自民党シャドウキャビネット行政刷新チームが昨年12月に行った国土交通省所管の資格に関するヒアリング。これを中心となって進めていたのは、同チームでリーダーを務める河野太郎衆議院議員だ。ヒアリングでは、資格の概要や試験・講習などについて国交省の担当者から説明を受けた河野氏が「天下りを食わせるための資格講習は認めない」と強く発言する場面も見られた。また修了考査が設けられていない講習については「寝ていても足りる」と厳しく指摘していた。資格の仕分けを計画する河野氏に、自身の考えや今後の展開について聞いた。(聞き手・本社 市成純)
―資格のどんな点を問題視しているのか。
河野 元々のスタートは、独立行政法人・公益法人の仕分けをした時に「資格ビジネスじゃないのか」と思うものが結構あった。やけに高い受講料を取って業務独占に近い資格を出しているとか、何年後に講習を受けて下さいとか、単に独立行政法人や公益法人を食わせているだけのようなものがあった。それと「多くの資格を取らなければならない」という声が地元(神奈川・15区)の建設業者からあった。例えば信号機の工事は12個くらいの資格がないとできないという。それで、どんな資格が必要とされていて、それに幾らの費用がかかるか調べようと思った。建設業者からは「講習に行ったけれど寝ていれば良いような場合があって、時間の無駄だよね」という話もあった。ひどい所では講師が最初に「寝ても良いけどイビキはかかないで下さい」と言う場合があったらしい。こういう講習は意味があるのか。やっぱり日本の経済は規制が多すぎる。これからの規制緩和・自由化の時に、この資格の問題は出てくるのではないかということで調べることにした。
―仕分け対象は国交省所管の資格だけなのか。
河野 国交省所管の資格だけでもたくさんあるから、まずは国交省。ただ、厚生労働省や経済産業省の資格と重なっている場合があるので、各省をやらずに国交省だけだと落ちてしまうものがある。厚労省、経産省までは一緒にやらないと駄目かなと思う。今は厚労省に資格の一覧を作ってもらっている。頼んでから数カ月は出てこないが、仕分けは今年度内にはやりたい。
―講習は修了考査があれば問題ないのか。
河野 そういうことでもない。5年ごとの講習は「法律が変わるから5年ごと」と言うけれど、講習の翌月の法改正には対応していない。資格を持っている人がいかに法改正の情報を手に入れられるかということが大事で、5年ごとにまとめて勉強してくれと言うのは違うのではないか。
―講習を毎年やれば良いのか。
河野 受ける側の負担を考えると、毎年やるほどでもない。そこは「プロなんだから自分で勉強しろ」と言うのが正しいと思う。
―では講習を廃止してしまえば良いのか。
河野 そこは検討の必要がある。
―講習を廃止した場合、資格者による業務の質を維持できなくなるのではないか。
河野 更新講習の多くは修了考査がなかった。だから講習があったから維持できているというのは疑問。5年に1回、何時間か寝ていて質を維持できるほど世の中は甘くないだろう。
―講習の多くは資格者の質の維持に影響していないということか。
河野 影響しているかどうかは、やっている側が示さなければ駄目だと思う。少なくともヒアリングでは、そういうデータは出てこなかった。講習をやっているのは天下りがいるところで、その人数が多い所ほど受講料が高いという相関がある。そこは相当うさんくさいと思う。
―CPD(継続教育)の単位取得も業者の負担になっているようだが。
河野 徹底的に全部やる。CPDも充分、突っ込みに値するでしょう。相当悪質だと思う。
―ヒアリングでは、必要ないと判断された資格も複数あった。
河野 ターゲットの1つは更新手続き。監理技術者資格者の5年ごとの更新はなぜなのか。宅建(宅地建物取引主任者)も自分で勉強すれば良い。マンション管理士と管理業務主任者は同じような資格で、浄化槽の資格もたくさんあるが、やっている天下り団体が異なる。都市計画と宅地造成は、同じ試験で2つ取れるというのもおかしい。溶接は3年ごとに講習があるが、本当に3年ごとにやる必要があるのか。
―資格を廃止する場合は、他の資格で廃止資格の業務を補うのか。
河野 そういうことですね。本当に資格をたくさん取る必要があるのか、実情を調べてしっかりやりたい。
―仕分けで問題を指摘した資格に対しては、どのように是正してもらうのか。
河野 「これはおかしいのではないか」と政府に問題提起を提言する。さらに議員立法で法改正案を出す。
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河野太郎氏(こうの・たろう)1963年生まれ。米国ジョージタウン大卒。富士ゼロックス勤務などを経て96年に神奈川15区で初当選。現在は衆議院決算行政監視委員会筆頭理事、自民党シャドウキャビネット行政刷新・公務員制度改革担当チームでリーダー役を務める。当選5回。