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トンネル規模を拡大/200億円規模の矢上川地下調整池事業

2009/05/30 日本工業経済新聞(神奈川版)

 県は、鶴見川水系矢上川の時間降雨量六〇㍉への対応として、地下調整池の建設を計画しており、二〇年度の詳細設計(立坑、貯留池)を経て、二一年度では、越流堰の詳細設計を行うとともに、越流堰及び立坑箇所の用地買収に着手する予定である。

 場所は、川崎市宮前区梶ヶ谷他の地下で、計画では、洪水を取り込む越流堰及び立坑二箇所を設置し、貯留トンネルを建設する。

 立坑は、JR貨物梶ヶ谷ターミナル駅付近の発進立坑と、野川東住宅対岸の農地の中間立坑の二箇所。

 貯留トンネルについては、二〇年度で実施した水理模型実験の結果、延長約四㌔㍍、直径約八・五㍍、貯留量約一九・五立方㍍と、規模を拡大変更している。工法はシールド工法。

 計画では、発進立坑から中間立坑までのトンネル区間を先行して施工するとともに、中間立坑に隔壁を設置して暫定供用を行う方針である。

 鶴見川流域は、平成一七年四月に特定都市河川浸水被害対策法の「特定都市河川流域」に全国第一号として指定され、「流域水害対策計画」が策定された。また、河川法に基づく新たな整備計画として、「鶴見川水系河川整備計画」が策定され、いずれの計画においても、矢上川では時間降雨量約六〇㍉に対する整備目標が示された。

 既に全川にわたり五〇㍉対応が完了している矢上川で、新たな整備目標を達成する上では、人家が密集していることや、広範囲にわたって河床の直下一㍍に水道管が埋設されていることから、河道拡幅や河床掘削等の整備工法では、多くの時間と費用を要する。また地上の洪水調整地を設置するには、流域の開発が進んでいて適地がない。

 こうしたことから県は、工事期間が短く早期に治水効果が発揮できること、地域環境への影響が少ないことや施工性、経済性などを総合的に検討した結果、地下に洪水調節池を設置する方法を採用した。

 総事業費は二〇〇億円規模になると見込まれる。発注機関は川崎治水事務所。





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