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群馬大学工学部・小葉竹重機教授に聞く/判断基準の策定・災害起こらない県はない

2005/01/15 群馬建設新聞

 昨年7月13日に新潟県五十嵐川流域、刈谷田川流域を襲った集中豪雨により、大規模な洪水災害が発生した。群馬大学工学部建設工学科の小葉竹重機教授(=写真)は、「このような豪雨があれば災害が発生しない県は日本にはない」と話しており、群馬県内における集中豪雨対策の必要性を説いた。今後、県内で必要な防災対策や、その進め方などについて話しを聞いた。

 -昨年は、集中豪雨による大規模な災害が発生してしまいました。一方で、群馬県では被害がありませんでしたが?

「たまたま昨年は群馬県に被害がありませんでしたが、あれだけの雨が降れば災害が発生しない県はありません。温暖化の進行に伴い、局所的に集中して雨が降るスコール的な降雨が今後も増えてくると思われます。今回の新潟県中越地方の災害から学ぶべきところを学び、群馬県内でも充分な対策を取っていく必要があります」

-昨年の災害時には、どのような問題があったと考えますか?

「新潟の災害から学ぶべきポイントは、避難勧告を出すタイミングとそれら情報の伝達手段です。

 中之島町では、避難勧告が出たのが破堤する20分前だったため避難が間に合いませんでした。また、他の地域では避難勧告を知らなかったという住民も多い、住民の意識改革も含め、災害時の情報伝達について考える必要があると思います」

-群馬県ではどのような方向で対策を取っていくべきでしょうか?

「スコール的な雨は、狭い範囲に集中して降ります。小さな流域に降れば、他の地域は平気でも、局所的な災害が発生する危険性があります。

 こういった種類の災害に対して、県などの大きな行政では速やかな対応が難しくなります。市町村レベルで対応できる体制を作っていく事が最も重要ではないかと思います。

 中小河川は出水が早い、自分達の手で災害を予測し適切な避難勧告などが出来る体制づくりが被害を最小限に食い止めるためには不可欠です」

-具体的な進め方は?

「しっかりと準備をしておかないと、いざというとき右往左往してしまう。しかし、最初から各市町村が独自で進めていくには難しい問題。今後は、県を中心に勉強会等を行い市町村単位で対応出来るマニュアルづくりなどを進めていければ良いのではないかと思う。これまでの降雨量と予想降雨量、最大流量などから簡単に流量を予測できる式を決めておけば、充分対応していけるのではないかと思います」

-ハード面での対策は?

「もちろんソフト的な対策と並行して危険度の大きいところから、堤防の改修など順次行っていく事は必要。しかし、予算的な面から全てを短期間に整備するのは難しい。一方、いつ集中豪雨が起こるのか分からない状況もあります。災害の発生は抑えられないにしても、まず、ソフト面の充実を図り、災害が発生してしまった時、いかに人的被害を最少に抑えるかが最重要課題だと考えます」

◇準備会を開催・「洪水氾濫予測勉強会」

県河川課は、群馬県内での洪水対策として「洪水氾濫予測勉強会」を企画、7日に同勉強会開催へ向け準備会を行った。準備会には各土木事務所の職員のほか、群馬大学の小葉竹重機教授が出席した。

 同課が企画している勉強会は、集中豪雨時における洪水氾濫の危険性を予測し、市町村の避難勧告がより的確に行えるよう県、市町村及び群馬大学とともに判断基準の研究・検討するためのもの。

 準備会に先立ち県河川課の湯浅一光次長は、「昨年は新潟県中越地方の集中豪雨など人命に関わる大きな災害が発生してしまった。県民の生活と財産を守るためにも群馬県としても河川事業のより一層の推進が必要だと思います。堤防強化などのハード面に加え、市町村単位で避難勧告がタイミング良く出せるように避難基準の検討を行うなどソフト面の充実を図りたい」と述べた。

 準備会では、同課から今後の進め方などが説明された。今後は、市町村職員も交え検討を進めていきたい考えだ。



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