国土交通省の建築基準法改正(案)概要が明らかになった。案では建築確認の構造計算判定機関新設や指定確認検査機関の指定要件強化、建築士等に対する罰則の強化(懲役刑導入)などを掲げている。同省は、現在開会中の第164回通常国会に提出する。
同案は、社会資本整備審議会(同省の諮問機関)建築分科会や構造計算書偽装問題に関する緊急調査委員会の中間報告を踏まえ、再発防止策として提示するもの。耐震偽装事件再発防止や法令遵守徹底により、建築物に対する国民からの信頼回復を目的としている。
改正案概要は次の通り。
◎建築確認・検査の厳格化
▽一定の高さを持つ建築物(木造13m超、RC造20m超)は、指定構造計算適合判定機関(新設)での専門家による構造計算審査を義務化
▽建築確認の審査方法及び中間検査・完了検査の方法について指針を策定
▽建築確認の審査期間を現行の21日から35日に延長(最大70日まで延長可)
▽3階建て以上の共同住宅は中間検査義務化
◎指定確認検査機関の業務適正化
▽損害賠償能力・公正中立要件・人員体制などの指定要件を強化
▽指定確認検査機関に対して、損害賠償能力についての情報開示義務化
▽特定行政庁による指導監督強化=立入検査権限付与、不正行為の際の業務停止命令実施、報告内容に建築確認審査実施状況事項を追加
◎図書保存の義務付け
▽特定行政庁は図書保存義務化
▽指定確認検査機関及び建築士事務所の図書保存期間延長
◎建築士等の業務の適正化及び罰則強化
▽罰則の大幅な強化=耐震基準など実体規定違反は懲役3年・罰金300万円(現行50万円)、名義貸し、構造安全性虚偽証明は懲役1年・罰金100万円(現行なし)、不動産取引の際の重要事項不実告知は懲役2年・罰金300万円(現行懲役1年・罰金50万円)
▽建築士等の業務適正化=名義貸しや違反行為指示等の禁止を法定、違反者の処分を強化。設計・監理下請け契約締結時の書面交付義務化
▽確認申請書に、全建築士の氏名記載を義務化
▽免許取り消し後の再取得可能までの期間を現行の2年から5年に延長(罰金刑を受けた者には延長可)
◎建築士・建築士事務所及び指定確認検査機関の情報開示
▽建築士及び建築士事務所に関する情報開示の徹底=処分を受けた者の氏名及び事務所名称公表、事務所に所属する全建築士の氏名・業務実績を情報開示
▽指定確認検査機関の業務実績・財務状況・監督処分について情報開示徹底
◎住宅売主等の瑕疵担保責任の履行に関する情報開示
▽宅建業者に対して、契約締結時における保険加入有無の説明を義務化
▽宅建業者に対して、契約締結時に加入保険内容記載の書面交付を義務化