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国土交通省

設計ミスの責任分担/グレーゾーンを明確化へ/照査・検査あり方見直し

2010/09/27 本社配信

 国土交通省は本年度、設計業務に関する受発注者の責任分担を明確化する方針を固めた。設計ミスに関する責任があいまいという現状を認めた上で、グレーゾーンとなっている部分を明確に役割分担することが必要と判断した。照査・検査のあり方を見直す方向で検討を本格化させる。業務の品質確保を向上させる新たなシステムについて、年度内にたたき台を示す。







 国交省は24日に開いた調査・設計分野における品質確保懇談会(座長=小澤一雅・東京大学大学院工学系研究科教授)で、本年度の検討テーマの柱に「設計成果の品質向上対策」を掲げた。

 同省が設計成果品の責任に関するグレーゾーン部分を明確化する方針を固めた背景には、近年、設計ミスの増大が指摘されていることがある。

 土工協が建設現場に実施したアンケート結果では、国交省発注工事で設計業務の成果に「設計の不具合」が発生したのは51%に上っている。

 こうした事例からも設計成果の品質向上対策は喫緊の課題だが、設計ミスに関する責任のグレーゾーンが発生した背景には、発注者と建設コンサルタントとの役割の変遷がある。

 昭和30年代までは、発注者自らが設計を実施していた。その後、高度成長期の工事量激増などによりマンパワーの面で追いつかなくなり、昭和30年代~平成7年までは、設計・計算などの作業を建設コンサルタントへ委託しつつも、主体は発注者という時代が続いた。

 大きな転換点は、平成7年6月の土木設計業務等委託契約書の改正だ。そこでは受注者の自主施行の原則が明確に規定された。

 発注者が示す設計条件に基づき建設コンサルタントが設計を実施。成果物を発注者の期待通りに完成して引き渡すことが受注者本来の責務となった。

 建設コンサルタントの自主性と責任が明文化された一方、発注者は適切な受注者の選定、的確な設計条件の明示が重要になった。

 そもそも建設コンサル案件は「請負」なのか「委任」なのかも明確化されていない。このため例えば、詳細な構造計算部分に関するミスの責任が受発注者のどちらにあるのかが、あいまいになっている。

 現行でも、設計業務成果の技術的な品質を確認する行為として受注者が行う「照査」や、契約上の業務内容をすべて履行しているか否かを発注者が確認する「検査」はある。ただそれらについて、契約書や業務実施方法の実態に即したあり方の検討が必要と判断した。

 24日の懇談会で建コン協の委員は「設計ミスの問題は最重要課題。建コン協でも委員会を設置し、関東、中部、近畿整備局のミスの事例を抽出し原因を調べ、対策を検討している。8月末に中間報告もとりまとめた。二重三重の照査体制を確立すべき」と述べた。

 横山晴生技術調査課長は「どちらの責任なのかをもう少しはっきりさせる」と述べ、今年度中に方向性を示す考えを明らかにした。

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