国土交通省が12日に都道府県と政令市に要請した建設業における緊急総合対策の中には、「歩切りによる予定価格の不当な切り下げは厳に慎む」よう盛り込まれている。担当の建設業課入札制度企画指導室では、要請した全8項目のうち、歩切り禁止と予定価格事前公表取り止めを特に強調したい2項目として挙げている。
一般的に歩切りとは、予定価格をセットする際に、実際の積算から根拠なしに数パーセントをカットしてしまう行為を指す。6月に開かれた自民党品確議連総会でも、歩切り問題について発言する議員は多かった。「歩切りで浮かせた金額をどうしているのか調べるべき」「歩切りは建設業法違反ではないか」と、総務省と国交省に対して厳しく対応するよう求めた。
同省の発注部局幹部は「歩切りとは値切ること。県や市といった公の組織が値切るという行為をして良いのだろうか。公的な機関は適正価格で調達するべき。理屈なく値切ることは、倫理的にみてやるではない」と述べている。
ただ、一般競争では応札参加の義務付けがないという観点から、単純に歩切りは悪と断じることは難しいという意見もある。地方公共団体は予定価格を事前公表しているケースが多く、かつ入札参加が義務付けられていない一般競争の場合、例え歩切りされていようが、その予定価格を納得した上で入札に応募しているのだろうという考え方がある。
例えば指名競争において、発注者から指名されて応札し、歩切りがあったから辞退したというケースにおいて、発注者がその会社を次回以降は指名せずに入札参加させないといったことがあった場合。これは、発注者による優越的地位の濫用と言える。
歩切りをする発注者の意識は、目先の工事1件1件で値切って調達することのみにあると言えよう。そこには長期的な視点が欠如しており、1件1件の積み重ねが、結果としてその地域を代表する優良建設業者の経営環境を苦しめ、最悪の場合は倒産につながってしまうという発想がない。
圧倒的に発注者が強い環境で「一般競争への参加は自由意志」という論理は通用しないのではないか。地域に根差し、地域の公共工事しかフィールドがない建設会社も多いのである。