公益社団法人千葉県測量設計業協会(小安隆夫会長)は19日、九十九里町立豊海小学校(内山明子校長)の4年生(2クラス、45人)を対象に「歩測による地図づくり教室」を開講した。公益社団法人への移行に伴い新たな事業を模索した同協会では、小学生を対象とした地図づくりを発案。そこで、江戸時代に日本国中を測量してまわり、初めて実測による日本地図を完成させたことで知られる、千葉県が生んだ偉人「伊能忠敬」に着目。氏の功績にあやかり、「生誕の地」である九十九里町の教育委員会に話を持ちかけて実現したもの。10月には第2回目の歩測による地図づくり教室として、九十九里小学校5年生を対象に行う予定。伊能忠敬が55歳で第1次測量(東北・北海道南部測量)を行ってから213年。豊海小4年生45人の児童はこの日、「平成の伊能忠敬」になった。
次回は九十九里小で
開講式の冒頭であいさつした内山校長は、「今はスイッチ一つで時間も距離も体重も何でも数字が教えてくれる。こういった時代にみなさんは育っている」と前置きし「ところが本日は、自分たちの足で歩測して地図が作れるのかという勉強をする。九十九里で生まれた伊能忠敬が日本地図を作成したことは世界的にも有名で、その地図の作り方は歩測を基本に作成されている」と説明。「本日のみなさんは『平成の伊能忠敬』になって、しっかりと勉強してほしい」とエールを送った。
引き続き、主催者として小安会長は「校長先生がお話になった伊能忠敬先生は、九十九里町の小関に生まれて、50歳を過ぎてから日本の地図を歩いて作った人。現代の測量は機械を使って行うが、その機械の精度とほとんど変わらない地図を作った人」との偉業を紹介したうえで、改めて児童に対して「本日は『平成の伊能忠敬』になったつもりで地図づくりをしましょう。楽しく怪我のないように、測量の初歩を勉強しましょう」と呼びかけ、あいさつとした。
この日は、児童45人を1チーム4人または3人の「12チーム」に編成し、それぞれ指導者として、同協会学校研修部会委員を中心に配属。用具は、協会が方位磁石(12個)、電卓(12個)、50m巻尺(6個)、児童が画板(各チーム1つ)、鉛筆またはシャープペンシル、消しゴム、三角定規(いずれも各自)を、また、協会側が歩測記録用紙(A4サイズ、各チーム3枚)と歩測図用紙(A3サイズ、同1枚)を用意した。
実習では、まず校庭に50m巻尺を伸ばし、各チームごとに全員が1人「30歩」の距離を3回測定し、その平均値から各人の「歩幅」を算出。その後、各チームは学校を中心にほぼ放射線状に分かれ、約2時間半にわたって学校周辺(2㎞×2㎞)を歩測。縮尺は2000分の1で幹線道路の道幅は2㎝幅、町道やその他の道路は1㎝幅。A3方眼紙の使い方は、アリダートを利用した平板方法で配置決定した。
児童の役割は、チーム内で「道路の歩測」「左右の注記を記録」「画板」に大別。道路の歩測は、進方向を決め方位磁石で角度を算出し、歩数を測定。左右の注記を担当した児童は、歩測数でどこに何があるかを記録。画板を担当した児童は、それぞれ危険のない場所で作図を行った。
実習後の閉講式では、児童を代表して飯高聖士くんが「今日の地図づくりは大変勉強になり、難しいことをやさしく教えて頂きありがとうございました。これからの安全マップづくりに役立てます」と述べ、お礼の言葉とした。
【「歩測による地図づくり教室」での講師担当会員】
▽㈲安房測量▽㈲梅津測量▽㈱エポック▽㈱共立調査測量▽サン・ジオテック㈱▽千葉セントラル測量㈱▽㈱ミヤモ設計▽㈱サンレックス▽㈱つくも▽八紘測量開発㈱▽㈱サン測量設計
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この日の「歩測による地図づくり教室」が終了後、内山校長に対して「にわかインタビュー」をお願いした。
――この実習が実現するまでのいきさつは。
協会から教育委員会に話があり、その指導のもと校長会で「意義のある事業なので、どこかの学校で受けてみないか」との話が出た。それを聞いた時に「これは面白そうだ」と思い、真っ先に手を上げた。
――どのあたりが「面白そう」に。
児童は「歩測」という言葉も知らないだろうし、何でも数字で出てくる生活。机での教科書の勉強ではなく、こういった経験は「この機会を逃すと二度と出来ない」と思った。ちょうど4年生が学区の中の「安全マップづくり」を保護者と一緒に行うことになっている。
――「安全マップづくり」とは。
10月に児童と保護者が一緒になって通学路の安全マップを作る。それをベースに、現場で写真を撮ったり危険な個所も洗い出し、こども110番の家などを載せて最終的にまとめる。遠からず、測量に結びつくものだと思う。何気なく通学している毎日から、自分の学校の周りを見直す機会にもなる。今回の実習で「目印をつかむ」ことを教わったので、それを生かせると思う。
――4年生での地図の勉強は。
3年生で自分たちの市町村や県、4年生で県と全国となり、1冊の地図帳で勉強する。どの程度できるかわからないが、数字がないところから数字に結びつくものを導き出す。今日もまず最初に「30歩を3回」行ったことは、より正確な一歩の長さを出すためだと思う。そのためには、それだけの努力がなされているということ。子どもたちにおいても学びがあって良いと思う。
――今回の「歩測による地図づくり教室」の感想は。
子どもにとって今は、何でも速さを競う時代だが、(伊能忠敬の)当時は速さを競うものがないため、天気にも左右されながら、何でも時間をかけて行っていた。すぐに答えが出る訳でもなく、それが正解かもわからないような。こういった勉強もあることを知ってもらったこと事態、とても良い勉強になったと思う。何かあった時に「自分の歩幅が物差しになる」というのは、凄く大きな学びだと思う。
――この実習を経験した子どもたちに期待することは。
普段は身近にない、こういった「測量」という仕事があることがわかったことも、子どもたちにとっては素晴らしいことだと思う。
6年生になるとキャリア教育で「職場体験」に行く。この学区に測量関係の会社がないことから、これが一つの職場体験になっている。この測量という仕事を将来の職業として選んでくれる児童がいればいいなとも思う。