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高齢者専用賃貸住宅に本格参入/㈱いっしん・川島代表取締役インタビュー

2008/06/05 日本工業経済新聞(茨城版)

 高齢者専用賃貸住宅(通称・高専賃)の運営に本格参入する㈱いっしん(本社=かすみがうら市稲吉2-18-15)の川島正行代表取締役に今後の事業展開をインタビューした。平成12年から本格的に介護事業を始めて8年。高齢者介護サービスで急成長を続けてきた。生活保護受給者など行き場のないお年寄りを受け入れることで、最後の駆け込み寺によく例えられる。〝リスクをチャンスに〟を口癖に、将来にわたり介護ビジネスプランの確立を目指す。

 

 同社は、介護保険制度が始まった平成12年に訪問介護事業をスタートした。同14年6月からは認知症対応の高齢者を預かる介護施設を始めた。

 認知症を患ったり、体の不自由な高齢者など、特に生活保護受給者を受け入れ信頼を勝ち得てきた。

 現在、グループホーム「いっしん館」14施設(千葉県、神奈川県所在含む)、介護付有料老人ホーム「ハートワン」3施設、高齢者住宅「ここいち」1施設の計18施設を運営。

 これからは新たに高齢者専用賃貸住宅へ本格参入する計画で、昨年着工した水戸市内原に続き、今年度は土浦市神立の仮称・ここいちおおつ野(7月本体建築着手予定)を手始めに、行方市、大洗町など5施設に次々と着工する。

 引き続き、来年度は12施設の建設を計画しており、短期の3か年計画では県外を合わせ1200室から1300室とする計画だ。現在367人のスタッフも段階的に1000人体制に増員する。

 これらは全て国が位置付ける適合高専賃の用件を満たす。お年寄りが安全に住めるバリアフリーの住宅として、様々な介護サービスが受けられる。

 本格参入にあたっては「いっしんグループ全体が協力することで受け皿になれるよう体制の強化を図っていくとともに、介護ビジネスのプランを確立していく」方針だ。

 2015年には希望しても施設に入れない介護難民が200万人になるとの統計が報告されており、これに輪をかける形で病院の療養病床も大幅に削減される。

 こうした中、今後懸念されるのが、在宅での看取り(臨終)が急激に増えていくのに、それを受ける仕組みが未だに出来ていないことだ。

 そこで、今いっしんが考えているのが医療提携型の高専賃。「簡単にいえば病院の隣りに高専賃を建てること。介護を受けながら、具合の悪い時には病院から往診、または訪問看護を受ける。新たなプランとして今立ち上げているところです」。

 施設の利用にあたっては、差別化も視野に入れている。「外国人労働者の増加を受けて、老人の方もスタッフも同じ国籍にする。また、宗教別もあり得ます。もっと考えれば高齢の受刑者です。行くところがないからまた犯罪を繰り返す。ここでも我々がお役に立てるはずです」。

 「経営はスピード」という。事業を未来進行形でとらえて急成長を続けてきた。低所得者、生活保護者、身元保証人のいない人など、社会的弱者を可能な限り受けいれることで、高い入所率と、100%近い利用料金の回収を達成している。

 大切にしていることは、「ものごとの出来ない理由を考えるのではなく、出来る仕組み作りを追求すること。スタッフが楽しく働けなければ、入居者を楽しい環境で迎えることなどできない」。明るく元気で大きな声-を基本に、入居者まで元気にしてしまう環境づくりを進めてきた。

 企業理念にあるのが、『判断の基準に国益を置く』。「人のためになるかならないかというところから物事を考えることにしています。頭で考えるから損得。心に聞いてみることが重要です」。

 振り返ってみると「一生辞められない仕事を始めてしまいました。自分の都合で辞めるわけにはいきません。家業ではなく、すばらしい企業として発展的に維持していかなければいけない」。今後も国民のための介護を目指す。

 会社を走行中の車に例えるなら、「今は国道を通って目的地に向かっている感じですかね。これを早く高速道路に乗り換えようと言っている。高速道路に乗り換えることができるとまた次のものが見えてくるのだと思います」。将来は「医療・介護・行政を一体的にマネージメントすることができたらすばらしい仕事が出来るでしょう」と話す。

 高校卒業後、父親の仕事を引き継ぐ形で型枠大工として社会に出た。少子高齢化を迎える世の中で福祉事業への転身を実現。介護受給者への対応が厳しさを増す中にあって、恵まれない高齢者のために常に模範的な経営を実践している。

 昭和35年12月1日生まれの47歳。東京都出身。かすみがうら市内に母親、夫人、息子と4人で暮らす。

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 今後着工する物件へのお問い合わせは企画管理会社・㈱ケアスター(土浦市神立中央1-1-10第一池田ビル203号、TEL029-804-0852)へ。

 ※参考「仮称・ここいちおおつ野」新築工事の概要は次のとおり。

 【工事場所】土浦市おおつ野8-165-1、2

 【敷地面積】4007・00㎡

 【建設規模】A棟=RC造3階建て延べ2112・45㎡(建築面積691・46㎡)、B棟=RC造3階建て延べ2112・45㎡(同691・46㎡)、厨房棟=S造平家建て延べ112・00㎡(同112・00㎡)

 【工事期間】平成20年7月20日~同21年3月20日(なお、開発行為に関連する工事は、許認可後着工・6月15日予定)

 【設計監理】㈱由波設計(土浦市中神立12-1)



【写真=インタビューに応える川島社長】

今後の事業展開について語る川島社長004868.JPG

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