国土交通省の金子一義(かねこ・かずよし)大臣は、平成21年の新春を迎えるにあたり、日本工業経済新聞社が加盟する同省建設専門紙記者会のインタビューに応じた。金子大臣は2次補正予算と21年度予算に関して「雇用対策」と「地方」が二本柱になるという見方を示し、予算で盛り込まれる施策を着実に実行することの重要性を述べた。また現在の厳しい経済情勢における建設業対策として、昨年11月からスタートした「地域建設業経営強化融資制度」などを挙げ、今後の普及が重要という見解を示している。
―今後の地域づくり、国づくりの方向性について。
金子 今、全国の景気が冷え込んでいる。地方と都市部との格差が拡大し、特に地方は金が回らない。地方の建設会社、不動産会社は苦労されている。5日から国会が始まるが、2次補正予算と21年度予算で盛り込まれる施策を着実に実施していきたい。「雇用対策」と「地方」が二本柱になる。雇用対策は、公共事業関係で活用されていくことが、かなり出てくると思う。公共事業がそれなりの雇用を担う。全国的に景気が冷えているが、住宅と公共事業が受け持つ分野は重要な部分で、大きなテーマのひとつだと思う。また国づくりでは、広域的な基幹インフラである高速道路網をきちんと整備していきたい。また災害に備えた事業に取り組まなければいけない。公共事業は悪でもなく、無駄でもなく、国際競争力を持てる港湾・空港整備もきちんとやりたい。
―入札契約制度のあり方について。
金子 安ければ良いだけでは、決してない。適正な利益が確保できる入札制度にしたい。私は、予定価格の85%を切れば、どこかで工事の手を抜いているか、下請に赤字を押し付けていると思っている。国の発注はかなり総合評価が進んできたが、地方はまだ。都道府県と政令市は全団体が導入している。市町村は19年度の24%から、20年度は42%に増えている。一般競争と比較すると、まだ不十分。もう少し広げていきたい。また、予定価格の事前公表を止めたらどうかと提案してきたが、それも徐々に進んできている。
―現下の経済情勢における建設業対策について。
金子 地域の建設業を取り巻く経営環境はかつてない厳しい状況にあると認識している。建設業は国内総生産、総就業者数に対する割合が約1割の基幹産業であり、公共投資への依存度が高い地方部においては、雇用の中心的な担い手。中小企業庁のセーフティネット保証制度の活用や、11月から始めている、請け負った公共工事を担保にする地域建設業経営強化融資制度の実施による資金調達の円滑化に取り組んでいく。新融資制度は、11月だけで100件ほどの応募があった。始まったばかりなので、これから活用してもらいたい。
―観光立国に向けての必要なインフラ整備のあり方について。
金子 国内観光、国際観光の振興のいずれにおいても、良好な景観の形成や、空港、港湾、鉄道、道路など、観光旅行者の来訪の促進に必要な交通施設の整備を進めていくことが重要。無電中化や歴史まちづくりなどを通じて、ハード面を含めた地域の総合的な魅力向上に取り組むほか、大都市圏拠点空港の整備・活用を推進している。無電中化は、いろいろ工夫して、観光地として売り出すところはやりやすいような仕組みを考えたいと思っている。観光地を目指し、地中化をやってほしいという市町村は手を挙げてほしい。観光地の受け入れ態勢、魅力を掘り下げていくことは、ハード部分も含めてやっていきたい。
【写真=雇用対策が柱と話す金子国交大臣】