国土交通省が国際部門の組織強化を図るために新設した国際統括官ポストに、7月1日付で前田隆平(まえだ・りゅうへい)氏が就任した。同省の国際業務を横断的に統括するポストで、同じく新設された海外プロジェクト推進課、国際政策課などを指揮していく。前田氏に抱負を語ってもらった。
「国際統括官に就く前の政策統括官の時代も国際問題を担当していた。そういう意味では今回、具体的に新しい何かをどうするということが特にあるわけではない。ただ総合政策局の国際部門が、今まで参事官4人体制でやっていたのを、2課長・4参事官体制に強化された。トータルで国土交通省として国際問題についての取り組みを強化していくことが、新組織発足の趣旨。今までやってきた業務の継続の上で、全体として取り組みを強化していく」
「国際業務は、大きく分けて二つの柱がある。一つは、諸外国との連携、調整業務。例えば環境問題、CO2問題などのマルチの会議。それからドイツのライプチヒで開催し続けている国際交通大臣会議で、来年は日本が議長国なので、それに向けて、フォーラムなども積極的に取り組んでいく。こういった交通問題での各国との連携調整などがある。もう一つの柱が、協力業務。ODA予算に基づいて各国に対してインフラ建設を支援していく。また海外のインフラ展開で、官民協力して、日本の技術を移転し、各国に貢献すると同時に、日本のビジネスも支援していく」
「二つの柱の業務を強力に推進していくことになるが、それぞれのニーズをしっかり把握した上で、限られた予算の中でどうやって効率的に各国との連携を進めていくかがポイントになる。ODAは要請ベースなので、各国から要請が来た時に優先順位を決めてプロジェクトを実施していく形。先方の実情がどうなっているかを踏まえた上で、優先順位を決めて、一番効率的な協力を行っていく。国によって実情が違うので、ニーズの把握がポイントになってくる。基本的に経済が発展していく上で、国土交通インフラは極めて重要。道路、鉄道、港湾など。今の経済状態がどうなっていて、その国において、どのレベルのどのインフラが必要かということを見極めることが大事」
「海外でのビジネスは民間企業にしてみると、(国内と比べて)明らかにリスクがある。そこは民間企業の分析もしっかり聞かなければいけない。海外でもそれなりに堅い仕事で、貢献もできるし、儲かる面もあるのであれば、当然乗ってくる。また今までに比べて多少のリスクはあるにせよ、これからは海外展開の時代ということで、動きは活発になっている。パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合という会がある。その下に局長、審議官級の幹事会があり私も出席しているが、その都度、テーマを決めていて、水、鉄道などをやってきた。また分野別のほかに国別でもやっており、インドネシア、ベトナムなどで、各省のインフラ案件がある」
【略歴】
昭和29年生まれ。57歳。東大法学部卒。昭和52年運輸省入省。国土交通省大臣官房審議官(国土計画局)、同(総合政策局、航空局)、航空局長、政策統括官などを歴任。
【写真=初代の国際統括官に主任した前田隆平氏】