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(社)千葉県空調衛生工事業協会

空衛協と県土整備部が意見交換会/分離発注の推進や入札制度、契約手続きなど

2011/11/11 日刊建設タイムズ

 (社)千葉県空調衛生工事業協会(下福康之会長)と県県土整備部との意見交換会が10日、千葉市内のホテルポートプラザちばで開かれ、分離発注の推進や総合評価方式による入札制度、工事発注、契約手続きなどについて意見を交わした。

 両者による意見交換会は、昨年に引き続き第2回目となり、この日は総勢27人が出席した。

 議事に先立ち、主催者を代表してあいさつした下福会長は、まず、同協会がこれまで「建築設備工事の分離発注の推進」を主な目的に、県や県下市町村に「陳情活動」を行ってきたことに加え、「大型物件はほぼ分離発注される」という神奈川県の情勢に言及。

 協会として、陳情活動だけでなく、工事の発注機関である県土整備部との入札・契約制度や建設業法の運用面に至るまで幅広く意見交換を行い、その中で得ることのできる有益な情報を少しでも会員企業に還元し、事業に生かすことを目的としたこの日の意見交換については、「県土整備部から有意義な回答や情報を頂ければ、会員企業の力になると思う。今後とも、皆さんの暖かいご指導とご理解を賜りたい」と述べ、あいさつとした。

 引き続き、県土整備部を代表してあいさつした色部剛史・次長は、東日本大震災に関連する県土整備部の9月補正予算について、「震災対策を中心として約38億円の予算の増額を行い、補正後の予算が1377億円となった」としたうえで、「緊急に予算計上したため、金額については今後の精査が必要となるが、前年同期と比べて18.3%の大幅な伸び」と説明。

 また、現在、県が取り組んでいる耐震改修をはじめとする県有施設の整備等に伴う予算として、今年度で67件、約14億円を確保したことを報告。

 さらに、「空調衛生工事業は人々の快適な環境を確保し、豊かな生活を送るうえで大変重要な役割を担っている」と指摘した氏は、「今後とも県民の暮らしやすい環境づくりに、より一層ご尽力頂くよう、改めてお願い申し上げたい」と述べ、あいさつとした。

 この日の意見交換会では、まず、県土整備部からの報告事項として、「入札・契約制度の改善」「災害復旧事業の早期復旧に向けた手続きの簡素化」「東日本大震災に伴う災害復旧工事等の前金払の特例」などを各課から説明。

 引き続き、空衛協側から、①分離発注の推進②入札制度③工事発注、契約手続き④工事の施工等⑤その他――に大別した質問・要望事項に対し、県土整備部側が回答するかたちで進行した。

 「コストオン方式」の導入も

 このうち、分離発注の推進において空衛協では、県に対して、国の補助金・助成金による特別養護老人ホームや保育園などの社会福祉施設等の建設にあたり「どうしても分離発注が難しい」という発注者に対して、「コストオン方式」の導入及び指導を要望。

 コストオン契約は、発注者が専門工事会社を指定して工事金額を取り決め、統括管理費用を上乗せ(コストオン)し、元請会社と工事請負契約を締結する契約方式で、専門工事会社にとっては工事金額と責任が明確になるメリットのある契約方式として注目。

 上部団体にあたる(社)日本空調衛生工事業協会の経営活性化委員会入札・契約制度部会では、コストオン契約の留意点について整理・検討し、その内容をパンフレットにまとめている。


 【分離発注の推進について】

 (1)関東地方整備局や県当局において、原則分離発注して頂いていることに感謝申し上げる。しかし、県下市町村においては、いまだに一括発注を続けている自治体がある。協会でも一生懸命に陳情活動を行い、県内自治体に分離発注の推進をお願いし、分離発注への理解を得るために努力しているところであるが、県土整備部においても「分離発注の推進」について、引き続きご指導頂くようお願いする。

 また、現在ほとんどが一括発注で行われている県や、国の補助金・助成金による特養や保育園などの社会福祉施設等の建設については、「どうしても分離発注が難しい」という発注者には、「コストオン方式」での発注を指導頂くようお願いする。

 現在、当協会では会員からの要望が大きい、①九十九里医療センター②千葉ニュータウン小学校③松戸市民病院――の3件について、特別な案件として会長自らが出向き、各市町村長や各組合に分離発注の陳情活動を行っている。このうち九十九里医療センターについては、(社)千葉県電業協会と一緒に分離発注のお願いをしている。

 「前向きに検討する」という答えは頂いたが、「分離発注にする」といった明確な結論を頂いていないのが実情。

 〈県の回答〉

 県としても、県内建設業者の育成機会の確保は大変重要な課題と認識しており、土木・建築工事について技術的な内容を考慮し、専門工事の発注を検討するなど、可能な限り分離発注するよう努めている。

