魚沼市は、中越大震災を教訓に、「安全で安心して暮らせる」まちづくりに向けた指針となる『魚沼市震災復興計画』(素案)を作成した。計画期間は<1>再生期間:平成16~18年度<2>創造期間:平成19~27年度―までを設定。計画では、住宅の再建やこころのケア、地域コミュニティ再生、道路・ライフラインなどを復旧する中で、単なる復旧ではなく災害に強い「魚沼市の創造」を目指す方針だ。
復興への基本理念は、<1>自然への畏敬の念を新たに、自然と共生した災害に強いまちづくり<2>市民が快適な居住環境で、安全で安心して暮らせる生活基盤の整備<3>魚沼コシヒカリなどの特産物や地域資源を活用した産業の振興<4>地域の活力を向上させるために、地域コミュニティの再生<5>市民と行政が協働して震災の復旧・復興―を設定。
基本計画に盛り込まれた主な内容は次の通り。
【生活環境】
◎基本目標=生き生きと暮らせる安全安心な生活空間
◎復旧施策・主要事業
▽道路ネットワークの整備=幹線道路から身近な生活道路までの早期復旧
▽ライフラインの整備=上下水道や都市ガス等のライフラインの早期復旧
▽情報基盤の整備=テレビ共同受信施設の早期復旧支援、地籍調査データの修正
▽住環境の整備=被災住宅等の支援、公営住宅の復旧、環境衛生施設の早期復旧
▽防災施設の整備=河川や自然災害防止施設の早期復旧
◎復興施策・主要事業
▽災害に強い道路ネットワーク=国県道等のルート検討や改良の推進、バックアップ道路の整備、災害や雪に強い道路網の構築
▽安全・安心なライフライン=上下水道、都市ガスの管路・施設の耐震化、上水道各施設の統合等による水源の多重化、新エネルギーの導入、LPG等の相互活用
▽災害に対応できる公共交通の整備
▽情報の共有で安心な暮らし=民間通信事業者と連携した高速通信網の未整備地域や携帯電話の不惑地域の解消、公共施設間における光ケーブルの連結、行政無線の整備
▽安全・安心で愛着が持てる住まい=公営住宅建設、分譲宅地の紹介・斡旋・必要な宅地造成
▽防災力を高め安全・安心なまち=雪崩や地すべり、河川氾濫などの防止、ハザードマップの策定、公共施設に緊急避難所等の災害対応機能の充実など
▽市民の生活を守る迅速な対応
▽生活を支える衛生環境=災害の廃棄物一時保管場の確保と広域的な処理体制の確立で迅速対応
【自然環境】
◎基本目標=自然と共生、みんなで育む魚沼の郷土
◎復旧施策・主要事業
▽みどりの回復で憩いの里山の整備=震災により荒廃した里山と渓流の機能回復
◎復興施策・主要事業
▽豊かな自然と安全で安心な生活=震災による水質汚濁や建物解体による大気汚染などへの対応
▽里山の原風景の再生=里山の修復や天然林の改良などを支援し、自然環境の保全と災害に強い森づくり
【保健・医療・福祉】
◎基本目標=みんなで支える笑顔のある暮らし
◎復興施策・主要事業
▽だれでも安心して暮らせる社会=被災した高齢者世帯等のための集合住宅の整備推進、避難所機能を持つ障害者施設の整備推進
【地域産業】
◎基本目標=活力に満ち特色を持った地域産業
◎復旧施策・主要事業
▽農林水産業生産基盤の整備=農地・農林水産業用施設等の早期復旧
▽商工業の早期再建=被災した店舗、工場などの早期復旧を支援し、経営の再建と雇用情勢の回復を図る
▽観光施設の集客力回復=観光施設の復旧を進め集客力を回復
◎復興施策・主要事業
▽魅力ある地域農業の創造=農地の多面的機能の充実と景観保全で憩いと潤いの農村空間の創造
▽個性と活力のある商店街づくりの推進=地域住民、商店街組合、商工会等との協働による復興と活性化に向けた長期的な方策の検討
▽足腰の強い地場産業づくり=企業の独自製品開発や地域内外の産業交流を支援し地域産業の活性化
▽災害復興の原動力となる雇用の創出と拡大=雇用創出の起爆剤となる大規模企業の誘致と起業や異業種進出を支援し、雇用・就業機会を拡大
【教育・文化】
◎基本目標=ふれあいで創る魚沼の歴史と文化
◎復旧施策・主要事業
▽文教施設の整備=学校、公民館、体育館、図書館等の早期復旧
▽地域の誇り文化財の再生=文化財の被災状況を調査し早期復旧
◎復興施策・主要事業
▽災害に強い文教施設=学校、公民館等に防災・避難所機能の整備
▽震災体験の後世への伝承=震災記録や情報を整理し、震災体験を共有し、安全なまちづくりのために公開活用。被災箇所の学習活動への活用と状況により自然史的な文化財等として保存・伝承
【防災・復興システム】
◎基本目標=ともに支え、ともに高めあう地域のきずな
◎復旧施策・主要事業
▽地域コミュニティ施設の復旧支援=地域コミュニティの拠点である集会施設の復旧支援
◎復興支援・主要事業
▽市民がともに助け合うまちづくり=伝承行事や活性化イベントの支援で被災地域の再生や地域のコミュニティ強化
▽自ら守るまちづくり=防災に関する知識の普及や防災意識の醸成、地域における自主防災組織の設立や自主防災活動への支援、地域における防災拠点施設の整備、支援など