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埼玉県県土整備部

5月1日から鋼材単価UP/H形鋼、鋼管など全品目/約30年ぶりの画期的措置

2004/05/13 埼玉建設新聞

 鋼材の価格がこの半年ほど急上昇し建設会社は資材調達において、価格急騰と入手困難のダブルパンチに見舞われている。そんな中、県土整備部は今月1日付でH形鋼、一般用鋼管などの値上がり分を配慮し大々的に「速やかに単価に反映」させる措置を約30年ぶりに行った。県は対前年月比5%を超えた場合をメドに単価の調査を実施し、ある程度単価にその分を上乗せし反映させている。単発的にこれまでも上乗せしたケースはあるが大々的に今回の措置を採ったのは本当に久しぶりのようだ。

 最近の建設業界を取り巻く社会的環境で、入札契約制度の多様化・奇怪化、公共事業量の削減などよりも建設鋼材の上昇であると言える。言うまでもなく今回の価格急騰の要因は、2008年開催の「北京オリンピック」と上海万博によるもの。言わば開発ラッシュの中国特需、中国バブルによる鋼材買い占めで価格が急騰だけではなく、国内業者にとってはその入手すら非常に困難な状況にあり、下手をすると工期に間に合わない場合もあるもよう。

 このような鋼材価格の急騰は業者にとっては死活問題になり、そのことを重要視し県では単価に反映させるという極めて珍しい措置を今月1日付けでとっている。

 県は建設資材、労務単価で対前月比5%の上昇をメドに調査している。その結果上がった分は「まるまるすべて上乗せしているわけではない」がしかるべく上乗せ措置を「速やかに行う」ことにしている。上乗せ分や具体的な鋼材は本来丸秘扱いとしているが、例を挙げると鉄筋コンクリート用棒鋼・異形棒鋼(SD295A D19電炉品)、H形鋼の構造用広幅300×300×10×15mm、一般用鋼管などとなっている。

 もちろん例えばH形鋼の場合では、上記のサイズだけではなく極厚形鋼、橋梁用H形鋼、H形鋼ぐいなどすべての品目が1日付けで単価の上乗せをした。

 財団法人・建設物価調査会の4月の主要建設資材価格動向を見ると、上記のH形鋼の構造用広幅は前月比5・6%、1tあたりの価格は7万6000円、15年4月の価格が4万5000円だったことから対前年同月比68・9%と驚くべく上昇率を示している。

 県の担当課によれば、大々的に多くの鋼材を一気に単価上乗せ措置を図ったことは30年ぐらい遡らないと例がないのではないかと話す。

 県は5%以上の変動を目安に調査しているが、変動に対しての措置は各発注者の裁量に任されており、国土交通省は「1000分の15の%上昇を目安」にしていると言う。また、国土交通省は度重なる土木工業協会、全国建設業協会らの建設団体からの鋼材価格急騰に対応する単価への反映要望に、今のところ「必要性は感じていない」との見解を示している。恐らく、必要があるならば半年、1年後の状況を勘案しその時にスライド条項の適用を視野に入れているのではないか。最近では12年度にスライド条項よりも値下がりによる逆スライドが大きな課題になったことがあった。

 なお、この鋼材価格急騰の最近の動きに対して、全国建設業協会(前田会長)が「鋼材価格の急騰対策」と題した要望書を石原国土交通大臣に提出している。発注者の今後の措置などに対して受注者はしばらく目が離せない。



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