 市町村等がどのような方法で発注を行うかは、地域の実情や工事の難易度などを踏まえて、各発注者が自ら決定すべきものと考えているが、県における分離発注の考え方については、「千葉県公共工事契約業務連絡協議会」という説明する場を設けて情報提供している。補助金等を担当する関係各課からの相談についてもアドバイスしている。今後とも必要な物件は適切に実施していきたい。

 【入札制度について】

 (1)市町村の入札参加申請書や入札書類等、書類様式の統一と各種書類の電子データ化の促進を望む。

 〈県の回答〉

 県では行政業務の効率化や情報化への対応、電子自治体のサービスを県民が幅広く受けられる共同利用について、今年4月から千葉県電子自治体共同運営協議会を組織し、電子調達システムの供用を開始している。現在、県及び市町村の合わせて計39団体が利用しており、入札参加申請の窓口及び共通する申請書類の様式の統一、電子入札の導入を図っている。

 2013年度からは館山市など4市町が参加を表明しており、その他の未導入団体についても、いくつかの団体が協議会で一緒に対応していくと聞いている。今後も千葉県電子自治体共同運営協議会において、千葉電子調達未納入団体に対し導入を図っていきたいと考えている。

 (2)総合評価方式について、企業の施工実績を過去10年間を15年間にして頂きたい。

 〈県の回答〉

 企業の施工能力として求める過去10年間の同種工事の施工実績は、企業が持つ施工能力を適切に評価しようというものであり、「同種工事の実績のある企業は、同種の別工事においても適切に施工できる」という考え方に基づき決定している。

 入札参加資格要件では、公共事業費の減少に伴い企業の保持する実績が減っていることや、工事実績情報サービス、いわゆるコンリンズなどで確認できる期間などを考慮し、工事実績の対象期間を各15年間としている。

 総合評価では、加点の対象としなければならないことから「10年」に絞っている。従って、これは資格要件と総合評価基準とが連動することから「15年」にするのは中々難しいと思う。対象期間の見直しは考えていない。

 (3)企業施工実績と配置予定技術者への同種工事の実績を求めているが、当然、実績を有する技術者はベテラン技術者になり、若い技術者の排除につながってしまう。会社の施工実績と国が認定している一級施工管理技士の資格があれば、施工能力は図れると思うので、「配置予定技術者の能力」項目は必要ないのではないか。

 〈県の回答〉

 配置予定技術者の能力の各項目は、公共工事の品質確保のためには、企業のみならず、個々の技術者の能力も重要であるという観点から設定している。主任技術者資格の評価項目については、ガイドラインでは、入札参加資格要件で設定した場合は評価の対象としていない。

 ただ、過去10年間の同種工事の施工経験の評価項目は、資格の保有のみでなく、「同種工事の実績がある技術者は適切に施工できる」という考え方に基づき設定している必須の評価項目であり、当該技術者を輩出する予定の企業に対して加点し、工事品質の確保や向上への重要な項目だと考える。

 配置予定技術者の同種工事の施工経験としては、主任技術者としての経験のみではなく、現場代理人としての経験も認めている。従って、若手技術者の育成にも考慮している。

 (4)千葉県発注工事はA、Bのランク分けがされているが、各発注機関若しくは土木事務所管内においては、その地域性、専門性を考慮に入れて発注ランクを決めて頂きたい。

 〈県の回答〉

 県発注工事の指名業者については「千葉県建設工事指名業者選定基準」により選定している。選定にあたっては、技術的適正や指名及び受注状況とともに、地理的条件や地域貢献といった地域性も勘案している。今後とも適正な運用に努めていきたいと思う。

 【工事発注、契約手続きについて】

 (1)改修工事等の内訳書項目で一式計上されており、図面では判断できない足場・養生・ハツリ補修等の数量を示して頂きたい。(数量や仕様について、極力一式ではなく)

 〈県の回答〉

 国土交通省監修による公共建築工事標準仕様書に基づいて行っており、それによると柱等の仮設は細目別ではなく一式計上となっているため、数量は示していない。要望に対しては、図面により仕様と数量が出来るだけ判断できるよう努めていきたい。

 (2)庁舎改修工事の入札物件に、積算基準・歩掛かりのない工法を選択された物件があったが、その工法の積算にあたり、工事単価の算出が出来なかった。今後、そのような場合は、積算基準の事前公表等考えて頂きたい。

 〈県の回答〉

 基本的にはそういった積算基準や歩掛かりがある工法の選択を考えているが、積算基準・歩掛かりのない工法等をどうしても使用しなければならない場合については、いわゆるメーカーや専門業者から見積書を徴集して、それを参考に価格を算出している。それも踏まえたうえで対応を考えて頂きたいというのが、私どもの対応である。

 【工事の施工等について】

 (1)近年増加している改修工事における撤去工事に伴うアスベスト除去処理工事について、受注後の調査となると工程に大きく影響してしまい、追加業務にも大変になるため、設計段階で調査を行い、発注時には除去処理工事として計上して頂きたい。また、各市町村へのご指導もお願いしたい。

