記事

事業者
国土交通省

全土木工事で実施へ/総価契約単価合意方式/品確懇生産性向上部会で提示

2009/12/04 本社配信

 国土交通省は3日に公共事業品質確保懇談会の第1回生産性向上検討部会(福田昌史部会長)を開き、総価契約単価合意方式を原則すべての土木工事で実施する方針を明らかにした。受発注者の労力を軽減する観点から、事務所発注規模の案件では、請負者の希望により、落札率を乗じて単価を包括的に合意する「単価包括合意方式」も可能にする。また施工プロセスを通じた検査は来年度の導入方針として「難易度が高く、工期の長い大規模工事で実施」することを説明した。






 3日の部会では「発注者と受注者のコミュニケーション強化」と「施工プロセスを通じた検査の円滑化」について議論した。

 国交省はコミュニケーション強化の取り組みとして▽三者会議▽ワンデーレスポンス▽設計変更審査会▽設計変更、一時中止ガイドライン▽ASP(情報共有システム)▽施工効率向上プロジェクト推進期間―を説明した。

 また、総価契約単価合意方式の本格導入に向けた検討状況を報告。会計検査院から先月、前工事と後工事の予定価格について指摘されたことも踏まえ、原則としてすべての土木工事(前後工事含む)で実施することを報告した。

 具体的にはレベル4(細別)で単価を個別に合意する「単価個別合意方式」を基本とする。ただ事務所発注工事に関しては、落札率を乗じて単価を包括的に合意する「単価包括合意方式」も運用する。

 國島正彦委員は三者会議や設計変更審査会などの取り組みに対して、「ズブズブの概算発注になっている」ことがそもそもの原因とした。また「割り算の総合評価(除算方式)は一種の騙しで、百害あって一利なし」と断じ、工事代金の毎月払い導入も主張した。設計変更の問題については田崎忠行委員も「発注時点できちんとした設計図書を作るのに尽きる」と主張した。

 木戸健介委員はASPについて「監督職員が足りないのだから、ASPで監督体制が充実していく形で運用してほしい」と注文した。土工協の本庄正史委員は「設計変更ガイドラインは完備されているが、最前線の現場の職員に周知徹底されていない」と発言した。

 全建の桑原茂雄委員は「今の現場には決断する人がいない」と話し、根本的な問題として「現場力の欠如」を挙げた。

 一方の施工プロセスを通じた検査に関しては、国交省が受注者側のメリットとして「受検準備作業の軽減」や「不合格リスクの軽減」を説明した。さらに企業会計基準の改定(工事進行基準の強制適用)に対応可能で、各期末毎に複数に分けて売上高を計上できる点も強調した。

 ただ、これまでの試行で「監督業務と品質検査員による確認業務の役割と責務が不明確」といった声がある。また既済部分検査の準備と対応が面倒という認識から、施工プロセス検査とセットで適用される出来高部分払いが実施されない、という課題を認識している。

 同省ではこれらを解決した上で、22年度は①監督業務における現場の確認業務である「指定材料確認」や「段階確認」の多い工事②検査業務の平準化を図ることが有利な構造物などの難易度の高い工事③キャッシュフローの効果が大きい、、大規模で工期の長い工事―で導入することにした。

 國島委員は「国際的にみると、監督は発注者がやることではない。皆さん(発注者)の本来の仕事は広い意味での検査。請負なのだから、監督、品質管理は元請がやるので、やらなくても良いことをやっている。バッティングするのは当たり前」と語った。

 さらに「日本の公共工事の特徴として、発注者が根本的な部分で民間を信用していない」と話し「今の検査システムは基本的に人を信じていない。これから、人を信じる方にシフトするのか、(情報化施工により)機械で勝負するのかの決断。人を信じる方に舵を切っていただきたい」と要望した。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら