県市原土木事務所の主催による「二級河川養老川河道掘削工事の現場研修」が先月27日、市原市五井地先の養老川河川敷内で行われ、県及び市原市職員ら総勢39人が参加した。
参加者の内訳は、県職員25人(県内土木事務所、技術管理課、千葉港湾事務所、高滝ダム管理事務所など)、市原市役所職員14人。
研修現場は、市原土木事務所が発注した「河川基盤整備工事(養老川・河道掘削工その6)」で、情報化施工技術を用いた「バックホウガイダンスシステム」を使用。総合評価方式による一般競争入札で、あおみ建設㈱千葉営業所(山﨑康博所長)が受注し、今年11月14日の完成を目指している。
バックホウガイダンスシステムは、バケットの位置を3次元で管理することが出来るため、視認できない作業において「精度の向上」と「効率的な作業の確保」が可能になるという。
当日は、会場として河川敷の現場事務所脇に設営したテント内で、あおみ建設㈱市原作業所の斎藤正樹所長(現場代理人)が「バックホウガイダンスシステムの技術」、また、同システムを取り扱う西尾レントオール㈱の荻野裕昭・通信測機東京第一営業所長が「情報化施工システム」についてそれぞれ説明。
その後に一行は、ライフジャケットを着用して浚渫船(バックホウ船)に移動。重機の操作室に設置したコントロールボックスのLCD画面により、バックホウの位置やバケットの角度・高さをはじめ、設計ラインとバックホウ側面及びバケットの正面図、浚渫区域とバックホウの平面図などのほか、3Dガイダンスシステムによるバックホウの動きを確認した。
あおみ建設が総合評価で「バックホウ3Dガイダンスシステム」を
斎藤所長の説明によると、バックホウ3Dガイダンスシステムの原理は、衛星を使用したRTK-GPS測位で得られたGNSS受信機の座標を起点に、傾斜計などの「センサー情報」と重機本体及びブーム、アーム、バケットの「位置情報」を演算することで、バケットの位置を正確に表示。高精度な位置管理(3次元)が可能になるという。
浚渫工による現場での利用方法としては、視認できない作業において、バケットの位置や高さをリアルタイムに正確に把握し、作業個所・測線等のマーキング設定により、効率的な作業が可能。また、耐水や耐振動に対応した機器システムのため、破砕機アタッチメントの作業も可能だという。
同じく、掘削工及び法面整形工においては、切り出し位置の確認や掘削個所が直視できない作業に有効で、検測作業の削減により、作業効率と安全性が向上するという。
一方、コントロールボックスの画面を無線で送信し、遠隔操作室のモニターに表示することで、無線リモコンで重機を操作する「無人化施工」に利用出来るという。
3Dガイダンスシステムで施工する同現場の作業状況について、同社千葉工事事務所の小松克敏所長は、施工実績と通常施工との差として「作業性」と「施工精度」を指摘。
作業性については、測量作業日数が大幅に減少することをはじめ、施工位置、高さ確認のための作業中断がないことから、連続的な施工が可能となり、作業の効率化が上がる。
通常施工と比較して精度向上25%以上
また、オペレーターが出来形を確認しながら施工できるため、施工後の手戻りが大幅に減少し、通常施工と比較して10%以上の工程短縮になる。
施工精度の面では、船舶での施工は風浪により10㎝センチ単位の誤差が発生する場合があるが、ガイダンスシステムの誤差は2~3㎝のため、大幅に精度が向上。従来はオペレーターの技量で出来形が左右されたが、正確な位置、高さを確認しながら施工できるため、誰でも高精度な施工が可能となり、通常施工と比較して精度が25%以上にわたり向上するという。
さらに小松所長は、「今回の工事よりも大規模な施工の場合、この成果は顕著になると考えられる」としている。
今回の研修を受けて市原土木事務所の髙山治・建設課長は、「これまでの河道掘削工事では、作業の施工精度の関係から、施工者が計画河床高の規定により多めに掘っていたが、このシステムを使えば規定の高さ通りに施工することが可能になる。また、通常では、河床高の確認をロープに重りを垂らして行うレッド測量や、音響探査等で確認しながら掘削していたが、このシステムでは先端で高さが分かるので、そういった確認作業が必要なく、精度良く効率的に掘削でき、工期的にも余裕が生まれる」と評価したうえで、「河川の掘削のように見えない個所での施工には有効だと思う」との感想を述べた。