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建設トップランナーフォーラム/地元の資源の活用がかぎ

2008/09/10 本社配信

 温暖化対策など環境問題に対する関心や危機意識が国際的に高まっている。また、新興国の発展や原油高騰によって限られた資源の有効活用が懸案となる中、環境ビジネスに対する期待が膨らむ。複数省庁にまたがる規制の網の中、ビジネスモデルの構築に向けて企業の模索が続いている。


[コンプライアンスを徹底]


 佐々重土木(宮城県登米市)は、平成17年、塩ビ管などプラスチック類のリサイクル事業へ参入した。「循環型社会の実現と地域社会への貢献を目指した」と、同社の佐々木秀敏専務は目標を述べた。

 当初は廃棄物の収集に苦労した。しかし、排出事業者の声に耳を傾け、提案と対話を徹底することで徐々に信頼関係が生まれ、事業は軌道に乗り始めた。

 プラスチック類は種類が多く、外観から材質を判別できないものが少なくなく、従業員教育の徹底が欠かせない。CSR経営の確立やコンプライアンスの徹底順守にも力を入れている。


[身近な地域で再利用]

亀山(長野県上田市)の亀山照一社長は、「明治24年に創業し、先代までは本いぶしの瓦を作っていた」と、瓦に対する思いを話す。同社では、廃瓦の有効利用を目指し、破砕機の開発に取り組んだ。

 「屋根屋の作った機械ということで、初めは誰も相手にしてくれなかった」。そこで、機械の購入者やNPO、一般の人を交えた「テコラ会」というリサイクルネットワークを立ち上げた。

 亀山社長は「身近な地域で資源を再利用するビジネスモデルにより、プラントの出荷が増えている」と話した。


「現場の安全向上」


 ハットリ工業(佐賀市)は、アスベスト除去現場の安全性を高めるため、アスベスト計測機器の開発に取り組んだ。従来のPCM法(粉塵測定法)に代るものとして、リアルタイムに測定でき、小型軽量なFNM‐ME(ファイバー・ネットワーク・モニター)を開発した。

 豊田哲郎テクニカルディレクターは、「リアルタイムに監視し、万が一検出されれば消火剤を撒き、すぐに飛散を防止できる。かつて、毒ガス検出にカナリアを使ったが、カナリアのような存在になるのが目標」だと述べた。


「火山灰土で温暖化対策」


 ジーアイシー(鳥取県倉吉市)は、地元中国地方の最高峰・大山の火山灰土を使ったパネル型屋上緑化基盤材「大山グリーンテフラ」を開発した。

 テフラは、ギリシャ語で火山灰の意。軽石を含み、軽量、高含水比という性質がありながら処分される、火山灰土の建設発生土を有効活用した。

 小型・軽量で、段ボールに詰めてエレベータでも運べる。加工・施工も簡単。この性質を生かし、神戸市のデパート屋上の緑化にも使われた。「地域資源を使った製品を全国に広め、地球温暖化防止に役立てたい」と桜井博幸社長。

  ◇     ◇

 アドバイザーの野田勝・国土交通省建設副産物企画官は、「原材料費が上がり、今まで採算が合わなかったものがビジネスになる可能性が出てきた」。一方で、「コンプライアンスは、環境ビジネスに関わる重要なキーワード。いいかげんであれば環境ビジネスは成り立たない」と述べた。

 (日刊建設工業新聞〓梅林浩卓)



 写真〓大山グリーンテフラの施工状況(ジーアイシー)



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