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建設業労働災害防止協会

「全国安全週間」始まる/「墜落・転落災害対策」急務

2013/07/01 日刊建設タイムズ


 ――高めよう 一人ひとりの安全意識 みんなの力でゼロ災害――をテーマに、「第86回全国安全週間」が7月1日から7日まで実施される。県内建設業において発生した本年の労働災害により、5月末までに11人が死亡。これは前年同期に比べて4人増加し、過去最少を記録した一昨年の年間死亡者数に並ぶという事態にある。この状況を重く受け止めた千葉労働局(山本靖彦局長)では、「平成に入って初めて」とされる局長からの『全国安全週間メッセージ』=別項=を準備期間(6月1日~30日)に発表。また、同じく6月27日には、山本局長を先頭に倉持清子・労働基準部長、泉豊彦・千葉労働基準監督署長らが、「(仮称)イオンモール幕張新都心新築工事」(施工・㈱大林組)の現場の『建設工事特別パトロール』を実施。朝礼では、1100人余の全作業員を前に山本局長が安全講話を行い、「安全に決め手はない。『ここは安全だ』と決めつけることなく、一つ一つの作業について原点に返り、安全確認を行いながら工事を進めてほしい」と呼びかけ、最後に全員による指差し呼称『ゼロ災害で行こう、よし』で工事の無事竣工を誓った。



「現状認識」と「今後の取り組み」


 第86回目となる全国安全週間を迎え、建設業労働災害防止協会千葉県支部(尾頭博行支部長)では、支部としての労働災害の「現状認識」と「今後の取り組み」について言及した。

 2012年に千葉県内建設業で発生した労働災害による死亡者数は14人。ここ数年の減少傾向に反して3人の増加に転じ、全産業に占める割合も38・9%と5・6ポイント増加した。しかも本年は、5月末日現在で既に11人の尊い命が県内の現場で失われている。

 今後、震災の復興工事の本格化や大型の財政出動による工事量の増加をはじめ、資材・人員の不足など災害の発生要因が増す中で、「死亡災害等の重篤な労働災害の増加」が懸念されている。

 尾頭支部長は、「我々としては従来にも増して、緊張感を持った労働災害防止への取り組みが求められている」との認識を示した。

 こうした状況の中、国は本年度を初年度とする「第12次労働災害防止5か年計画」をスタート。全産業の死亡災害及び死傷災害をそれぞれ15%減少させることを中心的な目標とし、各産業において実施すべき労働災害防止対策を示している。

 この中で建設業は、特に重篤度の高い労働災害を減少させるための「重点業種」として、死亡災害の減少目標を20%に設定。

 これらを踏まえて建災防本部は、「建設業の労働災害防止に関する中期計画と今後の展望」を示す「第7次建設業労働災害防止5か年計画」を策定。数値目標は、国の計画と同じ死亡災害20%、死傷災害15%の減少とし、建災防会員として取り組むべき主要な対策とともに、建災防(本部・支部・分会)としての主要対策を示した。

 これらについて建災防千葉県支部では、「それぞれ十数項目と多岐にわたるが、いずれも労働災害防止に関し必要不可欠で基本的な項目ばかりで、東日本大震災関連を除けば、従来から指摘され続けている日常的な内容」との認識を示した。

 建災防千葉県支部では、県内建設業における死亡災害には、「何点かの特徴ある傾向が認められ、それらの特徴はここ数年続いている」と分析。

 第1点として、「死亡災害に占める非会員事業場の割合が依然と高率」な点を指摘。昨年の14人のうち11人、本年5月末日現在の11人のうち9人が、元請・下請を含めて「非会員事業場」で占められる。「非会員事業場の安全衛生水準が一概に低いと断定はできない」と前置きしたうえで、今後、県内建設業での重篤な労働災害防止を推進するには、「非会員事業場の解消が急務」とした。

 第2点としては、「改修工事・更新工事・解体工事において災害発生が多発」している点を指摘。2012年は、14人のうち9人が改修等工事において被災。本年度も震災の復旧・復興工事で、改修等工事の発注の増加が見込まれることから、適切な対応が求められる。改修等工事には、施工に係る制約が多く、技術的にも難易度が高いものが多いことから、「施工計画作成時におけるリスクアセスメントの充実を図る必要がある」とした。

 第3点としては、「墜落・転落災害の多発」を指摘。昨年1年間で県内建設業だけで9人の死亡災害が発生。本年においては、5月末までの11人のうち8人が墜落・転落災害という緊急事態にある。

 建災防千葉県支部では各分会を通じて、全国安全週間中に労働災害防止計画に示された実施事項とともに、県内建設業における死亡災害の特徴を再確認し、「それぞれの立場で責任を持って取り組むことにより、実りある安全週間にしたい」との決意を示した。


ハーネス型安全帯普及へ


 前述の「第12次労働災害防止5か年計画」における建設業対策は、①墜落・転落防止対策②震災の影響による人材不足等を踏まえた対策③解体工事対策④自然災害の復旧・復興工事対策――が柱で、このうち、墜落・転落防止対策の項目の中に「ハーネス型の安全帯の普及」がある。

 建設産業界の死亡労働災害を抑えるには、墜落・転落災害の対策を充実させることが最重要課題の一つとされる。「安全・衛生・保護具用品」大手のミドリ安全によると、日本における安全帯は、腹部の一部に衝撃荷重が集中する「胴ベルト型」が95%以上と、圧倒的なシェアを占める。一方、欧米で言う安全帯は、衝撃荷重を全身で緩和して分散する「ハーネス型」を指すことから、日本でも「世界基準に基づいたハーネス型安全帯の開発・普及が急務」としている。


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