利用に支障を生じないようにすること。公園利用者の安全が損なわれ、又は公園利用に支障が生じるおそれがある場合は、その回避のために必要な措置を講じること。
【付則】
この指針は、平成16年1月26日から施行する。