 〈県の回答〉

 今年度発注の解体及び改修工事については、設計段階でアスベスト調査を行い、アスベストがある場合は、適切にその工事費を計上している。

 市町村への指導については、千葉県公共建築等連絡協議会を通じて、注意喚起を行っている。

 (2)各工事の工事成績評定は、公共工事成績評定要領作成指針に基づき、「施工プロセスチェックリスト」「工事成績採点の考査項目別運用表」等を基準に採点していると思うが、評価項目の中には主観的な項目が多数あるので、施工現場に見合った適切な評価をお願いしたい。

 また、日数、回数等数字の規定がある評価項目もあるが、施工現場の状況により整合性の取れない項目については、施工現場に見合った運用をお願いしたい。

 〈県の回答〉

 工事成績評定については、基本的には千葉県の建設工事検査要綱、工事成績評定実施要領などに基づき、監督員、主任監督員、検査官の3者それぞれの採点をすることで公正性を確保するとともに、施工プロセスチェックリスト、工事成績採点の考査項目別運用表に基づき、工事ごとに該当しない項目は除外したり、その他項目などの追加など、工事の特性に合った項目を対象に採点し、適正に評定を行っている。

 例えばコリンズ等については、公共建築工事の共通仕様書に明らかに明記されている。

 これらの運用リスト等については、監督員がチェックする項目であり、工事成績評定は技術管理課の検査官が付ける訳ではないので、「監督員及び主任監督員と皆さん」ということになる。この中でも監督員と主任監督員のウエイトが高い。一番現場を分かっている監督員の方が、施工体制から出来映え、安全管理等を含めて全体的な評価を行い、主任監督員は社会性などの特性、検査官は、どちらかと言えば出来映えや品質をメーンに評定するという役割分担がある。

 【その他】

 (1)工事完成時期が年度末に集中するので発注時期・竣工時期を平均化して欲しい。

 〈県の回答〉

 年度末工期を分散してほしいということだと思うが、県としては早期発注により、可能な限り発注時期と竣工時期の平準化を図っている。今年度については、県土整備部の営繕課、施設改修課、住宅課の営繕3課では、上半期実績として金額ベースで約60%発注しているということでご理解頂きたい。

 【意見交換会出席者】

 〈県県土整備部〉

 ▽色部剛史・次長▽渡邉政利・技術管理課企画調整室副技監(兼)室長(課長代理)▽岩井昭則・技術管理課技術審査室副技監(兼)室長▽渡邉 茂・技術管理課建築・設備検査室副技監(兼)室長▽宮下智亘・営繕課長▽鎌形良明・営繕課設備室副技監(兼)室長▽石井幹雄・営繕課設備室主幹▽久保田 曄・施設改修課長▽鎗田総明・住宅課県営住宅整備室主幹▽石田大喜・建設・不動産業課長▽神作秀雄・建設・不動産業課建設業・契約室副課長(兼)室長▽田村智由・建設・不動産業課建設業・契約室主査

 〈(社)千葉県空調衛生工事業協会〉

 ▽下福康之(㈱シモンソー、会長)▽内藤栄男(京葉工管㈱、副会長)▽川上昭彦(芝工業㈱、副会長)▽佐藤壽男(東洋熱工業㈱、理事)▽行木祥和(㈱三基エンジニアリング、理事)▽渡辺清昭(袖浦設備工業㈱、理事)▽気谷敦雄(三建設備工業㈱、理事)▽小関正幸(㈲長生設備工業、理事)▽小池基之(ウッドテック㈱、理事)▽片山茂雄(新菱冷熱工業㈱、理事)▽鮫島永一(千葉アロー㈱、理事)▽池田 潔(池田建設工業㈱、監事)▽金子達也(大和設備工業㈱、事業委員会委員)▽石渡善和((社)千葉県空調衛生工事業協会、常務理事)

 【コストオン契約の流れ】

 〈計画〉

 ▽発注方式の決定=発注者がコストオン方式の採用を決定▽設計・監理者選定=発注者が設計事務所(監理者)を選定し、設計図書を作成

 〈設計〉

 ▽元請契約書・コストオン協定書案作成=発注者がコストオン協定書案を作成。元請会社と専門工事会社の責任範囲、統括管理業務の内容等を明記

 〈入札契約〉

 ▽元請・専門工事会社選出、見積もり依頼=発注者が元請会社と専門工事会社に対して、設計図書に基づいた見積書の提出を依頼▽質疑応答▽入札書・見積書提出▽工事金額決定=発注者と元請・専門工事会社が交渉し工事金額を決定▽専門工事金額通知=発注者が元請会社に専門工事会社の工事金額を通知▽元請契約、コストオン協定締結=発注者と元請会社が、統括管理費用等を含めた工事請負契約を締結。発注者、監理者、元請会社、専門工事会社各社がコストオン協定を締結(統括管理業務費用は発注者が負担)▽下請契約締結=元請会社と専門工事会社が下請契約を締結

 


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