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見直したい現行制度/現場説明会と指名競争

2009/05/12 本社配信

 国土交通省は今年度、現場説明会を試行的に復活させる方針を打ち出している。現説は、入札参加者が一堂に会することが談合を助長すると問題視され、平成14年4月に廃止されていた。ただ、総合評価方式による発注が定着した昨今、当該現場に対して受発注者間で共通認識を持つことは、良い技術提案を引き出すためにも必要不可欠と言える。

 現在でも、現場に関する入札参加者からの質問をペーパーなどで受け付けて、その回答を契約窓口に張り出すといったやり取りはしているものの、現説の場で対面してのクイックレスポンスとは、雲泥の差だろう。また受注者側との技術対話は、発注者側職員の力量向上にも寄与すると思われる。現場に関する質問に対して「わからない」と回答するわけにはいかないのだから、当該現場に向き合う姿勢から違ってくるだろう。

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 現説のほかにもう一つ、「談合防止」を錦の御旗に廃止されてしまったものとして指名競争入札が挙げられる。「談合=悪」であるならば、談合そのものを取り締まればよいわけで、「助長の恐れ」から制度全体を変えてしまったことが、果たして本当に良かったのか。それでは、「交通事故=悪」だから自動車をなくそうといったロジックと同じではないか。

 さらに言えば、競争入札に際し、相手が誰なのか、あるいは何名いるのかが見えないことが、どれほど当事者に精神的負担をかけているのか、発注者は再考する必要があるのではないか。

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 本来の適正な競争とは、相手の顔が見え、強力なライバルであれば全力でぶつかる。あるいは、この案件は諦めるなどの経営判断を伴うものとも言える。現説と指名競争を廃止している現状は、何名いるかわからない、かつ見えない相手と競争しているのである。

 心底から受注したいと考える案件では、最強の相手が参入していることを想定し、極限の値で応じているのが現実ではないか。

 現説復活への道筋が見えてきた今、指名競争についても考え直す価値はある。民間の調達では、長年の信頼関係や実績を前提にした、指名競争の概念が主流と言える。

 指名競争と現説がなくなり、ライバルがまったく見えない。そうした競争を受注者側に強いている時点で、既に甲乙の重大な片務性と言えるのではないだろうか。

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